遠雷

投稿日 2010年06月20日

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未発達な積乱雲
文面とは関係ありません
(この雲は東の空に浮かんでおり、赤いのは夕日の反射によるものです)

 

 
遠雷の光は、薄ピンク色である。 

 

高山の見晴らしのよい尾根筋で、夜を明かそうと、

 

テントを張って身を横たえる。

 

青い空は少しくすんで、ウグイス色になり始めている。

 

西の空はまだ明るいが、そこにはシルエットのような、カナトコ雲が浮かんでいる。

 

時間はゆっくり過ぎてゆく。

 

そこから見えているものは、何一つ変化していないように見えた。

 

が、しかし、大きな大きな、とてつもなく大きなカナトコ雲の腹が、一瞬、薄ピンクに染まる。

 

その速度は、まばたきさえ許さず、妥協は一切無い.

 

風の音さえ無いこの場所だが、その雷鳴は耳をすましても届かない。

 

音の無い雷。ただただ、ときおりピンクに光る。

 

この光景に、一生に幾度遭遇できるだろうか。

 

...........

 

あたりはやがて闇に包まれ、

 

遠雷も消え去った。



 

よい写真がなかったので、追加説明:

 

この日は南アルプスに登り、1800から2000mくらいの尾根にテントを張りました。
見晴らしがよく、西に偏った太陽が、その前にある大きな積乱雲をシルエットにしています。
それは目の高さに浮かんでいます。
この積乱雲はカナトコ状に発達し、その雄大な姿全体が見渡せます。
その積乱雲の中ほど,雲の内部が時おりピンクに光ります。
近くで光る雷とは違い、その光は薄ピンク色です。
非常に遠いので、雷鳴はまったく聞こえません。





 

(熊五郎)

 

コメント(7)

  • 彼方から光だけ送ってくる遠雷、都会ではほとんど見かけませんね。むしろ光ってから忘れたころに音を送ってくる雷を遠雷といっていたようです。さえぎる物のない山から見る風景はまったく違っているのですね。こちら宇都宮に比べると雷はほとんどありません。嬉しいようなさびしいような。 2010/6/20(日) 午前 9:44

  • agewisdomさん、雷鳴がかなり遅れて聞こえるのが遠雷ですね。この遠雷は超遠雷です。(笑) 私のつたない文章では、この時の雰囲気が伝わるか心配ですが、当時のことは鮮明に思い出します。(熊五郎) 2010/6/20(日) 午前 10:35

  • 熊五郎さん、こんにちわ!積乱雲はカナトコ状に発達し、その雄大な姿全体が見渡せます。その積乱雲の中ほど,雲の内部が時おりピンクに光ります。近くで光る雷とは違い、その光は薄ピンク色です。雷鳴の音は聞こえない。私は全く体験がありませんが、この文集によって、その状況が理解できます。カナトコ?鉄道線路の断面のような形をしたものなのでしょうか?ポチです。 らくがき楽ちん ] 2010/6/20(日) 午後 1:51

  • らくがき楽ちんさん、雷雲つまり積乱雲は発達して上部の高さが対流圏に達すると、強い気流によって頭が横(つまり地面と平行)に流されます。このためきょうど金床(鍛冶屋が使う道具)のような形になります。これをカナトコ雲といいます。夏に町からでも時々見かけます。上の写真はそうなる前の積乱雲で、こういうのは未発達でカナトコ雲とはいいません。遠雷という表現は、小さな音だけが届く場合、どこかで鳴っているなという感じの時に使いますが、たまにとても遠い雷の光も見えることがありますね。ところがほとんどの場合、雷が鳴るような天候では、周りに低い雲が多く、かなり近づくまで光が見えないことがよくあります。この文章の経験は、積乱雲が丸ごと見えているような、非常にまれな状況に遭遇したということです。(熊五郎) 2010/6/20(日) 午後 3:03

  • 駒五郎さん、遠雷について詳しいご説明、痛み入ります。こういう専門的な分野になりますと、門外漢の私には理解ができません。
    これでよく分かり勉強になりました。深謝。 
    らくがき楽ちん ] 2010/6/21(月) 午後 1:19

  • 「寸止めの政」改め「朝刊太郎」です。熊五郎さんお久しぶり。久々でブログを拝見しました。「遠雷」というタイトルの小説は誰が書いたのだろうか?新田次郎氏の作ではなかったか?とあれこれ考えていました。中学か高校時代に習った、光と音の到達距離で、雷との距離を測定する計算式を未だに覚えています。音は1秒間に331m移動するから、温度を考慮した公式が:距離(m)=(331+0.6T)×S Tは温度で、Sは秒。もしピカっと光ってからゴロゴロと音がなるまでの時間が5秒で、温度が20度なら (331+0.6×20)×5秒=1,715mになる。約2km先の雷鳴。これで正しいですよね?数字に詳しい熊五郎さん。一度、夏山の稜線を歩いていた際、腕の毛が逆立ち始め、その後すぐに、ピカッと光り、大きな音で近くに落ちた経験があります。 またある時は、これも稜線で落ちる場所がない雷が、稜線上を走り回って、逃げ回った事があります。 夏山の方が好きじゃないのは、水を担がなければならない事と、雷ですね。怖いです。 その点冬山は、雪崩とルートの間違いさえしなければ良いので好きですね。 朝刊太郎 ]2010/7/1(木) 午後 2:50

  • 朝刊太郎さん、お久しぶりです。山での雷の経験は多いですね。私は九州の九重にある「坊がづる」という平原のど真ん中にあるキャンプサイトで、真上で鳴られたときは恐ろしかったですね。数個の雷が頭上でぐるぐる回ってました。隠れるところがないのは、ほんとうに怖いものです。他の人はテントから出て、東屋に避難してましたが、そこが一番高いところなので、私はテントの中でじっと我慢。わたしだけ黒こげになるのはいやだなぁと考えながら..... 音の速度ですが、私は340m x Sというふうに覚えていました。温度のことまでは考えず。温度の影響は0.6Tということですから、温度が高いほうが早くつたわるということですね。温度が高いということは空気の密度は小さいということですが、音は水の中のほうがよっぽど早く(1500m/s)伝わります。空気より密度が大きいのに不思議ですね。今群馬は雷だらけです。うちは高いアンテナがあるので心配です。(熊五郎) 2010/7/1(木) 午後 6:33