1インシデントの男 リーダーの判断が問われたロマンス                     投稿日 2017年12月24日

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私は勤めていた会社で山の同好会を作った。

 

山好きの者数名と、他はうまく誘って入ってもらった女性や、その女性につられて入ってきた男性(笑)。十数名になったろうか。

 

私はもともと団体登山は好きな方ではない。若いころから単独か、本当に気持ちの許せる友人としか登ってこなかった。(いまもそうだが)

 

同好会を作ったのは、まぁ、会社への貢献といった意味もあったろうか。

 

同好会ではさまざまな山に登った。団体登山では、必ず山の素人?を含む。このため、その行動は慎重、いや特別な配慮が要求された。

 

ある年、新潟のある山に登った。ルート図と計画を見せて来れる人だけを募ったもので、誰でも来れると思って集めたものではなかった。

 

女性も居たが多少山慣れた者の集まりとして決行した。

 

私が先導役で先頭を歩いた。シンガリに山慣れた山仲間をサブリーダーとして頼んで、他のメンバーを挟むようにして歩いた。

 

6割りほど登ったであろうか、遠くで雷が鳴るのが聞えた。頭上はまだ青空だが、雲は早く、荒天がそこまで迫っているようだ。

 

私は目的地まで行けるとふんでいた。しかし、背後から聞えてくる会話が、心配を含んだどよめきのような雰囲気で、耳をかすめた。

 

私は気にしながらも、メンバーをなるべく早く引っ張り上げるため、歩調を早めた。

 

いつもの仲間だけだったら、何の問題もなく到達できる距離だったろう。

 

森林限界を越えるあたりだったろうか、やがて、メンバーはずるずる遅れだし、なにやら立ち話さえしている。

 

シンガリの山仲間が言うには、みんなこの先に進むのを怖がっている。この辺で引き返したほうがよいのではないかと言うのだ。

 

私はメンバーの顔を見たが、誰も視線を合わせようとしない。

 

山仲間と相談した。「たとえこのまま登って辿りつけるとしても、みんなの頭の中に不安が渦巻いているからには、これ以上は進まないほうがいいだろう」というのだった。

 

私は隊を逆転させ、サブリーダーを先頭にして引き返すことに決めた。信用されていない私はリーダーを退き、サブリーダーに一時的にリーダーをやってもらう形になった。それがメンバーを安心させることでもあった。

 

半分ほど下ったところで、強い雨が降り出した。メンバーのやっぱりという視線が私を突きさした。雨の中やっとたどり着いた登山口だが、時間的にそのまま帰ることはできず、テントで野営することになった。

 

かくして、その計画は失敗となった。

 

メンバーの中には、後日再び登山に誘ったときに、「あのときの二の舞にならないですか?」と念を押すメンバーまで居た。メンバーの頭の中には、私が1インシデントの男と記憶されているのだ。

 

そんなメンバーにも私に気遣ってくれる人も居た。その人は今、私の妻である。

 

 

 

 

(熊五郎)

コメント(2)

  • 強い信頼があってついてこられた。その結果結ばれた方でよかったですね。末永く仲良くお暮らしください。 (agewisdom) 2017/12/24(日) 午後 4:17

  • > agewisdomさん ありがとうございます。(熊五郎) 2017/12/24(日) 午後 7:25