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展望の山旅 藤本一美、田代 博編著

投稿日 2017年06年08日

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カバー表は滝子山からの展望図

丁寧に描かれた展望図はカラーで美しい

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カバー裏は両神山から見た紅葉の赤岩と赤岩尾根

 

 

展望の山旅 山から見える山・町から見える山

藤本一美、田代 博編著 実業之日本社 1987年2月初版第1刷 263ページ

 

こんなに美しい装丁の本もなかなか無い。それはカバーの表、裏を飾る藤本一美氏の絵である。丁寧に描かれた展望図で、表紙の絵は滝子山からの北方を眺めたもの。裏は、両神山から赤岩方面(北西方向)を眺めたものだ。カラーで見られるのはこの2つだけだが、本の中にはそれぞれに美しい展望図がちりばめられている。

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著名な山岳家が書いている

 

 

この本はサブタイトルにもあるように、その山に登ってそこから周辺の山々がどのように見えるかを丁寧に説明し、展望の愉しみ方、山座同定の愉しさを伝えるものである。まえがき、あとがきともに無いので、著者がどのような意図をもってこの本を発刊したかはわからないが、巻末の「パノラマ写真の楽しみ」「やさしい山座同定」「誰でも撮れる立体写真」などが、それらへ導くものであることは説明するまでもないだろう。

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折込の表は池袋サンシャイン60からの展望図(山名入り)

写真から藤本一美氏が書き起こしたもの

 

 

実は私は若いころにこの本を書店で見つけ、その場で胸をおどらせた。山岳展望のすばらしさ、山座同定の楽しさがぺらぺらページをめくるだけで直感できたのだ。さっそく購入して長い間座右の書となっている。実際、この本を手にして以降、常に正確な山座同定を意識しているし、パノラマ写真も撮るように心掛けてきた。

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折込の裏は、入笠山からの西、北西の展望

展望図と実際の写真を比較できるようになっている

こちらの作画は田代 博氏が担当

入笠山は諏訪湖の近くにあり、アルプスの展望によい山として有名

 

 

この本のよいところは、展望を丁寧に描かれた絵で説明しているところだ。実際、山頂からの写真等で見ると、山の重なり合いや、雲の状態などで意外と細かい点が分からないものだが、その点注意深く観察されて正確に描かれた絵は分かりやすい。おまけにこの本では実際の見え方を写真で示しているものもある。見比べてみると面白い。

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実際の写真で山座同定しているものもある

晴れを選んでこのような写真を撮る苦労が察せられる

いずれの写真も空気が澄んで遠望できる日を選んで撮られている

中には山皺が鮮明で、赤外線写真ではないかと思わせるものもある

 

 

実業之日本社と聞くと、その名前からは実用書が得意のような印象を受けるが、私が山の本をこの会社の本に求めるときは、そうは感じない。私の印象はとにかく実業之日本社の本は至れり尽くせりで丁寧に作られているということだ。実業之日本社がそうなのか、著者たちがそうなのか実際にはわからないが、とにかく装丁といい、写真やカットなどが美しいし、手抜きがない。著者の山屋たちがそうするのか。とにかく読んでいて楽しいし、気持ちがいい。

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山の説明とともに、展望図や写真が添えられている

左に字を小さくして簡単な登り方、アプローチ、推奨ルートなどが書かれている

 

 

先の写真にあるように、文章は有名な登山家8名、写真を3名、作画に2名関わってる大作で、文章、写真、作画が誰の手によるものか。作画が写真から起こしたものかどうか、それは誰の写真からかなど、すべてわかるようになっている。そして実際にこの本を手に山に登って展望を見てきたい人のために、各文章の末尾には登り方、アプローチ、推奨ルートなどが書かれている。

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丁寧に描かれた展望図は見ていて飽きない

文章を読み、展望図を味わい、写真でも確かめて机上登山ができる

作画は藤本氏、田代氏が担当しているが、不思議にもあまりタッチに差がない

 

 

最近この手の本がネットなどで安く売られているのを見ると悲しくなるが、ファッションやトレーニングなど優先で、山を単なる場として利用している人も多い。そのような人は、このような本は手にすることは無いのであろうか。いつも思い返したら読む本。再び登るときに、前回のことを思い出すための本。先人がどのようにその山と向かい合ったか。その山にどのような物語があるのかを知るための本。山の先人たちが残してくれた遺産を大事にしていきたいものだ。

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山座同定の方法やパノラマ写真、立体写真の取り方が説明されている

 

 

 

掲載されている山々(72座)

 

山名、標高、(著者名)

大岳山 1266.9m(横山)

川苔山 1363.7m(藤本)

浅間嶺 903m(浅野)

鷹ノ巣山 1736.6m(横山)

顔振峠 510m(藤本)

伊豆ヶ岳 851.4m(藤本)

丸山 960.3m(藤本)

堂平山 875.8m(藤本)

秩父破風山 626.5m(藤本)

城峰山 1037.7m(平野)

雲取山 2017.7m(藤本)

両神山 1723.5m(藤本)

雁峠 1780m(横山)

甲武信岳 2475m(横山)

金峰山 2595m(藤本)

瑞牆山 2230.2m(横山)

大菩薩峠 1897m(横山)

雁ヶ腹摺山 1857m(平野)

滝子山 1590.3m(打田)

笹子雁ヶ腹摺山 1357.7m(横山)

高尾山 599m(横山)

陣馬山 857m(田代)

三国山 960m(横山)

扇山 1137.8m(田代)

倉岳山 990.1m(打田)

高川山 975.9m(横山)

御正体山 1661.6m(浅野)

三ツ峠山 1786.1m(小疇)

鉄砲木ノ頭 1291m(田代)

富士山 3775.6m(小疇)

塔ノ岳 1490.9m(田代)

蛭ヶ岳 1672.7m(田代)

明神ヶ岳 1169.1m(田代)

万三郎岳 1405.6m(田代)

乾徳山 2016m(田代)

茅ヶ岳 1703.5m(横山)

入笠山 1955.1m(小堀)

霧ヶ峰(車山) 1925m(浅野)

美ヶ原(王ヶ頭) 2034.3m(浅野)

赤岳 2899.2m(打田)

御座山 2112.1m(浅野)

御荷鉾山(西) 1286.2m(東)1246m(横山)

荒船山 1422.5m(浅野)

妙義山(谷急山) 1162.1m(打田)

榛名山(掃部ヶ岳) 1448m(浅野)

根子岳 2127.9m(横山)

横手山 2304.9m(横山)

石裂山 879.4m(浅野)

男体山 2484.4m(横山)

奥白根山 2577.6m(藤本)

燧ヶ岳(俎嵓)2346m(田代)

谷川岳 1963.2m(藤本)

武尊山 2158.3m(打田)

白毛門 1750m(打田)

筑波山(女体山)875.9m(浅野)

鳳凰山(観音岳)2840.4m(藤本)

甲斐駒ヶ岳 2965.6m(横山)

仙丈岳 3032.7m(横山)

北岳 3292.4m(田代)

塩見岳 3046.9m(田代)

赤石岳 3120.1m(藤本)

聖岳 3011m(田代)

木曽駒ケ岳 2956m(浅野)

御岳山(剣ヶ峰) 3063.4m(平野)

奥穂高岳 3190m(打田)

蝶ヶ岳 2664.3m(田代)

燕岳 2782.9m(打田)

槍ヶ岳 3180m(藤本)

雲ノ平 2500~2700m(藤本)

別山 2885m(横山)

剣岳 2998m(横山)

白馬岳 2932.2m(浅野)

 

首都圏から見える山

”山都”から仰ぐ山々 秦野市渋沢丘陵、大町市大町山岳博物館

パノラマ写真の楽しみ

やさしい山座同定<基礎編>

やさしい山座同定<応用編>

誰でも撮れる立体写真

 

 

 

 

 

 

 

 

(熊五郎)

コメント(2)

  • ここにいたりいくつか登った山も出てきました。高尾山とか妙義山とか、それぞれに青春の思い出があるやまです。 (agewisdom) 2017/6/8(木) 午後 5:17

  • > agewisdomさん そうですか。山は昔のように今もありますから、出かけてみてください。(熊五郎) 2017/6/8(木) 午後 6:14

     

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