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TS-511Sの修理 その2

投稿日 201708/23

前回「TS-511Sの修理 その1」で3.5MHzと、21MHz、28MHzが受信できるようになったTS-511Sですが、今回は課題の、

 

7MHz、14MHzのヘテロダインOSCが発振していない現象

 

USBのキャリアが出ていない現象

 

を解決しようと思います。

TS-511XN_01.jpg

TS-511S(上)

まったく受信できなかった7と14MHzが回復

ヘテロダインOSCが発振していなかった(クリスタル交換)

USBのキャリアが出ていない問題もクリスタル交換で回復

 

ヘテロダインOSCの発振は受信周波数を一旦第一中間周波数の8.895MHzに変換するためのものです。同時にTS-511のようなマルチバンド・トランシーバーにおいて、バンド切り替えを実現する仕組みでもあります。

 

7MHzの場合は 15.895MHz - 7.000MHz = 8.895MHz

14MHzの場合は、22.895MHz - 14.000MHz = 8.895MHz

 

(他のバンドは省略します。)

 

以上のようになり、15.895MHzが7MHz用、22.895MHzが14MHz用のヘテロダインOSCの周波数です。これは固定周波数ですのでクリスタル発振子(以降クリスタル)が使われています。

 

発振回路にはドライブ・ユニットのV4 6AW8Aの三極部(T)が使われています。発振のためのクリスタルとコイルはOSCコイルパック基板の上にまとまっており、バンド切り替えのロータリー・スイッチで切り替わるようになっています。

 

このヘテロダインOSCの出力は、V3 6BZ6で高周波増幅した受信波と、V3 6AW8Aの五極部(P)のミキサーでミックスされます。上記の演算を行うわけです。

 

ミキサーの出力はIF(8.895MHz)として、IFユニットに行き、BPFを通り、V3、V1、V4と通過し増幅されます。

TS511S_6.jpg

ヘテロダインOSCのクリスタルとコイル(左上)

V4 6AW8A 三極部がOSC、五極部がミキサー(第一中間周波8.895MHzに変換)

 

 

ヘテロダインOSCの発振はR18の左側で確認

 

さて、今回7MHzと14MHzのヘテロダインOSCが発振していないのですが、発振の有無の確認はV4 6AW8Aの五極部のコントロール・グリッドにつながるR18 330Ωの左側にオシロのプローブを当てて行います。他のバンドは綺麗な発振波形が出ていますが7MHzと14MHzは出ていません。(確認)

 

7MHz、14MHz以外は発振しているので、6AW8Aの三極部は問題ないということになります。そこで真っ先に疑うのはロータリースイッチの接触不良です。

 

 

バンド切り替えのロータリー・スイッチを疑う

 

回路図のように、クリスタルと同調コイルを同時に切り替えていますが、コイルの方は150Vが印加され、コイルとロータリー・スイッチの接点を経由してOP端子に出ています。つまりOP端子に150Vが出ていればロータリー・スイッチの接触は一応OKということになります。OP端子にプローブを当てて、バンドスイッチを切り替えてみますが、どのバンドでも150Vが出ています。もし、どれかのバンドで出ていなければロータリー。スイッチの接触不良となりますが、接点が基板側に隠れているので、修理は厄介です。一応、ロータリー・スイッチの接触不良ではないのでホッとしました。

 

コイルの離調を疑う

 

次に、コイルのコアが大きく離調していると発振が停止する(大きくズレていると止まります)ことがありますので、ディップメーターを近づけてディップ点つまり同調周波数を確認していきます。(同調周波数で発振するかどうかはわかりませんが)少しずれていたのでディップ点がクリスタルの周波数近辺になるようコイルのコアを回して合わせます。残念ながら合わせても7MHz、14MHzともに発振は確認できませんでした。

TS511S_8.jpg

TS-511Sのコイルパック

右端がヘテロダインOSCのクリスタルとコイル

TS-520と同じ周波数のクリスタル

 

 

SSGで発振周波数を注入してみる

 

次にクリスタル発振子を疑いますが、その前に、SSGで15.895MHzを適度な信号強度でにして、V4 6AW8Aの五極部 R15 330Ωの左側にコンデンサー 0.01uFを通してつなぎ、受信してみます。これで、マーカー、グリッドディップメーターの信号、CW交信が受信できました。つまりヘテロダインOSCが発振すれば問題ないようです。

 

 

クリスタルを交換してみる

 

以前TS-520(周波数構成がTS-511と同じです)のコイルパックを購入してあり、それにクリスタルが一式ついてますので、7MHzと14MHzのクリスタルを抜いて、TS-511Sと交換してみます。7MHzは15.895MHz、14MHzは22.895MHzのクリスタルです。

 

交換して、コイルを調整すると発振してくれました。7MHz、14MHzともに受信可能になりました。ドライバーとミキサーのコイルを再調整(この調整には順番があるので注意)して、とりあえず最高感度にしておきます。

 

今回は、7MHzと14MHzのヘテロダインOSCのクリスタルがお休みになっていたようです。

 

以下に、各バンドのは発振出力をリストし、7MHzは発振波形を載せておきます。OSCコイルの調整は最も強いところから若干戻しておきます、そうしないとバンドを切り替えたときに発振が停止する場合があります。

 

R18 330Ωの左側で計測(参考値)

3.5MHz 4.08Vpp

7MHz 5.76Vpp

14MHz 4.72Vpp

21MHz 6.08Vpp

28.0MHz 5.28Vpp

28.5MHz 5.60Vpp

29.1MHz 4.96Vpp

TS511S_7.jpg

7MHzバンドのヘテロダインOSCの発振波形

15.895MHz(正確には読み取れません) 出力電圧 5.76Vpp

 

 

一応、ヘテロダインOSCが各バンドすべて発振してくれ、LSBとCWで受信が可能になりました。次はUSBのキャリア発振が出ていない問題です。

 

 

USBの発振出力が出ないキャリア・ユニット

 

これもなんとなくクリスタルが悪いような気がしますが、とりあえずSSGでUSBのキャリア周波数3.3965MHzをつくり、キャリア・ユニットのOUT端子から注入し、USBでの受信ができるか確認しておきます。SSGの信号レベルは2Vpp位になるように設定しておきます。これでちゃんと受信(復調)できました。21MHzので交信が聞きとれます。つまりキャリア発振さえ出ていればUSBもOKということになります。

 

あいにく3.3965MHzのクリスタル(HU-4U)の手持ちがないので、TS-511XNから借用することにしました。交換の結果、問題無く発振しました。

 

本件はあっけなく終了

 

なお、TS-511Sから外したクリスタルは、試しにTS-511XNに付けたところ、問題無く発振しました。半田ゴテの熱や、何らかの刺激で発振しだすこともあるようですね。

 

 

最後にマニュアルに従って調整を行いました。

 

ドライバー・コイル、MIXコイル、OSCコイル、IFのT3とT4、プロダクト検波の平衡、Sメーター(SSGから14.175MHz 30dBの信号でSメーター 9を振らせる)の調整をして終了です。

 

14MHzは少し物足りないのですが、まったく聞こえなかった7MHzは、見(聞)違えるように良くなりました。

 

 

 

 

 

(JF1VRR)

コメント(5)

  • 懐かしいです。学生の頃横浜のショップで新古品50Kにて購入。TVトランスで1kvの電源を自作、コネクタを秋葉のトリオで何とか購入。6LQ6が高価なので6KD6にソケットごと交換。15mでラグってたら突然受信不可に…Sメーターは振れてるのに…キャリアのTRが突然死でした。
    色々勉強させてくれた機械でした。
    exj*1u*u ] 2018/9/1(土) 午前 9:58

  • > exj*1u*uさん そうでしたか。この辺りのリグはまだいじれる範囲ですね。C460 C458, C372などはほとんど入手不能になりましたが。2018/9/1(土) 午後 6:09

  • おはようございます。興味を持って拝見させて頂きました。実はオークションで購入しましたTS511Sが①変調がかからない。②cwで調整し約200ワット出ますが、LSB・USBに切り替えてもそのまんま200ワット出っ放しの状態です。通常は音声に応じて出力メーターが振れるハズなんですが。アドバイスを頂けますと幸いでございます。突然のメールですみません。 A-7 ] 2018/11/4(日) 午前 8:15

  • > A-7さん 返事遅れて申し訳ありません。ご訪問ありがとうございます。ご質問の件ですが、受信は正常で、送信時に出るキャリアはVFOの指示通りの周波数ということで、お答えします。疑うのは以下となります。
    ①送信側BMの離調によるキャリア漏れ。②マイクアンプの発振。③CWトーンの出っぱなし。④CWモードになりっぱなし。このうちもっとも可能性の高いのは①です。製造当時の半固定抵抗は質が悪く、受信側BMでもよくある離調です。回路図を見ていないのでVR番号まで書けませんが、場所はわかるかと思います。②または③であればVOXをONにした瞬間に送信になるかと思うので、それで分かります。④の場合、CWモードではBMに電圧を加えてわざと離調させてキャリアがキー押下時に出るようになってますが、その信号が加わりっぱなしの場合です。以上がざっくりしたチェックポイントです。もし、VFO指示に関係のない周波数でしたら、ドライブ段、もしくはファイナル段の異常発振が考えられます。簡単ながら。(JF1VRR) 
    2018/11/10(土) 午前 0:04

  • > JF1VRRさん アドバイスをありがとうございます。返信が遅れ失礼しました。参考にさせて頂きます。早速チェックをしてみます。
    感謝いたします。
    A-7 ] 2018/11/25(日) 午後 1:02

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