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投稿日 2024/02/06

6AR5 電力増幅用五極管

6AR5_三結_1.jpg

6AR5

​電力増幅用五極管

​五球スーパーなどで使われたおなじみの出力管

1962 ナショナル真空管ハンドブックより

6AR5は1,2W程度を期待するラジオや小型アンプなどの出力管です。MTの傍熱型五極管で、ヒーターは6.3V 0.4A。ピン配置は6CCとなっています。ST管の6K6をMT管にした球と言われているようです。ピン配置が6CCの球は6AR5の他にはありません。よく似たピン配置に7BZがあります。6CCは7ピンがNCですが、7BZには7ピンにもコントロール・グリッドがつながれています。7BZは6AQ5等に使われています。

6CC.jpg

①コントロール・グリッド

②カソード、サプレッサ・グリッド

③ヒーター

④ヒーター

⑤プレート

⑥スクリーン・グリッド

​⑦NC

最大定格

プレート電圧 最大250V

プレート損失 最大8.5W

スクリーン・グリッド電圧 250V

スクリーン・グリッド損失 2.5W

コントロール・グリッド回路抵抗 固定バイアス 最大100KΩ カソード・バイアス 最大500KΩ

ヒーター - カソード間電圧 最大90V

最大定格は上記のとおりです。プレート損失 最大8.5Wということは8.5W / 250V = 34mAとなり、プレート電圧が250Vの場合、プレート電流は34mAまで流せることになります。スクリーン・グリッドは250Vの場合10mAとなります。

コントロール・グリッド回路抵抗は初期電流や残留ガスの影響、コントロール・グリッドの過熱による熱電子放出等によりグリッドに電流が流れる場合、グリッド抵抗によって発生する電圧がバイアスを浅くする方向に働くため規定されています。6AR5を自己バイアスで使用する場合、500KΩのとき1μA流れたとすると0.5Vの影響がありますので、浅いバイアス(0V付近)で使用する場合注意が必要です。

ヒーター - カソード間電圧は、ヒーターとカソード間の絶縁能力と言えます。カソードは自己バイアスの場合、抵抗によってカソードをGNDから正電位に持ち上げますが、一方でヒーターは一方を接地して使うのが一般的です。このためカソードの電位はそのままカソード - ヒーター間の電位差となり、これが90Vを超えることはできません。

6AR5_五極管01.jpg

6AR5 実測Ep-IP/Isg 静特性

Escg 250V Ecg -13V~-36V

Po 8.5W Ip 35mA Isg 10mAに制限

上記はスクリーン・グリッド電圧(Escg)を250Vに固定した場合のEp-Ip特性とEp-Iscg特性です。肩は約Ep 60Vの範囲にあります。スクリーン・グリッド電流(Iscg 細破線)は素直に変化しながら約5mAから1mAの範囲になっています。プレート電圧(Ep)をスクリーン・グリッド電圧と同じ250Vとし、代表的なコントロール・グリッド電圧(Ecg いわゆるバイアス電圧)の場合のプレート電流(Ip)とスクリーン・グリッド電流(Iscg)を拾って(実測)してみました。

Ep 250V Escg 250V

Ecg -16.5V Ip 34.35mA Iscg 4.49mA

Ecg -18.0V Ip 29.53mA Iscg 3.86mA

Ecg -20.0V Ip 26.19mA Iscg 3.41mA

Ecg -22.0V Ip 22.16mA Iscg 2.88mA

6AR5_五極管02.jpg

6AR5 実測Ep-IP/Isg 静特性

Escg 230V Ecg -10V~-32V

Po 8.5W Ip 35mA Isg 10mAに制限

上記はスクリーン・グリッド電圧(Escg)を230Vに固定した場合のEp-Ip特性とEp-Iscg特性です。スクリーン・グリッド電圧は、プレート電圧よりも若干低く設定することもあるかと思います。ここでは230Vに設定しました。当然ながらバイアスは若干浅めになりますのでEcgは-10Vから-32Vの範囲としています。同じように代表値を拾ってみました。

Ep 250V Escg 230V

Ecg -16.5V Ip 27.42mA Iscg 3.54mA

Ecg -18.0V Ip 24.21mA Iscg 3.11mA

Ecg -20.0V Ip 20.23mA Iscg 2.59mA

Ecg -22.0V Ip 16.60mA Iscg 2.12mA

​なお、この6AR5のGmはグラフからEcg 1Vの変化に対してIpが2mA変化しているので、2000前後と思われます。(Ep 250V Escg 250V Ecg -16V)

6AR5_五極管03.jpg

6AR5 実測Ep-IP/Isg 静特性

Ecg -20V Escg 160V~250V

Po 8.5W Ip 35mA Isg 10mAに制限

上記はコントロール・グリッド電圧(Ecg)を-20に固定しスクリーン・グリッド電圧(Escg)を160Vから250Vに変化させた場合のEp-Ip特性とEp-Iscg特性です。

 

スクリーン・グリッドは、プレートよりもカソードに近いためより強力に電子を引きつけますが、プレートに比べその面積が小さなスクリーン・グリッドには、ほとんど電流は流れません。しかしスクリーン・グリッド電圧はプレート電圧よりもプレート電流に支配的です。

Ep 250V Ecg -20V

Escg 180V Ip 8.00mA Iscg 0.98mA

Escg 200V Ip 12.34mA Iscg 1.55mA

Escg 230V Ip 20.21mA Iscg 2.59mA

Escg 250VV Ip 26.21mA Iscg 3.41mA

Esgにある程度の電圧が印加されていないと、五極管はまったく動作しません。たとえば、ラジオの五級スーパーなどで、中間周波増幅管(6D6や6BD6)のスクリーン・グリッドにつながる抵抗などが切れていたりすると、ヒーターが煌々と点いているいるのに、そのラジオはうんともすんとも鳴りません。6AR5も同様です。

またスクリーン・グリッドには通常では数mAしか流れません。スクリーン・グリッドに高い電圧が加わっていても大きな電流が流れないのは、背後にプレートがあるからです。ところがプレート電圧がもし印加されなくなると、スクリーン・グリッドに多くの電流が流れ、その球は赤熱しやがて昇天します。スクリーン・グリッド損失は要注意です。

カソードバイアス回路2.jpg

カソード・バイアス(自己バイアス)

カソード・バイアスはGNDとカソード間に抵抗を入れて、自らのカソード電流(プレート電流+スクリーン・グリッド電流)によって、カソードを正電位に持ち上げ、相対的にグリッドを負電位にして、それをグリッド・バイアスとして用いる回路です。(真空管はカソードを基準電位として動きます) 6AR5の場合、グリッド。バイアス電圧は大体-10Vから-20Vの範囲で使われるので、その範囲になるようにカソード抵抗を選びます。ラジオなどでよく使われる抵抗値は750Ωですが、実際の回路や実測においてはぴったりの抵抗値は用意できません。今回表記750Ω±5%の抵抗ですが、実際は733Ωとなっています。その他いくつかの抵抗値でも同様です。使用した抵抗はすべて1Wのカーボン抵抗。誤差±5%です。

Eh 6.3V

Ih 382.3mA

グリッド抵抗(GR) 509.0KΩ (510KΩ)

KR カソード抵抗(実測値 ()はE24系値)

Eb1 プレート電源(GND-P間)

Ep プレート電圧(K-P間)

Eb2 スクリーン・グリッド電源(GND-Scg間)

Escg スクリーン・グリッド電圧(K-Scg間)

Ip プレート電流

Iscg スクリーン・グリッド電流

Ek カソード電圧(GND-K間)

Ecg グリッド電圧(K-Cg間)

        KR(Ω)       Eb1(V)   Ep(V)   Eb2(V)   Escg(V)   Ip(mA)   Iscg(mA)   Ek(V)   Ecg(V) 

       386(390)   266     250.6    266      250.4     36.28       4.81     16.05   -15.29

       474(470)      267     250.1     267     249.9     33.41        4.39     17.63   -16.79

       513(510)   268     250.4    268      250.2     31.51        4.09     18.30   -17.43

       733(750)       270     249.8     270     249.6     25.00       3.25      21.11    -20.10

       991(1K)         273     250.4     273      250.2     20.60       2.66     23.52   -22.40

以上の実測からこの6AR5はKRが733Ωの場合Ecgは-20.1Vとなることが分かります。

カソード・バイアスはIpの増加によってEkが増え、Ecgが深くなるので、一種の負帰還がかかり、KRの抵抗値で決まる値に落ち着きます。

 

以上はプレートに負荷をつながない場合の直流動作での実測値です。実際の回路ではプレートに出力トランスが直列に入るので、プレート電圧は出力トランスの直流抵抗(数10Ωから数100Ω)による電圧降下が生じるので、プレート電源はその分高くしなければなりません。

実際の回路ではプレート電圧とスクリーン・グリッド電圧は希望の電圧値にぴったり合わせることはできませんし、使用トランスの二次電圧、使用する整流管、平滑回路などで違ってきます。出力管の個体差もあります。このため希望のバイアス電圧(Ecg)値に近づけるには、カソード抵抗値をカットアンドトライすることになります。五球スーパーなどの回路ではよく750Ωが使われています。誤差はカーボン抵抗(炭素皮膜抵抗)の場合は±5%くらいですので、712Ωから788Ωの範囲となりますが、今回使用した750Ω表記の抵抗は733Ωです。誤差面、および温度による抵抗値の変化等の特性を考慮すると金属皮膜抵抗を使っておいた方が無難と言えます。

6AR5_五極管04.jpg

6AR5 三結 実測Ep-IP静特性

Ecg 0V ~ -50V 2V間隔

Po 8.5W Ip 35mAに制限

6AR5 三結

三結、つまりスクリーン・グリッドをプレートにつないで、スクリーン・グリッドとプレートに同じ電圧を与えます。三極管としての特性は、二極管の特性を、コントロール・グリッドの電圧によって、電流が流れ始めるプレート電圧を右へ並行にずらした形をとります。

 

三定数の計測(Ecgを0.5V変化させて計測 あまり精度は期待できません)​

Ecg    -12V      -16V      -24V

Ep     180V     200V      250V

μ        5.6        6.2         6.4

rp    2941Ω   3012Ω   3086Ω

Gm  2220us  2160us  2040us

注意: この計測はどのくらい使われたかわからない中古の真空管で行っています。計測結果はその真空管の固有のものの可能性があります。

 

 

 

6AR5 No. 111

 

 

(JF1VRR)

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