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熊谷みちで秩父入り 釜伏峠越え 2019年1月16日 晴れ 2名

投稿日 2019年1月21日

 

江戸時代からの秩父巡礼古道「熊谷みち」の山越えルートを辿ってみました。熊谷みちは寄居から荒川沿いに平坦な道を行くルートもあるのですが、そちらは荒川の氾濫で通行不能になることも多かったとか。そこで代わりの山越えルートとして「釜伏峠越え」のルートも利用されました。

今回はその熊谷みちの釜伏峠越えを実際に歩いてみました。といっても、昔のように熊谷から歩きはじめるわけにもいきませんので、寄居の釜伏峠近くに車を置いて、秩父側の三沢に越え、バスで皆野に出て秩父鉄道で寄居に戻る周回ルートです。

​「熊谷みち」は江戸時代の秩父巡礼が盛んだったころ利用された巡礼道です。江戸から各宿場を辿って熊谷宿に至り、そこから寄居、秩父へと歩いたようです。その証拠に「熊谷みち」の道しるべが熊谷の街中に残っています。

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熊谷市石原町一丁目にある道しるべ

左は明和三年(1767年) 252年まえの道しるべ

右は安政五年(1860年) 159年前の道しるべ

右は左の93年後に建てられている

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「ちちぶ道志まぶへ十一り 石原村」明和三年

「秩父観音巡礼道 一ばん四万部寺へたいらみち十一里」安政五年

 

(注) 新編熊谷風土記稿によるこの道しるべの記載では、「たいらみち」というのは、寄居から荒川沿いの道で長瀞(当時 藤谷渕)、皆野、黒谷を経て一番札所に入る平坦な道を示したもので、釜伏峠越えではないとのことです。現在の波久礼辺りには人が歩ける細道はあったようです。ただし釜伏峠を越え、三沢から一番札所に入る道も多く使われたと思われます。(2019/02/05)

 

説明文(写真)にあるように、秩父への道 志まぶ(四萬部寺)まで十一里 現熊谷市石原町。この秩父への道は熊谷みちとも呼ばれ、現在の熊谷市から秩父の観音霊場一番札所 四萬部寺への巡礼道だったのです。おそらく熊谷宿を朝発てば四萬部寺にはその日じゅうに着いたでしょう。

 

ルートは熊谷から寄居を通って、釜伏峠(かまぶせとうげ)を越え、秩父側の三沢へ降りて、四萬部寺へと向かっています。(注) 現在、荒川に沿って作られた国道140号が寄居、波久礼から長瀞そして秩父へと入っていますが、この荒川沿いの道が作られたのは明治二十八年になってからで、かなり新しいのです。峠越えとはなるものの昔は、四萬部寺へ真っすぐ向かう熊谷みちが使われたようです。道しるべから分かるように、難所のない平ら(ゆるやか)な道だったようで、寄居から400m位の標高差になりますが、馬も越えられる歩きやすい道だったようです。

 

秩父側の平草には荷物を運ぶ馬方が居たとのことで、寄居-秩父間の荷物を峠越えで運んでいたようです。また、秩父美の山の麓南面にある三沢(みさわ)は、機織を生業にしていたようで、槻川(つきがわ)の村々(現在の東秩父村)の女性が峠を越えて三沢に年季奉公に来ていたようです。荷物や札所巡礼者のほかに、多くの娘さんたちも峠を越えたのでしょう。

 

今回は、熊谷のYさんに同行をお願いし、熊谷市石原町の道しるべを確認したあと、昔を忍びながら熊谷みちを寄居から歩いて釜伏峠を越え、秩父側の三沢に降りてみることにしました。全ルート林道歩きです。三沢から西に4キロほど歩けば四萬部寺ですが今回は寄らず、バスを拾って皆野に出て、車を置いた寄居の運動公園に戻りました。

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(画像を一度左クリックし、次に右クリックして新しいタブで画像を開いて拡大してご覧ください)

熊谷みち

寄居から釜伏峠越え三沢ルート

赤実線:歩行GPS軌跡

(国土地理院電子国土地図に情報追加)

 

通過時刻:

寄居運動公園駐車場 8:30

中間平(展望台) 9:45

関所跡 10:37

釜伏峠 10:51

釜山神社 10:58

釜伏峠  11:06 (昼食) 11:20

平草の一里塚 11:40

平草のキリシマツツジ 11:50

薬師免の自然石板碑 12:31

釜伏峠口バス停 12:42

 西武バス 釜伏峠口バス停 13:07 -> 皆野、秩父線 -> 寄居

 寄居駅から寄居運動公園駐車場まではタクシー利用

寄居運動公園駐車場 14:20

 

所要時間:4時間15分

総歩行距離:12.7km

累計高度:699m

 

熊谷のYさんと合流したあと、熊谷市石原町一丁目の道しるべに寄りました。寄ったといっても、これから寄居方面へ国道140号を利用する我々にとっては、通過ポイントです。それは簡単に見つかりました。昔の位置から50mほど移動してますが、秩父への道しるべ三基が並んで建っています。県指定の旧跡として、説明の石板もありました。うち、二基は秩父札所四萬部寺(しまぶじ)への。のこり一基は秩父長瀞の宝登山(ほどさん)神社への参拝のもののようです。江戸方面から中山道を来た巡礼者はここで秩父に向かった訳ですが、この立派な道しるべから、江戸時代のブームであったことが想像できます。

 

その後車で寄居に移動。寄居駅前に到着したら、有料駐車場が消えています。そこに停めて寄居駅前から出発しようと目論んでいましたが予定変更。鉢形城址の少し上にある寄居運動公園の駐車場に停めさせていただくことにしました。ということで、かなり峠に近付いた所からのスタートとなりました。

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常光寺近くにある中間平への道標

卜雲寺から眺める武甲山

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折原付近のネギ畑から釜伏山を望む

 

 

身支度を整えて釜伏山からの緩やかな傾斜の道を菜っ葉やネギなどの畑を見ながら歩きます。常光寺を右に見て少し進むと角に中間平(ちゅうげんだいら)への道標が立っています。引き続き緩やかな斜面の道を行くと、道は植林帯に入って行きます。要所要所に道標があります。やや傾斜が強くなり、すこしくねくねと曲がると中間平の明るい梅畑に出ます。梅のころはきれいだろうなと想像します。高みに二階建ての展望台が建っているので寄りました。関東平野や外秩父の山々がよく見えています。中間平には駐車場やトイレがあります。梅の時季はちょっと遊びにくるのもよいかもしれません。

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中間平の梅畑と展望台

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展望台から釜伏山(小さな三角)を望む

釜伏峠は釜伏山の左側ほぼ写真の中央

 

 

更に舗装の林道を進むと民家があり、その奥に関所跡の説明板と石碑があります。現在釜山峠にある釜山神社は昔ここにあったようですが、火事で焼失したため、峠に移されたとのことです。やがて暗い植林の向こうにぽっかり明るい峠が近付いてきます。峠の直前に舗装の右横に、道形のようなものが並行します。昔の道でしょうか。

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関所跡の説明板

 

 

釜伏峠には駐車場があります。釜山神社(かまやまじんじゃ)への参道が200mほど伸びており、奥に釜山神社があります。多くの狛犬が迎えてくれます。秩父側の三沢から来た林道(県道361)がここで登谷山、二本木峠方面に向かっています。秩父側は陽を受けて明るいのが印象的でした。

釜伏峠

釜山神社の参道入り口

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釜山神社

 

 

峠の斜面で昼食にし、県道361をてくてく歩いて高中から平草へ。のどかな山里です。民宿を見たらすぐに平草のキリシマツツジ、イヌツゲがあります。尚も林道を下ると平草の一里塚です。説明板がよく読めませんが、昔徳川家康の時代に一里の距離を正確に定め、一里毎に塚を立て、榎木(えのき)を植えさせたとのことです。(この近くのほかの一里塚には曽根坂の一里塚があります)

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平草の一里塚説明板

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平草の集落

左遠くに両神山

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薬師免の自然石板碑

文保元年(1317年)の石碑 約700年前のもの

 

 

いくつか林道が分岐しますが、本道を歩いて地蔵、薬師免の自然石板碑などを見たら釜伏峠入口バス停はすぐです。このバス停にはトイレがあります。20分ほどで13時7分の皆野行きが来ましたので、秩父線皆野駅に出ました。秩父線に乗り換えて寄居に戻り、タクシーで寄居運動公園に戻ったのは、14時20分ごろでした。

金昌寺本道と石仏群(1000体以上あるという)

境内は石仏で埋め尽くされている感じです

秩父断層の不整合露頭も見られます

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西武バス 釜伏峠入口バス停

横にトイレがある

 

実際に熊谷みちを歩いてみると、たしかに緩やかで簡単に峠越えができるという印象でした。まぁ、今は舗装の林道になっており、昔とは比べ物になりませんが、人や馬の往来には便利だったのでしょう。

 

秩父への道は今回歩いた釜伏峠越えの熊谷みちのほか、粥新田峠越えの川越みちが川越と。正丸峠越えの吾野みちが飯能と通じていたようです。江戸時代からブームの秩父札所めぐりのほか、秩父夜祭、物資の運搬、嫁入りや年季奉公のための峠越えなど、昔人や馬が越えた峠を往時をしのびながら辿るのも山の愉しみ方かも知れません。

 

 

 

 

(熊五郎)

コメント(2)

  • 秩父は奥が深いようですねえ。 (agewisdom) 2019/1/17(木) 午後 8:49

  • > agewisdomさん そうですね。話題に事欠きません。味わいのある地域です。(熊五郎) 2019/1/18(金) 午前 8:15

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