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牧野新日本植物図鑑

投稿日 2023年10月15日

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牧野新日本植物図鑑

MAKINO's NEW ILLUSTRATED FLORA OF JAPAN

昭和36年6月30日初版発行

昭和57年5月30日第39版発行(定価15000円)

著者 牧野富太郎

発行 (株) 北隆館

中学生のときだったか、本を買いに大きな書店に行ったとき、気にはなっていたが高価で手が出なかった図鑑。それが牧野富太郎の植物図鑑。緑の帯のデザインを覚えているので、多分これだろうと思う。当時の定価は15,000円。今考えれば、内容にしては安いものだ。

その頃植物図鑑といえば牧野植物図鑑のことだった。それぞれの植物にはすべて手書きの絵が添えられ、要領を得た説明が加えられている。その植物画に惚れていたのだが、本屋の棚にはすでにカラー写真の植物図鑑もあったと思う。一見カラー写真の方がよいように思えるが、実際は牧野植物図鑑のように、特長をとらえた絵のほうが分かりよい。写真はある個体の様子を写しているが、それがその種の特徴を的確に表しているとは限らない。牧野植物図鑑の絵は、花の特徴、結実した実の形、葉の形、付き方などの特徴を誇張することなく自然に描いている。もちろん一長一短はあり、花の色などについては言葉で説明するしかないので、微妙な色、グラデーションなどは色名から想像することになる。

この図鑑の並び方は名前のあいうえお順ではなく、花の色別でもない。「科」で並んでいる。植物の専門家はどうのように使うかは知らないが、おそらく各科の特徴をあらかじめ把握しておき、その科、つまり近縁のものを探すのだろう。たとえば、花が「りんどう」に似ているなら、「りんどう科」を探すことになる。花が無い場合は葉の形や付き方などから「りんどう科」ではないかと見当をつけて「りんどう科」の24種の中から探すことになる。では何科なのかさっぱりわからない場合はどうするか。お手上げである。

つまりこの図鑑を使いこなすにはある程度植物分類の知識が必要である。つまり、植物の「科」がそれぞれどのような特徴で分類されているのかをあらかじめ知っておかなければならない。図鑑の中には葉の形、付き方、花の形などからフローチャートを辿るように、検索できるものもあるが、この図鑑はそうはなっていない。そこで、どうにかして目的の植物にたどり着けないか。今更植物分類学を勉強するわけにはいかないので、文明の利器を使うのである。そう、スマホアプリの「レンズ」を使ってあらかじめ本種またはその近縁を調べておくのである。​

たとえば、この紫の花。これを「レンズ」で調べると、ずばり「さわぎきょう」と出る。ご名答! このとき「レンズ」はほとんど花からしか調べないが、写真には花以外に葉の形や、付き方、草丈、生育地の様子も写しておくべきだ。

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「さわぎきょう」

湿地に生え、草丈は1mくらい。

花は紫色で花びらのうち三枚が虫を誘うように前に垂れている

​八ヶ岳山麓 稲子湯にて

これを「ききょう科」だと分かる人はいいが、素人目にはなかなかそうはいかない。たとえこのように花が咲いていても、一般的なあの「ききょう」には似ても似つかない形をしている。その点で「レンズ」は便利である。間違うことも多いが、一定のヒントを与えてくれる。今回はズバリ「さわぎきょう」にたどり着けた。

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牧野伸日本植物図鑑の「さわぎきょう」の項

ところで「ききょう科」の「さわぎきょう」にはどんな近縁、つまり同じ科の植物があるのか。この図鑑でそれを知るには「さわぎきょう」の掲載されているページの前後の「ききょう科」の植物を見ればよい。すぐ上の「あぜむしろ」別名「みぞかくし」は、「さわぎきょう」とは似ても似つかない、こちらは地面を匍匐(ほふく)する植物だ。植物学者はどこをどう調べて「さわぎきょう」と「あぜむしろ」を同じ科と判断したのだろうか。素人目には掲載されている絵から、なんとなく花の形は似ているような気がするが。このような点は興味深いところだ。

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「おたからこう」

湿地に生え、草丈は1mくらい。

大きく丸い葉は山ブキのようにも見える

​八ヶ岳山麓 稲子湯にて

さて、「さわぎきょう」を見つけたあとさらに木道を行くと、さきほどよりは少し乾燥しているが、沢の近くの湿気のある場所に「おたからこう」がまだ花を付けていた。群生して、いたるところに黄色い花がにょきにょき立っていた。フキもこの「おたからこう」も同じきく科で、葉が素人目には同じように見える。よく見ると、図鑑の絵のように、大きな葉の周囲に細かい刻み(きょ歯)が入っている。

この植物は亜高山帯にもあるようだが、丈が低くなるようだ。「おたからこう」に対して「めたからこう」もあり、「おたからこう」はつまり「雄たから香」。「めたからこう」は「雌たから香」らしい。「めたからこう」のほうが葉が全体的に小さく、「おたからこう」よりもやさしく見えるそうだ。「たから香」というのは「龍脳香」(りゅうのうこう)のことで、たからこうの根茎からそれと同じ香りがするからだそうだ。「龍脳香」はクスノキからとれる樟脳(しょうのう)を生成したもののようで、樟脳に似た香りがするか、現地でちょっと茎を折って匂いをかいでみればよかったと、今更ながら後悔している。

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牧野伸日本植物図鑑の「おたからこう」の項

深淵な植物分類の世界。新種を見つける目。それはあらゆる植物の特徴が整理されて、いつでも取り出せるように整理されたデーターベースであるはずだ。分類法にもいくつかあるらしく、ある植物学者の分類法に異議をとなえる植物学者も居るらしい。そういうこともあって分類学は難しい。しかし最近DNAを用いた分類も進められているらしい。同じような姿特徴の植物が、まったく違うものに分類されるかも知れない。動物、とくに昆虫の世界にもあるが、毒を持つ蝶に擬態する蝶などがあるが、植物も毒のある植物に擬態しているような植物があれば、同じ科に分類されているが、実は遺伝的には別物であったりするかも知れない。なんて想像するのも楽しい。とにかくDNAのレベルで分類されると、より植物の進化に迫れるかもしれない。

以下は牧野伸日本植物図鑑に収録されている「科」ごとの種数。

番号はその「科」の先頭種の収録番号。種名は、その科の山で見かける主な種。

0001 まつばらん科 1種 

0002 ひかげのかずら科 13種

0016 いわひば科 6種 くらまごけ

0022 みずにら科 1種

0023 とくさ科 4種 すぎな

0027 はなやすり科 6種

0033 りゅうびんたい科 1種

0034 ぜんまい科 5種 ぜんまい

0039 かにくさ科 1種

0040 うらじろ科 3種 うらじろ

0043 こけしのぶ科 7種

0050 すじひとつば科 1種

0051 きじのお科 3種

0054 へご科 2種

0056 うらぼし科 165種 いのもとそう

0221 みずわらび科 1種

0222 でんじそう科 1種

0223 さんしょうも科 2種

0225 そてつ科 1種

0226 いちょう科 1種

0227 いちい科 3種

0230 まき科 3種

0233 いぬがや科 2種

0235 まつ科 28種 こめつが しらびそ からまつ

0263 すぎ科 5種 すぎ

0268 ひのき科 20種 ひのき

0288 まおう科 1種

0289 もくまおう科 1種

0290 どくだみ科 2種 どくだみ

0292 こしょう科 2種

0294 せんりょう科 4種 ひとりしずか

0298 やなぎ科 19種

0317 やまもも科 2種

0319 くるみ科 3種 さわぐるみ

0322 かばのき科 25種 しらかば だけかんば

0347 ぶな科 22種 ぶな かしわ みずなら

0369 にれ科 7種 けやき

0376 くわ科 20種

0396 いらくさ科 28種

0424 かわごけそう科 1種

0425 やまもがし科 1種

0426 ぼろぼろのき科 1種

0427 びゃくだん科 2種

0429 やどりぎ科 5種 やどりぎ

0434 うまのすずくさ科 9種 かんあおい

0443 やっこそう科 1種

0444 つちとりもち科 4種

0448 たで科 61種 いたどり

0509 あかざ科 20種

0529 ひゆ科 12種

0541 おしろいばな科 2種

0543 やまとぐさ科 1種

0544 やまごぼう科 3種

0547 つるな科 5種

0552 すべりひゆ科 5種

0557 つるむらさき科 1種

0558 なでしこ科 72種 ふしぐろせんのう

0630 もくれん科 17種 たむしば

0647 やまぐるま科 2種

0649 かつら科 2種 かつら

0651 すいれん科 8種 ひつじぐさ

0659 まつも科 1種

0660 きんぽうげ科 80種 しらねあおい しなのきんばい とりかぶと

0740 あけび科 4種 あけび

0744 めぎ科 16種

0760 つづらふじ科 5種

0765 ろうばい科 2種 ろうばい

0767 にくずく科 1種

0768 くすのき科 20種 くすのき しろだも 

0788 けし科 21種 むらさきけまん

0809 ふうちょうそう科 4種

0813  あぶらな科 66種 わさび

0879 もくせいそう科 2種

0881 もうせんごけ科 7種 もうせんごけ

0888 うつぼかずら科 1種

0889 べんけいそう科 26種 いわべんけいそう

0915 ゆきのした科 69種 だいもんじそう うつぎ やまあじさい

0984 とべら科 3種

0987 まんさく科 9種 まんさく

0996 すずかけのき科 2種

0998 ばら科 175種 しもつけ ななかまど やまぶき みやまきんばい

1173 まめ科 120種 やまふじ 

1293 かたばみ科 8種

1301 ふうろそう科 18種 はくさんふうろ ぐんないふうろ

1319 のうぜんはれん科 1種

1320 あま科 3種

1323 こか科 1種

1324 はまびし科 1種

1325 みかん科 32種 さんしょう 

1357 にがき科 2種

1359 かんらん科 1種

1360 せんだん科 2種

1362 ひめはぎ科 6種

1368 とうだいぐさ科 35種

1403 あわごけ科 2種

1405 つげ科 4種

1409 がんこうらん科 1種

1410 どくうつぎ科 1種

1411 うるし科 7種 うるし

1418 もちのき科 18種 くろがねもち たらよう

1436 にしきぎ科 18種 まゆみ 

1454 みつばうつぎ科 3種

1457 くろたきかずら科 1種

1458 かえで科 28種

1486 とちのき科 2種 とちのき

1488 むくろじ科 5種

1493 あわぶき科 4種

1497 つりふねそう科 4種

1501 くろうめもどき科 15種

1516 ぶどう科 11種 やまぶどう

1527 ほるとのき科 2種

1529 しなのき科 7種

1536 あおい科 22種

1558 あおぎり科 3種

1561 さるなし科 4種

1565 つばき科 13種 ひさかき

1578 おとぎりそう科 16種

1594 みぞはこべ科 1種

1595 ぎょりゅう科 1種

1596 すみれ科 45種 たちつぼすみれ

1641 いいぎり科 2種

1643 きぶし科 1種

1644 とけいそう科 1種

1645 しゅうかいどう科 3種 しゅうかいどう

1648 さぼてん科 2種

1650 じんちょうげ科 10種 みつまた

1660 ぐみ科 8種

1668 みそはぎ科 9種

1677 ざくろ科 1種

1678 ひるぎ科 3種

1681 うりのき科 1種

1682 しくんし科 1種

1683 ふともも科 2種

1685 のぼたん科 2種

1687 ひし科 4種

1691 あかばな科 19種 まつよいぐさ

1710 ありのとうぐさ科 4種

1714 すぎなも科 1種

1715 うこぎ科 15種 うど

1730 せり科 60種 しらねにんじん

1790 みずき科 7種 やまぼうし ござんたちばな あおき

1797 いわうめ科 4種 いわうちわ いわかがみ

1801 りょうぶ科 1種

1802 いちやくそう科 7種 いちやくそう ぎんりょうそう

1809 つつじ科 67種 あずましゃくなげ やまつつじ あせび しらたまのき

1876 やぶこうじ科 6種 まんりょう

1882 さくらそう科 36種 くりんそう かっこそう

1918 いそまつ科 4種

1922 かきのき科 4種

1926 はいのき科 8種

1934 えごのき科 5種 はくうんぼく

1939 もくせい科 21種 しおじ

1960 ふじうつぎ科 5種

1965 りんどう科 24種 いわいちょう

1989 きょうちくとう科 7種

1996 ががいも科 21種

2017 ひるがお科 14種

2031 はなしのぶ科 3種

2034 むらさき科 22種

2056 くまつづら科 22種 むらさきしきぶ 

2078 しそ科 90種 きらんそう たつなみそう らしょうもんかずら いぶきじゃこうそう

2168 なす科 37種 はしりどころ 

2205 ごまのはぐさ科 71種 きり くわがたそう よつばしおがま 

2276 のうぜんかずら科 3種

2279 ごま科 2種

2281 つのごま科 1種

2282 はまうつぼ科 5種

2287 いわたばこ科 5種

2292 たぬきも科 9種 こうしんそう 

2301 きつねのまご科 8種

2309 はまじんちょう科 1種

2310 はえどくそう科 1種

2311 おおばこ科 5種 おおばこ

2316 あかね科 50種 くちなし

2366 すいかずら科 45種 むしかり たにうつぎ

2411 れんぷくそう科 1種

2412 おみなえし科 9種 きんれいか 

2421 まつむしそう科 3種 まつむしそう

2424 うり科 24種 からすうり

2448 ききょう科 20種 ほたるぶくろ つりがねにんじん 

2468 きく科 294種 ふじばかま ふき かにこうもり たかねにがな

2762 がま科 3種

2765 たこのき科 1種

2766 みくり科 3種

2769 ひるむしろ科 15種 

2784 いばらも科 3種

2787 ほろむいそう科 1種

2788 おもだか科 7種

2795 とちかがみ科 9種

2804 ほんごうそう科 2種

2806 いね科 216種 くまざさ 

3022 かやつりぐさ科 205種

3227 やし科 8種

3235 さといも科 26種 みずばしょう ざぜんそう うらしまそうまむしぐさ

3261 うきくさ科 3種

3264 ほしくさ科 6種

3270 ぱいなっぷる科 1種

3271 つゆくさ科 8種

3279 みずあおい科 3種

3282 たぬきあやめ科 1種

3283 いぐさ科 21種

3304 びゃくぶ科 4種

3308 ゆり科 132種 しょうじょうばかま こばいけい ぎぼうし ぜんていか きんこうか

3440 ひがんばな科 15種

3455 やまのいも科 11種

3466 あやめ科 22種 しゃが

3488 ばしょう科 3種

3491 しょうが科 9種

3500 かんな科 2種

3502 ひなのしゃくじょう科 3種

3505 らん科 113種 くまがいそう はくさんちどり 

3618 苔類 27種

3645 蘚類 51種

3696 しゃじくも科 6種

3702 ひとえぐさ科 1種

3703 あおさ科 3種

3706 しおぐさ科 2種

3708 はねも科 1種

3709 いわづた科 1種

3710 みる科 4種

3714 まつも科 1種

3715 むちも科 1種

3716 あみじぐさ科 7種

3723 ながまつも科 3種

3726 うるしぐさ科 1種

3727 こもんぶくろ科 1種

3728 かやものり科 4種

3732 いしげ科 2種

3734 つるも科 1種

3735 こんぶ科 9種

3744 ひばまた科 2種

3746 おんだわら科 10種

3756 うしけのり科 2種

3758 べにもずく科 3種

3761 がらがら科 4種

3765 てんぐさ科 6種

3771 なみのはな科 2種

3773 さんごも科 1種

3774 むかでのり科 7種

3781 ふのり科 1種

3782 つかさのり科 1種

3783 みりん科 2種

3785 いばらのり科 1種

3786 ゆかり科 1種

3787 おごのり科 4種

3791 おきつのり科 2種

3793 すぎのり科 4種

3797 だるす科 1種

3798 わつなぎそう科 1種

3799 いぎす科 1種

3800 このはのり科 1種

3801 ふじまつも科 3種

3804 びんごけ科 1種

3805 さんごごけ科 1種

3806 もじごけ科 1種

3807 いわのり科 1種

3808 よろいごけ科 2種

3810 つめごけ科 1種

3811 へりとりごけ科 1種

3812 はなごけ科 3種

3815 きごけ科 2種

3817 いわたけ科 2種

3819 とりはだごけ科 1種

3820 ちゃしぶごけ科 1種

​3821 あんちごけ科 1種

3822 うめのきごけ科 7件

3829 さるおがせ科 4種

3833 むかでごけ科 1種

3834ちゃわんたけ科 3種

3837 てんぐのめしがい科 2種

3839 のぼりりょうたけ科 1種

3840 にくざきん科 2種

3842 まめざやたけ科 1種

3843 きくらげ科 1種

3844 いぼたけ科 1種

3845 ほうきたけ科 2種

3847 はりたけ科 4種

3851 さるのこしかけ科 7種

3858 まつたけ科 24種

3882 すっぽんたけ科 4種

3886 かごたけ科 3種

3889 しょうろ科 1種

3890 ほこりたけ科 3種

3893 ひめつちぐり科 1種

3894 ちゃだいごけ科 1種

3895 にせしょうろ科 1種

3896 つちぐり科 1種

​(雅熊)

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