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2SC1815GR 1石アンプを作る

投稿日 2022年02月28日

2SC1815_AMP09.jpg

2SC1815GRによる1石アンプ

エミッタ接地の一般的な回路

振幅​20mVの入力信号からコレクタに1V以上を得ている

34.4dB(52.6倍)の電圧利得がある

2SC1815GRを使用して1石アンプを作ってみました。まずシミュレーションし動作を確認したうえで実装してみました。

 

使用したトランジスタは2SC1815GRです。長らく東芝製が出回っていましたが残念ながら製造は終わったようです。秋月電子ではセカンドソースのUTC社製の2SC1815が販売されています。東芝製が製造を終了したのは残念ですが、セカンドソースが入手できるのはありがたいことです。

 

この2SC1815はhFEのランク分けがO hFE=70 - 140、Y hFE=120 - 240、GR hFE=200 - 400、BL hFE=350 - 700と4種あります。今回はGRを使用しましたので200から400の範囲内ということになります。

​回路は一般的なエミッタ接地回路です。使用周波数はオーディオ周波数を想定しています。

まず増幅率は大体コレクタ抵抗(R2)とエミッタ抵抗(R1)の比で決まるので、1.2kΩ / 50Ωで24b倍くらいと想定できます。無信号時のコレクタ電流は5mAから10mAくらいは流したいので、この抵抗値にしました。コレクタ電圧(Vc)を12Vとしたので、12V / (1200 + 50)Ω = 9.6mAとなります。これはトランジスタが完全にONしたときに流れる最大電流です。動作時の範囲が5mAから10mAくらいに入っていればよいかと思います。だいたいこの辺りのコレクタ電流で使えば、このクラスのトランジスタでは、hFEが最も稼げるのと、周波数特性(Tf)が延びるようです。

2SC1815_AMP10.jpg

最適なベース・バイアス電圧を探る

ベース電圧(Vb)を1KHz 20mVの信号を乗せ

オフセット 0.9Vから0.1Vきざみで1.2Vまで変化させた場合

​目視で上下均等であることを確認

2SC1815_AMP11.jpg

出力(V(Out))のFFT解析結果

ベース電圧(Vb)を1KHz 20mVの信号を乗せ

オフセット 0.9Vから0.1Vきざみで1.2Vまで変化させた場合

第2,3高調波は-60dB以下

ベースのバイアス電圧(Vb)は、出力に最も歪が出ない位置にセットする必要があります。上のシミュレーションは1KHz 20mVの信号を、バイアス電圧0.9Vから1.2Vに変化させて入力した場合です。いずれもほぼ歪がなくきれいな出力が得られています。このシミュレーションで1Vがよいようなので、二本の抵抗の分圧日でベースが1V付近になるようにします。ぴったりの抵抗がありませんので12kΩと1.2KΩを使いました。 Vb = 1.2K / (12k + 1.2k) * 12V =1.09Vとなります。このVbを中心に入力信号で上下に振らせることになります。おそらく±200mV程度。つまり0.1Vppが最大入力になると思います。ベース電流は数十μAなので、その100倍も流しておけばほとんどVbは変動しません。今回の12K + 1.2KΩでは、12V / (12K + 1.2K) = 0.9mA流れます。

2SC1815_AMP08.jpg

実際に制作した回路

.measコマンドはシミュレーション結果から電圧利得を計算する

コレクタ電流とベース・バイアス電圧が決まったので、その回路がどのくらいの電圧利得を持っているかをシミュレーションで確認します。普通にシミュレーションしますが、そのままではLTSpiceは利得の計算をしてくれませんので、.measコマンドでシミュレーション結果から計算しなければなりません。この辺りは、ここ数年LTSpiceの使い方を詳細に説明してくださっているYoutubeの「伝スパ」チャンネルを参考にしました。

 

異なる周波数の利得を下記のようにグラフにしました。計算は.measで自動的に行われますが、主要な周波数をひとつひとつ切り替えて、エラーログ(CTRL+Lで表示)を見ていきます。例えば1KHzの時は以下のように表示されます。ほぼ24.82dB(17.4倍)くらいの電圧利得があることがわかります。

i_sig_pp: PP(v(sig))=0.0399965 FROM 0 TO 0.01
i_out_pp: PP(v(out))=0.696801 FROM 0 TO 0.01
i_gain: i_out_pp/i_sig_pp=17.4215
dc_db: 20*log10(i_gain)=24.8217
 

2SC1815_AMP12.jpg

周波数特性シミュレーション

24,82dB程度の電圧利得(17.4倍)が得られている

実際に作って、各部の電圧、電流、波形を観測しシミュレーションと比較してみました。

 

無信号時の電圧・電流

               シミュレーション  実測

Q1のベース(バイアス電圧 Vb)                0.91V                 0.90V

Q1のコレクタ電圧                                8.33V                 7.98V

Q1のエミッタ電圧                                0.18V                 0.20V

Q1のベース・エミッタ間電圧(Vbe)        0.73V                  0.69V

R3の電流I(R3)                                      0.92mA               0.92mA

R4の電流I(R4)                                      0.91mA               0.90mA

ベース流入電流(I(R4)-I(R3)                    0.01mA               -

R2の電流                                             3.67mA               4.00mA

R1の電流                                             3.68mA               4.00mA

Q1コレクタ・エミッタ間電圧(Vce)            8.15V                7.77V

2SC1815_AMP14.jpg

入力信号 1KHz 20mV

1KHz 20mVを増幅した場合の波形です。FFT解析では大きな高調波は見当たりませんでした。エミッタにバイパスコンデンサ(10uF)を入れた場合の電圧利得は34.42dB(52.6倍)になります。(回路は最初の画像)

i_sig_pp: PP(v(sig))=0.0399992 FROM 0 TO 0.01
i_out_pp: PP(v(out))=2.10494 FROM 0 TO 0.01
i_gain: i_out_pp/i_sig_pp=52.6245
dc_db: 20*log10(i_gain)=34.4238

(JF1VRR)

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