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パッシブDBMを作る

投稿日 2022年02月06日

パッシブDBMの実験01.jpg

パッシブDBM TDK CB303-M4(左上)の出力を観測中

Lo 33MHz +10dBm、Rf 5MHz +3dBm

マーカーの位置 Lo + Rf 38.000MHz -6.5dBm

​つながっていないトランジスタのようなものはM6V

DBM(ダブルバランスドミキサー)にはパッシブとアクティブがあります。NJM2594のようなDBM ICはアクティブDBMといえます。電源が必要ですし、信号の減衰がほぼありません。対してパッシブDBMは電源が要りません。トランスとダイオードのみで構成されています。

 

今回は市販のパッシブDBM 2種と自作のDBMの性能を確認してみました。

市販のDBMは次の2種です。

○TDK        CB303-M4   0.5 - 500MHz   Lo +10dBm

○MACOM  M6V            0.4 - 500MHz   Lo +7dBm

○自作パッシブDBM     ??                   ??

パッシブDBMを扱うにあたって重要な点はLoの信号レベルです。Loは内部のダイオードを十分にスイッチさせることができるレベルである必要があります。CB303-M4は+10dBm、M6Vは+7dBm必要とされています。変換ロスはこの手のDBMでは-10dB以下。-5から-6dBくらいのようです。ほかはLo、Rfのリークですが、-30から-40dBくらいのようです。

○TDK CB303-M4

このDBMは四角い小さな金属ケースに収まっており、8本足です。トランスの二次側(Ifの端子)がつながっておらず別々のピンに出ています。

パッシブDBMの実験02.jpg

パッシブDBM TDK CB303-M4のスペック

(ネットから抜粋)

上記スペックからCB303-M4は500MHzくらいまで使え、Loに+10dBm以上は必要。変換ロスは8dBくらい。アイソレーションは100MHzくらいでLO、Rfともに35dB以上。という感じです。実際にLoに33MHz +10dBm、Rfに5MHz +3dBmの信号を入力してIfを観測してみました。

​最初はBPFなし。次が38MHzのBPFを挿入した場合です。LoとRfレベルの影響は以下のような感じです。

LoレベルのIfへの影響(Rfは+3dBm固定)

Lo +10dBm  If  -6.5dBm(ロス 9.5dB)

Lo +0dBm  If -16.0dBm(ロス 19.0dB)

Lo -10dBm  If -26.0dBm(ロス 29.0dB)

変換ロスがスペックより大きいですね。このようにLoの差がそのままIfのレベルの差とるようです。このためLoは+10dBm以上がよさそうです。(当局は+10dBm以上の実験はできません)

RfのレベルによるIfへの影響(Lo +10dBm固定)

Rf +3dBm  If -6.5dBm(ロス 9.5dB)

Rf +0dBm  If -8.3dBm(ロス 11.3dB)

Rf -7dBm  If -15.3dBm(ロス 18dB)

パッシブDBM_CB303-M4.jpg

パッシブDBM TDK CB303-M4の出力をTineSAで観測

Lo 33MHz +10dBm、Rf 5MHz +3dBm

Marker.1 (左端) Rfリーク 5MHz -60dBm

Marker.2 Lo - Rf 28MHz -6.5dBm

Marker.3 Loリーク 33MHz -43.5dBm

Marker.4 Lo + Rf (If) 38MHz -6.5dBm (Rf +3dBmからの減衰は9.5dB)

Marker.5 2(Lo - Rf) + (Lo + Rf) ​94MHz -29dBm 

パッシブDBM_CB303-M4_BPF.jpg

39MHz BPFを挿入してパッシブDBM TDK CB303-M4の出力をTineSAで観測

Lo 33MHz +10dBm、Rf 5MHz +3dBm

Marker (If) 38MHz -11.4dBm(BPFによる減衰は約5dB)

○MACOM M6V

このDBMはTO-5パッケージで、キャンパッケージのトランジスタのような形をしています。GNDと合わせて4本足です。自作ではこんなに小さくは作れません。スペックは”DBM M6V"でググれば出てきます。要約すると、M6Vは、500MHzくらいまで使え、Loに+7dBmくらい必要。変換ロスは5.5から6.0dBくらい。アイソレーションは100MHzくらいでLO、Rfともに40dB以上。という感じです。実際にLoに33MHz +10dBm、Rfに5MHz +3dBmの信号を入力してIfを観測してみました。(BPFの挿入は省略)

 

LoとRfレベルの影響は以下のような感じです。

LoレベルのIfへの影響(Rfは+3dBm固定)

Lo +10dBm  If  -2.8dBm(ロス 5.8dB)

Lo +0dBm  If -7.8dBm(ロス 10.8dB)

Lo -10dBm  If -17.3dBm(ロス 20.3dB)

このようにLoの差がそのままIfのレベルの差とるようです。このためLoは+10dBm以上がよさそうです。(今回は+10dBm以上の実験はできません)

RfのレベルによるIfへの影響(Lo +10dBm固定)

Rf +3dBm  If -2.8dBm(ロス 5.8dB)

Rf +0dBm  If -4.8dBm(ロス -7.8dB)

Rf -7dBm  If -11.7dBm(ロス 14.7dB)

パッシブDBM_M6V.jpg

パッシブDBM MACOM M6Vの出力をTineSAで観測

Lo 33MHz +10dBm、Rf 5MHz +3dBm

Marker.1 (左端) Rfリーク 5MHz -46.7dBm

Marker.2 Lo - 3Rf 18MHz -24.5dBm

Marker.3 Lo - Rf 28MHz -3.5dBm

Marker.4 Loリーク 33MHz -34.6dBm

Marker.5 Lo + Rf (If) 38MHz -3.5dBm (Rf +3dBmからの減衰は6.5dB)

Marker.6 2(Lo - Rf) + (Lo + Rf) ​94MHz -17dBm 

自作パッシブDBM

次にパッシブDBMを自作してみました。パッシブDBMはトランス2つと4個のダイオードで作れます。なるべく周波数特性のよいトランスと特性の揃ったダイオードが必要です。パッシブDBMの作り方についてはCQ出版社の「トロイダルコア活用百科」が詳しいようです。

今回はトランスに大型のフェライトビーズ(型番不明 外径5mm 長さ6mm)を使用し、UEW線を巻きました。3本でトリファイラ巻きするので赤、緑、エナメル色の線を使っています。ダイオードは、点接触の1N60などでも構いませんが、特性を揃えたい場合は選別が必要になります。当局は1N60の在庫は多数ないので、1点物の貴重なNECのND487C1-3Rというショットキバリア・クオッドブリッジ・ダイオードを使用しました。壊すと終わりです!

パッシブDBM_自作2.jpg

自作パッシブDBM

NECのND487C1-3R ショットキバリア・クオッドブリッジ・ダイオードを使用(中央)

フェライトビーズにトリファイラ巻き3回

​フラット基板の上に空中配線 

計測の結果、LoとRfレベルの影響は以下のような感じです。

LoレベルのIfへの影響(Rfは+3dBm固定)

Lo +10dBm  If  -4.4dBm(ロス 7.4dB)

Lo +0dBm  If -5.8dBm(ロス 8.8dB)

Lo -10dBm  If -14.8dBm(ロス 17.8dB)

このようにLoの差がそのままIfのレベルの差とるようです。このためLoは+10dBm以上がよさそうです。(今回は+7dBm以上の実験はできません)

RfのレベルによるIfへの影響(Lo +10dBm固定)

Rf +3dBm  If -4.4dBm(ロス 7.4dB)

Rf +0dBm  If -5.2dBm(ロス -8.2dB)

Rf -7dBm  If -11.7dBm(ロス -14.7dB)

パッシブDBM_自作.jpg

自作パッシブDBM の出力をTineSAで観測

Lo 33MHz +10dBm、Rf 5MHz +3dBm

Marker.1 (左端) Rfリーク 5MHz -45.7dBm

Marker.2 Lo - 3Rf 18MHz -23.1dBm

Marker.3 Lo - Rf 28MHz -4.5dBm

Marker.4 Loリーク 33MHz -41.5dBm

Marker.5 Lo + Rf (If) 38MHz -4.4dBm (Rf +3dBmからの減衰は7.4dB)

Marker.6 48MHz 3Rf + Lo  -22.9dBm

Marker.7 3Lo - 3Rf ​84MHz -31.0dBm 

Marker.8 3Lo - Rf ​94MHz -16.5dBm

次にもっと高い周波数の場合ですが、Loを100MHz, 200MHz, 300MHzに上げてIfのレベルとLOリークを計測しました。

Lo 100MHz +10dBm Rf 5MHz +3dBm   If 105MHz -3.9dBm Loリーク(100MHz) -35.4dBm 

Lo 200MHz +10dBm Rf 5MHz +3dBm   If 205MHz -4.2dBm Loリーク(200MHz) -32.3dBm 

Lo 300MHz +10dBm Rf 5MHz +3dBm   If 305MHz -7.5dBm Loリーク(300MHz) -30.2dBm 

​まずまず、使えるかなという感じです。

 

今回の自作パッシブDBMは、

300MHzくらいまで十分使える

IFロスは10dBまでに収まっている

Loリーク、Rfリークは市販品と引けをとらない

自作パッシブDBMはトランス巻きが少々面倒ですが、出来上がれば市販のDBMに勝るとも劣らない性能です。DBMは高価だったり、入手性が悪かったりしますが、思い切って作ってみても、そうハードルは高くない感じです。(今回はダイオードブリッジにND487C1-3Rを使いましたが、1N60やショットキバリヤ・ダイオード4本で組んだダイオードブリッジのDBMも作ってみたいと思います。)

(JF1VRR)

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