モルゲンロートの朝 愛し合うふたりのロマンス

​​投稿日 2019年08月05日

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3000m級の山に登ると、早朝、モルゲンロートにであうことがある。

 

モルゲンロートは、空気の透き通った朝、地平線から顔を出したばかりの太陽の光で山肌が数分間オレンジ色に染まる現象をいう。

 

2010年の8月2日。夏山として北アルプスを選んだ私は、念願の常念岳に登るため、蝶ヶ岳から常念、前常念へと廻る周回ルートを歩くために三股に入った。駐車場で仮眠し翌朝蝶ヶ岳に向けて歩きだす。

 

朝の清々しい空気の中で、コマドリやメボソムシクイの声が透き通って聞こえてくる。まだ朝靄の漂うシラビソの森。樹間から見える前常念の稜線。ひんやりした空気と高い空はここ数日の好天を約束していた。

 

今回の周回ルートは一泊で回れる気軽なルートで、常念岳もさることながら、その稜線から見る槍ヶ岳、穂高の姿が美しいことでも有名だ。野営する蝶ヶ岳の山小屋の前からの眺めを密かに楽しみにしていた。

 

蝶ヶ岳の山小屋は多くの人で賑わっていた。大町の上空辺りでときどき光っている雷雲を気にしながらテントを張るが、やがて雷雲は小さくなって全天に星が輝き始めた。

 

翌朝は見事に晴れた。地平線の遠くに雲の帯があるものの、そこから上は青く澄み渡っていた。やがて雲の帯から太陽が顔を出し、辺りをオレンジ色に染めた。いままで暗く沈んでいた槍ヶ岳から穂高にかけての稜線が、みごとなオレンジ色に照らし出された瞬間だ。

 

多くの人は歓声を上げていたが、少し離れた野営場の脇に二人は佇んでいた。槍ヶ岳の方に向いたまま無言で。

 

 

 

 

 

 

(熊五郎)