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ヒースキット アクティブ・オーディオ・フィルター HD-1418

投稿日 2022年11月24日

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ヒースキット アクティブ・オーディオ・フィルター HD-1418

アマチュア無線で使用するオーディオ・フィルター

​帯域パス、ノッチ等のフィルター特性を好みに調整できる

アマチュア界では無線機がデジタル化されて受信信号のフィルタリングはお手の物と言わんばかりに当たり前の機能となっていますが、ひところの無線機は500HzのIFクリスタル・フィルターの増設さえも、無銭家にとっては高嶺の花でした。そこでIFはSSB用のフィルターで我慢するとして。オーディオ段で特性の鋭いフィルターを通すという戦略に出た局も多かったのではないでしょうか。

 

オーディオ段なら増設は簡単で、回路もアマチュアでなんとかなるレベル。そこで登場するのがアナログのOPアンプを使用したアクティブ・フィルターです。DSPでデジタル処理することもできますが、音質に好き嫌いがあって、デジタル処理はどうもという局もあるかと思います。当局もアナログ、デジタルともに自作して使用してきました。

今回はOPアンプを使用したアクティブ・オーディオ・フィルターとして製品化されたヒースキットのHD-1418の特性を実測してみました。場面によっては今でも活躍できる物ですが、先にも書いたように最近の無線機の性能向上により、もはや出番が回ってこない代物でもあります。

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HD-1418の内部

多くのOPアンプを使用したアクティブ・フィルターで構成されている

可変特性LPF、可変特性HPF、ノッチ・フィルター、ピーク・フィルター、

発振器、アナログ・スイッチ、1Wアンプなどが組み込まれている

可変特性LPF, HPFでBPFを構成する

​その帯域内にノッチを構成する

フィルターを使用する場面

アマチュア無線における電信CW)による通信の場合、好みのビート周波数が個人によって違います。たとえば700Hzくらいを好む場合、交信相手局の信号を700Hzくらいになるように調整して通信しますが、このとき1000Hzや500Hzなどに他の局の信号があると、混信として耳障りになり、場合によっては相手の信号が聞き取れなくなって交信ができなくなります。そこでこの1000Hzや500Hzの信号を消すか、極力小さくしたい訳です。このとき使用するフィルターが帯域パスフィルター、つまりBPFです。特性は中心(センター)周波数を700Hzにして、通過帯域を±100Hz(200Hz幅)の特性のフィルターを通せば、混信信号1000Hz(+300Hz離れている)と500Hz(-200Hz離れている)はカットされるか、耳障りでないくらいに減衰させることができます。なお、200Hz幅というのは狭いほうで、コンテストなど極端にバンド内が込み合う場合に使いますが、一般的な交信では500Hz(±250Hz)が好まれるようです。音声通信のSSBやRTTYの場合は電信よりも帯域の広いフィルターを使うだけで、考え方はほとんど同じです。

BPFの帯域内に入ってしまう信号をピンポイントで減衰させるときにノッチ・フィルターも使われます。非常に特性の鋭い減衰フィルターです。

HD-1418の主な仕様

HD-1418はOPアンプを使用したアクティブ・オーディオ・フィルターです。アマチュア無線でもっぱら使用される電信とSSB(音声通信)における音声帯域の帯域制限、および不要信号除去(ノッチ)の機能が備わっています。それらを実現するために、多くのOPアンプを使用して、ローパス・フィルター(LPF)、ハイパス・フィルター(HPF)、ノッチを実現しています。LPFとHPFの特性を変化させてバンドパス・フィルター(BPF)を構成しています。

OPアンプを使用したアクティブ・オーディオ・フィルターはその特性を比較的容易に変化させられる点で便利です。

​以下にHD-1718の主な仕様を示します。

LPF: 調整可能な5ポール・アクティブ・フィルター レンジ300Hzから2500Hz

HPF: 調整可能な5ポール・アクティブ・フィルター レンジ300Hzから2500Hz

PEAK/NOTCHフィルター: 調整可能な2ポールのアクティブ・フィルター

                                      レンジ300Hzから2500Hz 幅 200Hz 深さ 30dB

入力のインピーダンス 5KΩ MIN

​オーディオ・アンプ 1W (4Ω)

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HD-1418のフロント・パネル

​スイッチ(SW)はプッシュ・ボタン

​バック・パネルにはINPUT、OUTPUT、TAPE OUT、電源ジャックがある

HD-1418の操作

 

ネットを検索するとマニュアルと回路図が見つかりますので、詳細はそちらを見てください。

 

POWER SWがOFFの場合はバックパネルのINPUTがOUTPUT、TAPE OUTに接続されます。つまりスルーとなります。POWER SWがONの場合はINPUTが回路に接続され、OUTPUT、PHONE JACKがパワーアンプに接続されます。TAPE OUTはパワーアンプの前段の(フィルターの)出力です。パワーアンプは1W(4Ω)のオーディオ・パワー・アンプです。

動作モードは4つのプッシュ・ボタン(SW)で選択します。(+は同時に押していることを意味します。

[ ] 内は有効なツマミです。)

CW SW .......... ピークのあるCW用フィルター [CENTER VR、WIDTH VR]

CW2 SW (CW SW + SSB SW) .......... フラットなCW用フィルター [CENTER VR、WIDTH VR]

SSB SW .......... SSB用フィルター [LOW VR、HIGH VR]

SSB & PEAK SW .......... PEAKフィルター [PEAK/NOTCH VR]

SSB & NOTCH SW .......... SSBフィルター と NOTCHフィルター [LOW VR、HIGH VR、PEAK/NOTCH VR]

FIXED SW (SSB & PEAK SW + SSB SW) .......... 固定特性の広帯域BPF [なし]

RTTY SW (SSB & NOTCH + CW SW) .......... RTTY用フィルター​​ [CENTER VR、WIDTH VR]

CWとCW2フィルター、RTTYフィルターの中心周波数と帯域幅はCENTER VRとWIDTH VRで設定します。

CENTER VR .......... 中心周波数設定用つまみ(LOW VRと同じつまみ) 目盛1から7

WIDTH VR .......... 帯域幅設定用つまみ(HIGH VRと同じつまみ) 目盛1から7

 

SSBフィルターの帯域はLOW VRとHIGH VRで設定します。

LOW VR .......... 低域側の設定用つまみ 目盛1から7

HIGH VR .......... 高域側の設定用つまみ 目盛1から7

PEAKフィルターとNOTCHフィルターのピークまたはノッチ周波数はPEAK/NOTCH SWで設定します。

PEAK/NOTCH SW .......... ピークまたはノッチ周波数の設定

CW SW  :CWモード

センターにピークを持ったCW用のフィルターです。CENTER VRで中心周波数。WIDTH VRで帯域幅を設定します。

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CWモードの特性(CENTER 可変 WIDTH 2 固定)

通過帯域の中心周波数をCENTER VRで設定

通過帯域幅をWIDTH VR 2目盛に固定(250Hz)

数値は各VRの目盛

通過帯域外は約30dB減衰

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図のようにCENTER VR 目盛2で650Hz付近が中心となりました。幅はWIDTH VR 目盛2で250Hz位です。当局は700Hz辺りの音が好みなのでCENTER VR 目盛2付近で使います。目盛3以上は1KHz以上となり、高すぎて使うことはないと思います。中心が高い周波数ほどすこし幅が広がる傾向があるようです。

CENTER VRによる通過帯域の中心周波数:

目盛1.5 約250Hz

目盛1.75 約425Hz

目盛2 約650Hz

目盛2.5 約925Hz

目盛3 約1275Hz

目盛3.5 約1575Hz

目盛4 約1875Hz

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CWモードの特性(CENTER 2 固定 WIDTH 可変)

通過帯域の中心周波数をCENTER VR 2目盛に固定(約650Hz)

通過帯域幅をWIDTH VRで設定

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CWフィルターにおけるWIDTH VRによる帯域幅の設定は上図のようになりました。CENTER VRは650Hz(目盛2)に固定しています。CWフィルターは200Hzから600Hzくらいが使いやすい幅と思われます。

 

WIDTH VRによる帯域幅の設定:

目盛1 約100Hz

目盛1.5 約120Hz

目盛2 約250Hz

目盛2.5 約400Hz

目盛3 約600Hz

目盛4 約700Hz

目盛5 約800Hz

 

ただし目盛の大きい方に向けて高域だけが広がる傾向があります。いずれも中心にピークをもつフィルターです。

CW2 SW (SSB SW + CW SW) :CW2モード

フラットなCW用フィルターです。

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CW2モードの特性(CENTER 2 固定 WIDTH 可変)

通過帯域の中心周波数をCENTER VR 2目盛に固定(約650Hz)

通過帯域幅をWIDTH VRで設定

CW2フィルターも通過帯域の中心をCENTER VRで設定します。通過帯域の幅をWIDTH VRで設定します。CWフィルターと同じくCENTER VR 目盛2で650Hz付近が中心となりました。CENTER VRによる中心周波数の設定は、CWフィルターと同じです。特性はほぼフラットですが、低域と高域の端にピークがあります。

WIDTH VRによる帯域幅の設定:

目盛1 約100Hz

目盛1.5 約120Hz

目盛2 約250Hz

目盛2.5 約400Hz

目盛3 約600Hz

目盛4 約950Hz

目盛5 約1150Hz

SSB SW :SSBモード

​SSB用のフィルターです。

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SSBモードの特性

LOW VRでHPFを設定 HIGT VRでLPFを設定

​中心周波数 約1850Hz

SSB用のフィルターはCW2フィルターよりも帯域の広いフラットなフィルターです。SSBフィルターでは低域の遮断周波数をLOW VR(CENTER VRと同じつまみ)で。高域の遮断周波数をHIGH VR(WIDTH VRと同じつまみ)で設定します。CWフィルターのように中心の周波数と帯域幅を設定する方法ではありません。

 

LOW VRでHPFを。HIGH VRでLPFの特性を調節しています。帯域の中心周波数は約1850Hzのようです。LOW VRとHIGH VRの設定で帯域は以下のようになりました。帯域はほぼフラットですが低域、高域の端にピークがあります。

LOW VR 1 HIGH VR 7 約3400Hz

LOW VR 1.5 HIGH VR 約3300Hz

LOW VR 2 HIGH VR 6 約2500Hz

LOW VR 2.5 HIGH VR 約1900Hz

LOW VR 3 HIGH VR 5 約1200Hz

LOW VR 3.5 HIGH VR 4.5 約600Hz

LOW VR 4 HIGH VR 4 約100Hz

 

SSB & PEAK SW :PAEKモード

PEAKモードはSSBによる交信において、混信するCW信号を除去するため、そのCW信号を特定するための鋭い特性のピーク・フィルターです。ピークの周波数はPEAK/NOTCH VRで設定できます。(CENTER VRやWIDTH VRは機能しません)

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SSB & PEAKモードの特性

PEAK/NOTCH VRでピーク周波数を設定

​SSB & PEAKモードの場合LOW VR, HIGH VRは無視される

このPEAKフィルターでCW信号の位置を特定(最も強く聞こえる位置に設定)したら、次にSSB & NOTCHフィルターに切り替えることにより、特性が逆(ピーク -> ノッチ)になり、フィルター全体はLOW VRとHIGH VRで設定した幅のSSBフィルターとなって、特定したCW信号を除去することができます。PEAKまたはNOTCHの幅は約100Hzくらいと計測できました。(仕様では200Hzとのことですが) この幅は固定されており変更はできません。このままAFPとして使う手も考えられますが、無線機に付属するAPF(オーディオ・ピーク・フィルター)はもっと鋭くでき、DX(遠方の外国局)との交信には欠かせませんが、100HzではAPFとして使うにはちょっと物足りません。

SSB & NOTCH SW :SSB NOTCHモード

PEAKモードで除去したいCW信号の周波数を合わせたらSSB NOTCHモードに切り替えます。するとPEAKフィルターがNOTCHフィルターに逆転して、CW信号を除去します。下図は上図のPEAKフィルターの特性のままSSB NOTCHフィルターに切り替えたものです。ノッチの周波数はPAEK/NOTCH VRで。帯域はLOW VRとHIGH VRで設定します。

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SSB & NOTCHモードの特性

PEAK/NOTCH VRでピーク周波数を設定

LOW VRとHIGH VRでSSBフィルターの帯域幅を設定する

下図はPEAK/NOTCH VRを目盛4固定にして、LOW VRとHIGH VRで帯域幅のみを変えた場合です。

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SSB & NOTCHモードの特性

PEAK/NOTCH VRを固定し

LOW VRとHIGH VRでSSBフィルターの帯域幅を変えてみた

仕様では300Hzから2500Hz固定のバンドパス・フィルターですが、実測では広域が3700Hzくらいまで延びています。特性の調整はできません(LOW VR、HIGH VR、PEAK/NOTCH VRは効きません)。用途は不明ですが、電源をOFFにしてスルーにするよりも、FIXEDでスルー(と同等に)できるということでしょうか。

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FIXEDモードの特性

​帯域は約300Hzから3700Hz

RTTY SW (SSB & NOTCH SW + CW SW) :RTTYモード

RTTY用のフィルターです。RTTYは一般的に2210Hzを中心に-85Hzの2125Hz(マーク)、+85Hzの2295Hz(スペース)の信号を切り替える周波数シフト方式の通信です。このためRTTYの受信用フィルターは170Hz(±85Hz)離れた周波数の鋭い双耳形のフィルターが理想です。

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RTTYモードの特性

中心にノッチのあるWIDTH幅のフィルター

中心種は数はCENTERで設定

​ノッチのみを動かすことはできない

HD-1418のRTTYフィルターは、ノッチを帯域の中心に持つSSB &NOTCHフィルターと言えます。SSB & NOTCHフィルターはノッチの周波数を動かせましたが、RTTYフィルターでは動かせません。常にノッチを帯域の中心として、その中心周波数をCENTER VRで設定するとともに、帯域幅をWIDTH VRで設定します。

(JF1VRR)

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