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キレット小屋付近から天狗尾根(右下から伸びる尾根)大きい岩塔が大天狗。その下が小天狗

 

八ヶ岳 天狗尾根を登り、県界尾根下降 冬季の記録を紹介します。
古い記録なので、現状をよく確認して入山されることをお勧めします。

 

28日 快晴
自宅を6時に出発して、美し森に11時に着く。川俣川林道を終点まで辿る。林道終点の斜め80から100mくらい下の沢床に出合小屋がある。笹薮を少し下降して50m位尾根を廻りこんで沢床に向かって下降する。途中ビバークに最適な岩屋がある。沢床着くと数パーティーの踏跡があった。20mほど上流に出合小屋がある。小屋に着いたのが4時。小屋から20mほど上流にテント一張りとツエルトが張ってあった。うまく張れば6張りほど張れるだろうか。周囲には3箇所ほどケルンが積まれていた。月の明るい夜だった。カス汁を作って食べた。これ以上の山での食べ物は無いように思われた。明日の登高に夢はせながら床についた。夜中、小屋の中でねずみか?何かをかじる音がしていた。

 

翌朝7時40分、出合小屋を出発。小屋から50m上流を左岸に渡り、赤岳沢に入る。数日前の踏跡が赤岳沢の奥に向かって続いている。約20分で踏跡は右岸のガレた枝沢を急登している。ガレてはいるが雪が付着しているためスリップせずに難なく尾根すじに出る。雪が少ないため薮に悩まされる。背丈くらいの笹にシャクナゲが混ざっている。足元には踏跡らしきものが見られるがはっきりしない。倒木をまたぎ、薮を分けて少しずつ高度を稼ぐが、権現岳ははるか上にそびえている。目指す山頂があの権現岳よりも200mも高いことを思うと気が遠くなる。右手には信教寺尾根の牛首も、われわれを見下ろしている。

 

やがて尾根が痩せてきて小さな岩稜に出る。天狗の岩塔は見えず、ただ目の前に急な樹林の尾根が立ちはだかっているだけだ。天気は上々で、休んでいると眠たくなるくらいである。雪はほとんど無い。南向きの尾根なので陽が差込み暖かい雰囲気がある。ころげ落ちそうな斜面を登り、やがて目の前に岩壁を控えた見晴らしのよいテラスに出る。尾根は非常に痩せており、後退はできなくなりつつある。岩壁の凹角を登るが、スタンスはしっかりしている。ザイルは出さなかったが、踏み外せば確実にあの世行きである。約5mの岩壁の上部は、意外にも草と潅木の台地だった。

 

われわれは技量を超える岩壁が現れないことを祈りながら、さらに岩稜をよじた。ザイルはほとんど気休めにお互いを結んだ。ビレイしながら慎重に行動した。小天狗はいつの間にか通過し、やっとの思いで大天狗の基部にたどり着く。左右にかすかに踏跡が分かれている。頭上に大天狗の岩塔がそびえている。残置ハーケンが見える。右の踏跡をよく観察すると、まずバンドのように大天狗を取り巻いている岩壁を身長ほど登り、次に右に5,6歩トラバースぎみに進み、さらに身長くらい直上して岩壁上部のテラスに出る。這い松の根が白骨のように地面を這っている。這い松のテラスは意外に広い場所だった。ここでカラカラになったのどをいたわるくらいの余裕が戻った。この時の水ほどうまいものはなかった。

 

目の前には最後の小岩塔があった。登路からそれていることは知っていたが、ルートがどこについているのか判らない。しばらく休んだ後、再びアンザイレンして小岩塔の基部まで下降した。ルートは小岩塔の左を斜め上に通過していた。小岩塔はほんの少し赤岳沢側にそれて立っている。小岩塔から上は一般道と変わらない道になる。どこからかわれわれを呼ぶ声がする。見上げれば竜頭峰に人が立っている。手を振ったら向こうも応えた。一般道が近いらしい。

 

この後、一般道を登る。天狗はすでに足下であった。疲れた体を赤岳山頂まで持ち上げた。赤岳石室4時着。約9時間の挌闘だった。小屋で食事をしたころには、すでに天候が悪化しつつあった。外は強風が吹き荒れていた。他のパーティー3組5人と小屋番一人。計8人がいろいろな話の花を咲かせ楽しい一夜を過ごした。ウイスキーをいただき、少し酔って寝床についた。風の音を聞きながら睡魔に負けていった。

 

12月29日 強風、ガス
翌日は横岳を通過して本沢温泉でもう一泊する予定だったが、悪天候のため断念。地蔵尾根か県界尾根のどちらを下降するか思案した。昨夜楽しく過ごした人たちへの挨拶もそこそこに、強風の中、県界尾根を下った。ときおりガスの中に下界が見えた。上部は膝くらいまでの積雪。3回ほど切れ込んだガレ場を通過する。ハシゴや急斜面を20mほど下降するところがあるが、そこは雪が少なくクサリが露出していたので助かった。この下は一般道となり、大門沢側に下山。石室を8時に出て、5時間を要した。

天狗尾根3.jpg

大天狗を見下ろす

天狗尾根2.jpg

一般道との合流点にて

 

ルートのまとめ
○出合小屋から先にケルンがあり、赤岳沢に入って、約20分くらいの左手のガレた枝沢を登り尾根に出る。テープの目印があった。
○急登でテラスに出て、やせ尾根を登ると、最初の岩壁があり。凹部(今はカニのハサミという?)を登り潅木の台地状に出るてさらに尾根を行く。
○一旦下降し、大天狗基部に着く。
○基部の岩壁は、まず背丈ほど登ってバンドを右にトラバースし、さらに背丈ほど登って、這い松のテラスに出る。
○大天狗はテラスを右側から巻く。
○一旦下降して、小天狗を右に見て少し登ると這い松のある尾根となり、一般道と合流する。

 

(熊五郎)