三角点の点名がおもしろい                        投稿日 2018年12月18日

 

山に登るときはスマホをお供に連れて行く。GPSソフトを使って位置確認するためだ。これで安全に登山できるようになった。

 

山で役立つソフトにはGPSソフトのほかにもいろいろある。その中のひとつに「三角点Viewer」という無料ソフトがあり、これも便利に使わせていただいている。

一等三角点.jpg

三角点Viewerで一等三角点のみを表示

日本列島にあまねく配置されている

 

この三角点Viewerの使い方は単純で、地図の上の三角点の位置と、三角点の諸元を表示してくれるものだ。

 

山で三角点の傍に立って、三角点Viewerの「現在位置」ボタンをタップすれば、ただちにその場所の地図が表示され(地図は家でキャッシングしておく必要がある)、さらに三角点をタップすれば、その三角点の諸元が表示される。諸元には点名、等級、緯度、経度、標高、COD、場所、訪問記録、画像(登録されている場合)が表示される。家に居る時も、様々な場所の三角点を探って楽しんでいる。

 

今回は、このうち点名について取り上げるのだが、この点名は誰がどやって命名したのだろうか。といっても、それは分かるはずもないので、点名とは何なのか、自分なりに考えてみたい。

燕岳三角点.jpg

北アルプス燕岳の三角点

点名 燕岳

等級 二等三角点

緯度 36.407 経度 137.713

標高 2762.96m

COD TR25437458701

場所 長野県安曇野市

 

ここからは持論であるが、三角点の点名は地名とは違うと私は思っている。

 

ところで、地図にはさまざまな地名が記載されている。県名、市名、町名、山名、谷や沢の名前など。それらは誰がどうやって付けたのだろうか。そして命名の根拠は何か?地図がつくられる以前から多くの地名は存在していたはずだから、現地調査して付けていったのだろうとは想像する。言えるのは、地図の作製者が、地名の無いところに、無理やり地名を与えるような事はなかった(してはならない)だろうということだ。

 

特に山岳地帯は、人がほとんど立ち入らないため地名が付いていない場所も多かっただろう。目立ったピークや、集落と集落を結ぶ峠くらいにしか名前が与えられなかっただろう。実際、山岳地帯には地名が与えられていない場所も多い。

 

ところが今の地図を見ると、小さな沢という沢や、ピークの多くに呼び名が与えられている。それはおそらくその山域を生活の糧にしていた人々。つまり猟師や樵(きこり)、炭焼きの人たちが付けた名前だろうと思う。その際、沢は重要であるが、ピークはさして重要ではなかったのではないか。このため〇〇沢の源頭にあるピークは、〇〇沢の頭(あたま)と呼ばれる。独立峰とか、よほど目立つピークでない限り個別の呼び名は与えられない。実際、稜線上にある一ピークに、いちいち〇〇山や〇〇岳という呼び名は与えられないケースが多々ある。

 

前置きが長くなったが、三角点の設置に関しては事情が違ったのではないかと思う。問題は三角点の点名(その三角点の呼び名)をどうするかである。全国に10万を越える数ある三角点だが、どうやって名前を付けたのだろうか。

 

三角点の点名は地点名であるから、山名や最寄りの地名(村や集落など)から持ってくることは十分考えられる。実際、点名のほとんどはそうなっている。富士山山頂にある二つの三角点のうち一方の点名は「富士山」、秩父の武甲山山頂の三角点も「武甲山」、江の島の三角点も「江の島」である。東京には「東京」という三角点がある。これらは当然でうなずける。

 

ところが事はそう単純ではない。どうしてこういう点名にしたのかいくら考えても分からないものも多い。

 

たとえば、長野県に甘利山(あまりさん)という、どちらかというと目立たないのっぺりした山がある。南アルプスの前衛とも言えそうな山で、展望がいいし、到達しやすいのでよく登られているが、この甘利山山頂の近くにある三角点の点名は「絶頂」である。地図上けっして鋭いピークではないと思われるのになぜ絶頂なのだろうか。現地に断崖絶壁でもあるのだろうか。逆に近くに甘利山という三角点はない。だが絶頂がつく三角点は他にもあって、北海道稚内沖の利尻島にある利尻山の点名は「利尻絶頂」である。こちらは鋭峰なので分からなくもない。

 

長野県佐久市 荒船山近くの兜岩山の近くの小ピークには、「巌孤」がある。「がんこ」と呼べばいのだろうか。このピークには名前ようだ。しかし三角点が設置されていて「巌孤」という点名が与えられている。巌窟王の巌は大きな岩を意味する。孤独の孤はひとりぼっちや、みなしごという意味だから、孤独な露岩があるのだろが、それが近くの兜岩という大きな岩頸が、この岩の親ではない、つまりみなしごと見なされたか。だとすれば、近くにあっても兜岩とこの「巌孤」の岩質が異なるのか。いろいろ想像させるが、現地で調べたら何か分かるかも知れない。ちなみに地図を見る限り近くに「巌孤」という地名は無い。

 

このほか、とくに山岳地にはカタカナで表記される奇妙な地名が散見されるが、三角点の点名にも多い。とくに調べた範囲では静岡県に多いようだ。一部ひらがなもある。メッテイ、ツフラノキ、オオキビラ、イモアナンタワ、カツサアラ、わんだ、コハキなど。近くにこんな地名は無いし、漢字表記ではないので、意味もわからない。ほとんどが四等三角点だが、もうお手上げである。ご存じの方から説明を受けたら、さぞ面白いだろう。

 

ところで、三角点の点名はその地点を示すため、あまり広がりを意味する名前は与えられない。ひとつの県には何百もの三角点があるからである。ところが群馬県(他は調べていないが)には「群馬」という電子基準点がある。電子基準点はGPSが運用されるようになってから設置された新しいものだ。どういう経緯で「群馬」と命名されたのだろうか。群馬県には他にも多くの電子基準点が設置されているというのに。

 

最後に「日本経緯度原点」という三角点が東京の港区にある。この三角点は等級がない特別なものである。名前のとおりの役割があるのだろう。すぐ近くに一等三角点「東京」があるのがおもしろい。

 

結局、三角点というものは測量されて決められた地図上の「位置」の精度がもっとも重要なものであって、名前である点名はさして重要なものではないのだろう。つまり全国に星の数?ほどある三角点には位置の重複はないが、地名に同じものがあるように、広範囲に見ればおそらく点名には重複があるだろう。その多くは近くの地名からとられたが、三角点が複数あれば、それらになんとかして名前を与えなければならない。呼び名のないピークにも、斜面の露岩にも、あまねく名前を与えなければならないのだ。そういう意味からして、点名は地名とは異なる。そんな点名ではあるが、〇〇2や第二〇〇、〇〇東や〇〇下などの妥協した命名をせず、それぞれに固有の名前を与えている点が、真面目な日本人らしいのではないだろうか。

 

おもしろい三角点の点名例

 

巌孤 四等三角点 1264.87m 長野県佐久市 兜岩山近く

サツキ 四等三角点 1145.6m 長野県北佐久郡

メッテイ 四等三角点 1683.03m 長野県南佐久郡 男山の近く

絶頂 三等三角点 1671.82m 山梨県韮崎市 甘利山の近く

ツフラノキ 四等三角点 878.53m 静岡県浜松市 青崩峠近く

オオキビラ 四等三角点 721.08m 静岡県浜松市 

イモアナンタワ 四等三角点 535.95m 静岡県浜松市 春野町田河内

わんだ 四等三角点 501.22m 静岡県棒原郡

カツサアラ 四等三角点 421.99m 静岡県棒原郡

コハキ 四等三角点 754.75m 静岡県島田市

群馬 電子基準点 136.385m 群馬県高崎市

日本経緯度原点 その他 26.63m 東京都港区

東京(大正) 一等三角点 25.36m 東京都港区 日本経緯度原点のすぐ近く

 

 

本記事での点名等は、「三角点Viewer」に表示されるものを参考にしています。

 

 

 

 

 

(熊五郎)

 

コメント(2)

  • カタカナのはどう書くのかしら?面白いですね。なんかイモアナンタワなんてポリネシアの言葉みたい。 (agewisdom) 2018/12/18(火) 午後 1:16

  • なにか由緒があると思うのですが、わかりません。せめて現地に行ってみたいものです。(熊五郎) 2018/12/18(火) 午後 1:47