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2段直結プッシュプル・エミッタ・フォロワの周波数特性

投稿日 2022年03月08日

A806_4.jpg

LUXKIT A806に内蔵されている2段直結プッシュプル・エミッタ・フォロワ 1Wアンプ回路

±9Vの電源 ペアトランジスタ二段のエミッタ・フォロワ

オペアンプ4558でドライブ

LUXKITにA806というTV MULTIPLEX STEREO ADAPTORというキットがありました。テレビがまだアナログ放送だったころ、音声多重のテレビに接続して、ステレオで2ヶ国語などの音声多重放送を楽しむというものでした。テレビ放送がデジタルになった今では無用の長物と化しました。

 

しかし、A806には1Wのステレオ・アンプが内蔵されています。MPXとは別にスピーカーを鳴らせるアンプとして活用できます。このA806に内蔵の1Wステレオ・アンプは、オペアンプ入力の2段直結プッシュプル・エミッタ・フォロワ型のアンプです。あまり見慣れない回路ですが、部品点数が少なく作りやすそうな回路です。

音楽を視聴してみた結果、簡単な回路のわりにはいい音がするなと思っています。そこで今回はこのアンプの周波数特性を実測してみました。まぁ、結果は期待以上でも以下でもなく平凡ですのであらかじめご理解ください。

A806のマニュアルに記載されているアンプ部の仕様は以下の通りです。

出力 1W + 1W (8Ω 両チャンネル同時動作)

周波数特性 10 ~ 50,000Hz (-1dB)

高調波歪 0.1%以下(1W 8Ω 20~20,000Hz 両チャンネル同時動作)

入力感度 340mV

残留雑音 0.3mV以下

ここで両チャンネル同時動作と断っているのは、電源の影響のことを配慮してのことかも知れませんね。電源は8Vを両波整流しただけの簡単なものです。周波数特性は10Hzから50KHzまでの範囲で1KHzのゲインから-1dBの差以内ということでしょうか。高調波歪とか残留雑音は難しいので機会があれば計測に挑戦してみます。

冒頭にA806の1Wアンプ部の回路を示します。この回路(2段直結プッシュプル・エミッタ・フォロワ)については、ネットを探してもあまり解説しているサイトが見当たりませんが、CQ出版のトランジスタ回路設計のバイブル「定本 トランジスタ回路の設計」に簡単な説明があります。正負電源が必要なのが難点でしょうか。

A806_5.jpg

実測周波数特性

1Hzから200KHz 8Ωダミー抵抗

上:入力電圧 516mV 出力 1W(2.83V) 20-50KHz間平均 L 15.03/R 14.75dB 1KHz -0.02dB 

下:入力電圧 430mV 出力 0.43W(1.86V) 20-50KHz間平均 L 14.79/R 15.06dB 1KHz -0.02dB 

まず周波数特性を計測してみました。発振器の出力を340mVにして1Hzから200KHzまでを計測しました。1KHzの出力電圧は1.86V(0.43W 8Ω)でした。ゲインにして約15dBです。50KHz以上にのびてますのでスペックに嘘はないと言えます。LとRチャンネルのゲイン差が気になります。バランスが調整できないので気持ちが悪いですが、妥協できるレベルでしょう。こんな簡単な回路で、なかなかの特性なのには驚かされます。

1KHzのゲインと20~20KHzのゲインの乖離は-0.02dBほどですので、-1dBの範囲には余裕で入っています。

A806_6.jpg
A806_7.jpg

1W時の出力波形

​上:1KHz 下:20KHz

1W時の出力波形を観測しました。1KHzと20KHzです。

​周波数特性はあまり広域に伸びていても逆効果ですので、このアンプのように50KHz辺りに-3dBポイントがあるのは手ごろかなと思います。気になるのは出力波形を観測していて、若干の上下の振幅差があることです。これはすなわち歪ですが、たとえペアのトランジスタでも、特性がそろっているわけではないので、何の調整手段も持たないこのような回路では、ある程度の歪を覚悟して設計しているのかもしれません。

(JF1VRR)

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