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ダイアモンド型電流アンプを作ってみました

投稿日 2022年09月12日

A806_4.jpg

今回実装してみた回路

LUXKIT A806に内蔵されている2段直結プッシュプル・エミッタ・フォロワ 1Wアンプ回路

​コレクタがクロスしているのでダイアモンド型電流アンプとも呼ばれる

±9Vの電源 ペアトランジスタ二段のエミッタ・フォロワ

オペアンプμPC4558Gでドライブ

前回取り上げたLUXKITのA806というTV MULTIPLEX STEREO ADAPTORというキットに内蔵されている1Wのアンプを再現してみることにしました。上図がその回路です。ドライブ段のトランジスタのコレクタがクロスになっているので、ダイヤモンド型電流アンプと呼ばれます。オペアンプの出力以降の電圧利得は1です。​

ダイアモンド周波数特性_A806.jpg

LUXKIT A806に内蔵のダイアモンド電流アンプ 周波数特性

オペアンプはNEC μPC4558G

​-3dB 0.43W: 100KHz 1W: 75KHz

今回は回路は同じで、入力部の電圧増幅のオペアンプをソケットにして交換できるようにして、音質や周波数特性を比べてみることにしました。

ダイアモンド周波数特性_実装.JPG

蛇の目基板に実装したダイアモンド型電流アンプ

簡単な回路で部品点数が少なく作りやすい

​オペアンプはソケットにして交換できるようにした

A806のオリジナルはオペアンプにNEC μPC4558Gを使っています。残念ながらμPC4558Gの手持ちはないので、上記特性が再現できているかの確認はできませんが、代わりにJRCのNJM4558Dを使いました。ドライブ段のトランジスタは2SC2240と2SA970です。これはA806と同じです。パワー段のトランジスタはA806では2SC1626と2SA816ですが、手持ちが無いので、今回の実装では代わりに2SC3422と2SA1359を使用しました。いずれもコンプリメンタリです。

​まだケースに入れていない裸のままです。電源は外部のレギュレーターを使っています。電源電圧は±8Vです。

スマホのYouTubeで好きな音楽をかけ、BlueTooth経由で入力してみました。A806のオリジナルではやや低音寄りのくぐもった音でしたが、今回実装したアンプでは、同じ4558(NJM4558D)でも、フラットな癖のない音で鳴っています。ノイズ対策は特にやってませんが、私の耳では感じません。無信号時は無音(ハムやサーノイズは聞こえません)です。

今回はオペアンプを以下のものに交換してみました。価格は秋月電子などの標準的な1個当たりの参考価格です。いずれもオーディオ用の高級なものではありません。

A806 オリジナル 4558(メーカー不明) やや低音寄りのくぐもった音

NJM4558D 20円 同じ4558だがオリジナルよりフラットに聞こえる

NJM4558DD 20円

(SONY) CXA4559 50 - 70円

NJM072D 50円

NJM2086DD 50円 全体的にすっきりした音色で聴こえ、聴き易い。

以下、各オペアンプの実測周波数特性です。Lチャンネルのみで、0.43Wと1Wで計測しています。

ダイアモンド周波数特性_NJM4558D.jpg

NJM4558D SR 1V/μs GB 3MHz

​-3dB 0.43W 140kHz 1W 90KHz

ダイアモンド周波数特性_NJM4558DD.jpg

NJM4558DD SR 1V/μs GB 3MHz

​-3dB 0.43W 120kHz 1W 80KHz

ダイアモンド周波数特性_CXA4559.jpg

CXA4559 SR 2V/μs GB 6MHz

​-3dB 0.43W 240KHz 1W 140KHz

4558より約2倍周波数特性が伸びている

ダイアモンド周波数特性_NJM4580DD.jpg

NJM4580D SR 5V/μs GB 15MHz

​-3dB 0.43W 340KHz 1W 240KHz

ダイアモンド周波数特性_NJM2068DD.jpg

NJM2068DD SR 6V/μs GB 19MHz

​-3dB 0.43W 440KHz 1W 330KHz

ダイアモンド周波数特性_NJM072D.jpg

NJM072D SR 20V/μs GB 5MHz

​-3dB 0.43W 350KHz 1W 350KHz

以上、オペアンプによってそれぞれ高域の特性の違いが出ています。これによって音質が違うかと言われると微妙です。私の鈍感な耳では違いが分かりません。可聴周波数20KHzよりも上の周波数ですので聴こえない領域ですが、その辺りの周波数のノイズが音質に影響するとも聞きますので、高域が伸びているからと言っても、単純には喜べません。ノイズは積極的にカットしておくべきですが、今回は対策していません。

NJM072Dは人気があると聞きますが、広域の丸いなだらかな特性が、人間の耳にとってはここちよいのでしょうか。この辺りは耳の良い人に聴いてもらうしかありません。

4558は4558Dと4558DDを試しましたが、ここでは大きな差はありませんでした。4559は4558の周波数特性を倍に改善したとのことですが、実測でもその様子がうかがえます。

​今回の実測で最も高域が伸びているのはNJM2086DDです。200KHzから300KHzくらいでストンと特性の良いLPFのように落ちています。曲を聴いた感じは全体的なバランスがよく、すっきりした音色で、自分では一番気に入っています。

簡単な回路ですし、数千円もするようなオペアンプを使わなくても、非常に音質のよいアンプができます。夜な夜な一人で名曲を楽しむのにダイアモンド型電流アンプを作ってみるのもよいかも知れません​

(JF1VRR)

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