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20190513_四ッ又鹿岳07.jpg

何も山頂を目指すだけに山に登っているのではないが、やはり山頂は一到達地点としては、気持ちの区切りがつくものである。

 

その山の最も高いところだから、眺望というおまけがつけば最高であるし、そうでなくても山頂は一種独特の趣がある。

 

山頂には石仏や石祠が置かれていることがあって、昔の人の信仰があったことが分かる。昔から登られてきた山であり、人々の山への願いがこもっている。

 

山頂には三角点が置かれている。明治の時代から日本人は国土をはっきり意識するために正確な測量を心がけてきた。重い標石を担ぎ上げ、設置した人の苦労がしのばれる。

 

山頂には独特の静けさがある。ゲーテの詩はそれをよく言い表していると勝手に思っている。

 

「山々の頂にこそ安らいあれ。木々の梢にそよとの風もなく。森に歌う鳥の声もない。まてよ。しばし待てよ。やがて我も安らわん。」

 

先日登った群馬県南西部 西上州の四ッ又山はそのような山頂であった。山頂は小平地になっており、奥に石像が立って遠くを眺めている。傍らには二等三角点が埋めてある。全方位ではないが、隣の山々や、はるか遠くに春霞みに浮かんでいる山々が望まれる。耳元に来た小アブの羽音が聞こえるくらい静かだ。

 

若いころに来た山頂。その頃の様子は何も覚えていないが、若い自分もここで静かな山頂のひと時を過ごしたのだろう。

 

 

 

 

 

(熊五郎)

 

 

コメント(2)

  • いつまでもナイーブな心を持ち続けられて、あまりに散文的な毎日しか過ごしていない自分なので。
    山に登る方はロマンチストでいらっしゃいますね。 
    2019/5/16(木) 午後 7:16

  • > agewisdomさん 思えば、私をロマンチストだと言っていただいたときから、コメントをいただくようになりましたね。いつもありがとうございます。(熊五郎) 2019/5/16(木) 午後 10:35

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