峠考 三国峠 秩父郡大滝村中津川 - 長野県南佐久郡川上村梓山

投稿日 2021年01月xx日

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​今回は三国峠(みくにとうげ)です。私はこの峠にはまだ行ったことがありません。一度隣の十文字峠との間を歩いてみたいのですが、山が深いのでなかなか実現しません。三国峠といえば群馬県と新潟県の県境、上越国境谷川岳近くのトンネルのある三国峠が有名ですが、こちらは群馬県、埼玉県、長野県の三県にまたがる峠です。この峠にも近くに三国山があります。本来の(旧)三国峠は三県から来た道が三国山山頂近くで合流している所(地図参照)ですが、現在は中津川林道(旧名)が埼玉県側の中津川と長野県側の佐久梓山を結んでおり、それが稜線を越えるところを三国峠と呼ぶようです。ここではそれを新三国峠としておきます。しかしそこは埼玉県と長野県の二県の境でしかありませんが。

○どんな地形、水系か

地形的には埼玉県側が急峻です。中津川村落の標高が740m位で、峠が約1830mですから1000m以上もの標高差があります。一方、長野県側の梓山の標高は約1310mですから500mほどの差しかありません。つまり埼玉県側は中津川が刻んだ深い渓谷なのに対して、長野県側は高原のゆったりした地形なのです。水系は、群馬県側が利根川水系の神流川源流。埼玉県側は荒川水系の中津川源流。長野県側は信濃川、千曲川水系です。

○どのように使われた峠なのか

三国峠は馬が通れない人だけが行き来した峠のようです。今の国土地理院の地図にも中津川枝沢の信濃沢から尾根沿いに点線があります(地図参照)が、この道はおそらく人しか歩けない急峻なものと思います。一方群馬県側(地図の北側)は三国山から北西へと長い稜線が延々と続きます。その稜線が天丸山分ける手前で馬道に入り、上野村や野栗沢から万場へと通じていたのでしょう。ただし、中津川からは少し下って神流川から八丁峠や赤岩峠を使ったほうが近いとも思いますが。いずれにせよ人がわずかな炭や塩など担いで通過する生業のための峠だったのでしょう。

○道はまだあるのか

ところで、中津川村落から三国峠に登る旧道はまだある(使える)のでしょうか。秩父の峠について詳しい「峠 秩父への道」大久根 茂著で、著者は探してみたがみつからなかったとしています。上の峠には車道から行ってみたが、古びた道標があったものの下る道は見当たらなかったとしています。その旧道の尾根の取り付き点にあたるところの橋が信濃沢にかかっています。この信濃沢という沢名は中津川から長野県側をみた命名です。つまりこの沢の向こうは長野県(信濃)だよということです。その長野県へ越えて行く道がその傍らから尾根伝いについているのです。おそらく中津川の人にしてみればこの道を使って長野県に越えた方がさまざまな物資を得たり、売ったりするには好都合だったのでしょう。ただ先にも書きましたが標高差1000mもの急な尾根道ですから、想像するに荷を担いでの往復には大変な労力が必要だったでしょう。

○どのような地形か

その旧道のある尾根をよく観察すると、信濃沢の橋を渡ったあとすぐに尾根には取り付かずしばらく信濃沢の右岸を行きます。おそらく下に沢を見ながら沢の奥へと進みます。やがて左上へと登りますが、標高約1180mの尾根筋に登り着くまでがこの尾根で最も急な箇所です。(尾根は最下部の傾斜が最も急ということはよくあることです。沢による侵食が激しいからです) その急坂の道は実際にはつづら折りの道になっている可能性はありますが。なぜ尾根の先端から取り付かないかというと、地図でもわかるように尾根の先端部は岩場または岩壁です。それを避けているのでしょう。

最初の急登が終わって尾根に乗ると三国山山頂付近の峠までほぼ同じような傾斜となります。樹相は下部の南面に針葉樹がありますが、多くは落葉広葉樹のようです。行って見ないとわかりませんが、Google Earthで上から見ると濃く密な緑色ではないので、おそらく杉なのど植林帯ではなく、唐松である可能性が大でしょう。上から見る限り樹木の密度は高くなさそうなので、晩秋などの落葉後の見通しのよい時季に登れば面白いかも知れません。

○登下降する場合の注意点は

この尾根を登下降する場合の注意点としては、まずは最下部の急傾斜部でしょう。ほかに、三国山山頂からの尾根の派生点に特徴がなく降り口がわからない可能性があります。とくに霧が出ているとまったくわからない可能性がありそうです。間違って信濃沢の源頭に降り行くと危険です。また、尾根のほぼ中央のP1595が二股になっており、南側の尾根に降りないように注意すべきでしょう。(降りても林道に降り立つので危険は無いとは思いますが。)

○三国山には三角点が無い

三国山の山頂は地図に記載があるように標高1834mです。しかし三角点はありません。標高が明記されているので図根点があるかも知れませんが。とにかく三県の県界にもかかわらず、なぜここに三角点を置かなかったのでしょうか。周囲の三角点は北西群馬長野境2.3kmの二等蟻ヶ峠1979m、北東群馬埼玉境2.7kmの三等点名高水峠1619m、南埼玉長野境1.5kmの三等点名梓山1850mです。三国山はこの辺りの最高点ではありませんが、各県の沢の源頭部の重要な位置ですし、何より三県の大事な境ですから三角点が無いのは不思議です。

​言ったこともない峠のことをあれこれ書きましたが、三国峠はその名前、位置などからぜひ行ってみたい峠です。荒川最奥と言ってもいい中津川集落で暮らしていた人たちはどのようにこの峠を使っていたのでしょうか。現地に行ってそれを肌だけででも感じてみたいと思っています。

​(雅熊)