TS-520のジェネレーター、キャリアOSC基板

​投稿日 2021年02月17日

今回はTS-520のジェネレーター基板とキャリア基板の受信時の動作確認をしてみたいと思います。

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TS-520Xのジェネレーター基板 X52-0010-00

SSB波を作る、検波する重要な回路​

​下のTS-520Vの回路図とかなり回路が違います

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TS-520V ジェネレーター基板 X52-1090-00の回路

上の実物はTS-520Xの基板でこの回路はTS-520Vの回路です。かなり違うので注意!

受信に関係するのはD9,10,11,12のリング検波器のみ

他は送信用の回路(マイクアンプ、コンプレッサ、リング変調器他)

トリオのHFトランシーバー TS-520のジェネレータ基板とキャリアOSC基板を受信動作で実際に動かしてみたいと思います。

 

当局が入手したジェネレータ基板はX52-0010-00となっています。これはTS-520X/Dの基板です。ジェネレータ基板に搭載されている回路は、送信のためのマイクアンプ、DSB波を生成するリング変調器、DSB信号をIF基板に供給する前に増幅する増幅回路と、受信のためのリング検波器です。受信に関係するのはリング検波器のみです。

リング検波器はダイオードを4個組み合わせた回路です。受信した信号は第二中間周波に変換された後、フィルターで必要なサイドバンド以外の不要な信号が取り除かれリング検波器に入ります。一方、キャリアOSCで作ったキャリアもリング検波器に入力され、ミックスされると同時に検波されベースバンド信号が取り出されます。このベースバンド信号はAF基板のオーディオアンプに入力され増幅されてスピーカーを鳴らします。

​中間周波とキャリアのミックスをしておいて、検波だけするならリング検波器を使わなくてもダイオード1本の簡単な検波回路でも復調できます。

​ジェネレーター基板の回路はほとんどが送信用の回路ですが、右上のD9、D10、D11、D12のみが受信用のリング検波器です。DET端子が検波出力です。AF基板のDET端子につながります。CARはキャリアOSCのOUTにつなぎキャリアを入力します。RD1とRD2が第二中間周波(受信信号)の入力です。送信用の端子は省略します。

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TS-520XのキャリアOSC基板 X50-0009-00

CW、LSB、USBの水晶発振子がある

次にキャリアを作る回路です。TS-520のキャリアOSCは、水晶発振回路+エミッタホロワの簡単な回路です。CWは3.395000MHzの水晶発振子を使っていますが受信の場合は、3.394300MHZに調整されています。送信の場合はそのまま3.395000MHzを発振します。CWの受信では、3.395000MHzで受信したCW信号と700Hzのビートをとるために、3.394300MHzを発振している訳です。いわゆるBFOです。このためTS-520ではCWトーンが(標準)700HzであればCW信号にジャストインしたことになります。ただしCWの場合は正確に合わせなくてもお互いに中間周波フィルターの通過域内であれば通信可能です。

LSBは3.393500MHzを、USBは3.396500MHzを発振します。これらはLSBまたはUSBのキャリアポジションですので、正確でないとSSBの復調ができません。

​キャリアOSCの出力はジェネレーター基板のリング検波器に入力され、キャリア注入と同時に検波(差を取り出す)されベースバンド信号を取り出します。

発振周波数の切り替えはCWR、CWT、USB、LSB端子に電圧+9Vを印加することで行います。例えばLSB端子に+9Vを印加すると順方向電圧が加わってD4がONになり、3.393500MHzの水晶発振子のC6がGNDにつながって発振します。他同様です。OUTはキャリア出力です。BSはこの回路の電源で+9Vです。

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TS-520VのキャリアOSC回路

​モード切替でCW、LSB、USBが選択される

CWは受信と送信で発振周波数が異なる

​CWにTとRがあるのは、受信時700Hzずらすため

​SSBトランシーバーにとってキャリアの注入位置(周波数)は重要

では、これらの回路を組み合わせて動作を確認してみます。

 

TS-520の場合、フィルターを通過した第二中間周波は、変調波の帯域が3KHzとすると、3.395000MHzを中心に±1.5KHzのスペクトラムになっています。つまり、3.393500MHzから3.396500MHzです。

ここに、LSBであれば3.393500MHzにキャリアが注入されます。USBであれば3.396500MHzにキャリアが注入されます。一見逆のように思いますが、TS-520の場合ヘテロダインOSCの周波数を信号波より高い方を選んでいるので、第一中間周波に変換する際に高低が反転しているためです。検波された信号が実際の音声と同じように聞こえるためには、このキャリアの注入位置が重要です。つまりSSBはAM変調と同じですから、キャリア周波数との相対位置がベースバンド信号の周波数位置に等しいからです。

​参考記事:TS-520の受信周波数構成

動作確認ですが、音声スペクトラムを持った第二中間周波を作るのは面倒ですので、単一の、例えば1KHzのみのスペクトラムで間に合わせます。その場合はLSBの場合3.393500MHz+0.001000MHz = 3.394500MHzのサイン波を第二中間周波として加えます。USBの場合は3.396500MHz - 0.001000MHz = 3.397500MHzのサイン波を第二中間周波として加えます。一方、キャリアは上に書いたようにLSBはキャリアOSCのLSB端子をONにして3.393500MHzを、USBはUSB端子をONにして3.396500MHzをリング検波器に加えます。ジェネレーター基板のDET端子(検波出力)をAF基板につないでおきます。これでスピーカーから1KHzの音が鳴れば成功です。オシロスコープで波形を観測するか別のスピーカーから1KHzを出してうなりが生じれば確認できます。

一方CWの場合は、700Hz離れた3.393700MHzとビートをとっているだけですから動作確認が簡単です。第二中間周波として3.395000MHzの正弦波を入力し、キャリアOSCのCWR端子をONにしてリング検波器に加えるだけです。スピーカーから700Hzの音が鳴れば成功です。

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TS-520のジェネレーター基板、キャリア基板、AF基板で復調実験

ジェネレーター基板のリング検波器はパッシブな回路なので電源は不要

RD1とRD2端子にSSGから中間周波(3.395000MHz)を加える

キャリア基板のCWRに+9Vを供給し3.394300MHzを発振させ​ジェネレーター基板のCAR端子に加える

DAT端子から中間周波とキャリアの周波数差(700Hz)が出力されスピーカーから聞こえれば成功

つぎに、リング検波器は簡単な回路なので、わざわざジェネレーション基板の回路を使わずに自作することもできます。前回のTS-520のリング検波器の実験で動作を確認しておきましたので、それで試してみます。

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自作のリング検波器、TS-520のキャリア基板、AF基板で復調実験

TS-520のジェネレーター基板は使わず自作のリング検波器を使用

RD1とRD2端子にSSGから中間周波(3.395000MHz)を加える

キャリア基板のCWRに+9Vを供給し3.394300MHzを発振させ​リング検波器に加える

リング検波器の出力から中間周波とキャリアの周波数差(700Hz)が出力されスピーカーから聞こえれば成功

リング検波器はパッシブな回路なので増幅作用はありません。このため中間周波は十分増幅しておく必要があります。またそれ以上にキャリアは強力な信号が必要です。

(JF1VRR)