大久根 茂著 さきたま双書
秩父の峠 昭和63年4月30日 初版第1刷発行
峠 秩父への道 平成7年4月30日 初版第1刷発行
埼玉県の秩父地方の山に出かけることが多いのですが、峠を通過することも多く、その峠の歴史について知りたくなることがよくあります。
秩父は周囲を山に囲まれた盆地ですから、峠はことさら重要なものであったに違いありません。以下のような産物の出入りや人の往来は峠を越えて行われたからです。
産物の人や馬の背による流入出
年季奉公、鉱山などで秩父で働く人の往来
祭り特に秩父夜祭りの見物客、物資
秩父札所や三峰詣で
嫁入りなどによる親族の交流
などなど
今では車道が開通して、峠は使われなくなり、ときどき私のような登山者が通過するだけとなりました。登山者の多くは山に登ることが目的ですから、峠を稜線の一部として横から横へと通過します。これでは峠を使ったとはいえなでしょう。
峠は本来、麓の集落から、反対側の集落へと続く道の最高点です。集落から集落へと歩いてみて、はじめて峠を使ったたと言えるのではないでしょうか。しかし昔、ここを人が行きかったり荷を背負った馬が通ったかもしれない。人の目的は何だったのだろうか。荷物は何だったのだろうか。峠に立ったとき、そんな思いが胸をよぎるのです。
そのように峠の歴史について知りたくなった時、今は文献に頼るしかありません。幸い峠について書かれた本は散見されますが、この本は取り上げた峠の秩父と外部との関係や位置、役割などを説明し、その峠の魅力を浮き彫りにしてくれます。
取り上げられている峠は、秩父の外周部の峠で秩父との係わりが説かれています。秩父の数多くの峠から厳選された峠と言えましょう。秩父の山に登って峠に立った時、または遠くから峠を眺めた時、この本で得た知識で、その峠の往時に思いをはせるのもいいかも知れません。
秩父外周部の峠の位置関係
赤点はこの本で取り上げられている峠
秩父の峠
十文字峠
雁坂峠
仙元峠
妻坂峠
正丸峠
顔振峠
大野峠
粥新田峠
釜伏峠
秩父・児玉境の峠(出牛、ぐみの木、糠掃、不動、間瀬、榎峠)
土坂峠
志賀坂峠
八丁峠
峠 秩父への道
三国峠
赤岩峠
雁峠・将監峠
地蔵峠
小鹿坂峠
札立峠
葉原・仙元・賽神峠
定峰峠
ブナ峠
山伏峠
鳥首峠
天目指峠
鎌倉峠
(熊五郎)