酉谷山秋容

投稿日 2015年11月04日

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坊主山あたりから 秋の酉谷山

 

酉谷山(とりだにやま)は雲取山の近く、東京都の最奥にある山である。

 

奥多摩の日原川源流部の支流「小川谷」の源頭部の山で、長大な長沢背稜の一角にある1718.3mのピークが酉谷山である。

 

この山の名称は、小川谷の支流である酉谷から来ているようだ。ということは東京都側からの名称になる。酉谷山には黒ドッケや天目山の名前もあるようだが、きっと埼玉秩父側からの名称もあるのではないだろうか。

 

長沢背稜は、長沢山を中心として雲取山から蕎麦粒山あたりまでの稜線をいうようだが、文字通り東京都奥部の背中にあたる県界稜線である。この稜線の向こうは埼玉県の秩父だ。水系で言えば、東京都側は多摩川水系、秩父側は荒川水系である。当然ながらこの地域の自然林は東京都の大事な水源林となっている。そういえば、酉谷山避難小屋の横にある水場は、尾根筋から40mくらいしか降りていないのに、チョロチョロと水が出ているのは不思議だ。ここは小川谷の源頭と言っていいだろう。

 

奥多摩は私の印象では日原などの地名からか、日当たりのよい山里のイメージがある。

昔、東京都の田無に住んでいたときには、何度か日帰り登山や簡単な沢を詰めたりしたが、現在の私は群馬在住。よく山を共に楽しむ友人は埼玉熊谷在住だから、ちょっと奥多摩には入りにくい。どうしても埼玉県の秩父に入ることが多い。

 

秩父側からの酉谷山周辺は、大血川からの荒廃した道。熊倉山からの稜線を辿って。武州日野や浦山から、これまた道のない山を辿って登ることになり、なかなか登りにくい山域という印象だ。しかも北側から登るということも相まってか、陰鬱さえ感じてしまうのは私だけだろうか。埼玉側からみた背稜は、正しく背中側であり暗く深い山なのだ。

 

ところで、この長沢背稜とその近くの山々にはある特徴的な命名がされている。それは「ドッケ」。芋ノ木ドッケ、三ツドッケ、黒ドッケ(酉谷山)、大ドッケ(秩父側)がそうだ。友人によればドッケは、本来はトッケで、峠からきているらしい。峠から来ているといっても、それらは鞍部ではなく、ピークの名称だから面白い。自論だが、この辺りの急峻な地形では、谷筋に道を作ることは困難であり、付けてもすぐ崩壊する。ならば尾根筋に付けて、ピークを乗り越えるしかない。必然的にピークが地域をつなぐ境目となり峠となる。余談だが、「峠」という字に、鞍部という意味はなさそうだ。つまり峠はなるべく低い所を通過するという意味はないのではないか。ならばピークがトッケでも、何の不思議もない。

 

トッケの話が長くなったが、長沢背稜にはずっと通して道がある。山をやる者なら、一度は歩きとおしてみたい稜線の道で、憧れでもある。私は酉谷山から仙元峠(仙元トッケ)までしか歩いていないが、この道はピークというピークをすべて避けて、稜線ぎりぎりだが東京都側(日原側)をへつっている。おそらく古くは東京都水道局が巡視などで必要とした道なのだと想像する。この道の下、日原側の小川谷は地形が急峻なので、アップダウンの少ないスピードが出せる道とは言っても気の抜けない道である。ちょっと間違えば小川谷へ数百メートルは転げ落ちるだろうという場所はいくつもある。実際、木梯子を水平にかけた個所(桟橋)を何箇所か通過するし、落した石は転がりながら消えていくような急斜面はいくつもある。私は、こんな場所ではひとりで歩いていて、人知れず転げ落ちたら、発見されるまでには白骨と化しているだろうと想像する。このような歩きやすい道は注意散漫になるが、実際には危ない場所なのだ。

 

最後になったが、酉谷山は関東平野から見えているようだ。たとえば埼玉県の熊谷からだと、堂平山と笠山の間に三角形の武甲山が見え、その右肩に酉谷山、さらにその奥に雲取山という具合に。この山の重なりは、よっぽどコントラストの高い日でないと肉眼では見えないだろうとは思うが。

 

参考: 秩父 酉谷山はどこから見えるか

 

山深い酉谷山。東京都最奥の山。

 

夜の酉谷山避難小屋では、下の方でキョン.....キョン....と鹿の鳴く声が、妙に透き通って聞こえていた。

 

 

 

(熊五郎)

 

コメント(2)

  • 登り切るから下るしかないところが峠。最もこれ国字だから日本の人が意味から作った。トッケっていうとなんかもっと滑りそうな気がするのは私だけかしら?言葉って面白いですね。 2015/11/4(水) 午後 10:33

  • > agewisdomさん 奥多摩のあたりの鞍部(ピークとピークの間の低いところ)は何々ダワとかタルという呼び名になってますね。地名はおもしろいです。(熊五郎)2015/11/4(水) 午後 11:42