TS-511XNの修理その2 21Mバンド以外送信不能、ALCが振れない

投稿日 201708/08

今回は修理というよりも調整になりました。

 

先日入手したジャンクのTS-511XNですが、受信はできるようになったものの、今度は送信部にも問題があるようです。21Mバンドは17.5W位出ています。マイク入力でもパワーが出ます。それに対して3.5M、7M、14M、28Mバンドはまったくといっていいほどパワーが出ません。また、どのバンドもALCメーターが全く振れず、Ipもほとんど流れません。

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オークションで入手したTS-511XN

受信不能を解決したら、今度は21M以外パワーが出ません

 

 

まずはファイナル S2001のヒーター電圧、プレート電圧、スクリーングリッド電圧

、コントロール・グリッドの電圧をチェックしておきます。

 

()内はマニュアルに記載されている参考値(TS-511Dのものと思われる)

 

ヒーター電圧 Pin7 AC6.2V(6.3V) Pin2 AC12.0V(12.6V)

プレート電圧 受信時 DC450V 送信時(CW) DC440V

スクリーン・グリッド電圧 Pin3 受信時 DC235V(220V) 送信時 DC235V(200V)

カソード電圧 Pin1,4,6  受信時 DC0V(0V) 送信時 DC0.35V(0.28V)

コントロールグリッド電圧 Pin5 受信時 DC-69V(-60V) 送信時 DC-57V(-44V)

 

以上、TS-511X/Dのマニュアルp23に記載されている真空管各部の電圧に、まぁまぁ近い値です。コントロール・グリッドのバイアス電圧が少し深めですが、カソードに0.35V出ているので送信時(CW)のIpは流れている模様です。(Ip(+Isg) = 0.35V / 2.2Ω = 159mAと計算できます。)

 

受信はそこそこですが、21Mバンドのみパワーが出るというのは調整ズレの問題と見当。ドライブ・コイル、ミキサー・コイルの調整を行います。

 

TS-511XNは底面のカバーを外して、さらにコイルパックのシールド兼保護カバーを外します。各コイルの中にライトを当ててみます。

 

なんと!、ほとんどすべてのコイルのコアがバリバリ割れたり、欠けたりしています。前オーナーが四苦八苦した証拠です。調整ジグもなかったので、金属の六角レンチでも突っ込んで回したのでしょう。コアは入手が困難なことと、一度割れたコアはなかなか取り出せないということで、慎重さを要求されます。ここまでひどいのは珍しい。

 

幸い当局は以前TS-520のコイルパックを購入してあったので、それのコアを流用します。流用とは言いましたが、TS-511とTS-520のコイルパックに使われているコイルは若干形こそ違うものの、同じものです。ヘテロダインの周波数構成も同じです。

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TS-520のコイルパック

表面にある高周波増幅部のFETを保守部品として確保するために購入したもの

TS-520とTS-511はヘテロダイン周波数の構成が同じなので

コイルや水晶発振子等が使える

 

割れているコアをすべて取り出し、TS-520のコイルパックから取ったコアに入れ替えました。慎重に時間をかけて取り出します。

 

コアを交換したら、マニュアルの調整要領に従ってすべてのバンドを調整します。コイルパックの調整は受信しながらマーカー信号を見ながら行います。ドライブ・コイルとミキサー・コイルは調整する順番があるので注意が必要です。適当にやるとあっちが立ってもこっちが立たずとなります。

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TS-511XNのコイルパック

左端にドライブ・コイル、中央にミキサー・コイル、

右端の水晶発振子とともにOSCコイル

上から21M、28M、3.5M、7M、14Mバンドのコイル

調整順は3.5->28.5->21->14->7

よく見るとコイル内部のコアがことごとく割れたり欠けている。

コアは多少割れてもあまり影響はないものだが、

今回はめちゃくちゃな調整で離調されていた。

途中で割れて回せなくなったもよう

 

調整の結果、21Mバンドのパワーが増え、パワーが出ていなかった他のバンドも18W位出るようになりました。勿論受信感度も改善されました。これで一件落着です。

 

ところで、SSBトランシーバはIF段やVFO、BFO(OSC)、RFアンプやドライブ段の同調コイルなどが送受信で共有されているため、受信できているセットでは、送信パワーが全く出ないような場合でも、共有部分に疑いの目を向けることが遅れがちです。最後までファイナルの送信管を交換してみたり、タンク回路をいじってみたり、ドライブ段を疑ってみたりしがちですが、今回の様にコイルの調整がずれていると、受信がそこそこできていても、送信パワーが全く出ないケースもあり得ます。今回のケースではALCがまったく振れないし、Ipもほとんど流れませんでした。パワーは勿論メータが1mmも振れません。それがコイルの調整だけで復活します。

 

ALCが全く振れないことからALCアンプを疑ったり、Ipが流れなければIpメーター・アンプを疑ってみたくなりますが、それらはすべてコイルパックの調整後ということになります。

 

ところで、オークションで入手したトランシーバーなどは、前のオーナー(さらにその前?)が、故障を直そうとしてめちゃくちゃな事をやっている場合がときどき見られます。ジャンクです。動作確認できる環境がありません。通電のみ確認しました。当方知識がないためわかりません。などなど。現状で売りたい気持ちはわかりますが、買うほうは注意しなければなりません。

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割れたコアとTS-520のコイルパックから取り出したコア

専用ジグを深く差しこんでから回す

コイルの中のコアは一度割れると、なかなか取り出せない

 

 

コイルのコア、とくに今回のような六角形の穴で回すタイプは割れやすいです。そのほとんどは専用ジグがないので、金属の六角レンチを使用し、しかも少しだけ差し込んで回すので簡単に割れたり、欠けたりします。一度割れると穴が広がり、回らなくなります。かならず専用のジグを使うべきです。その場合でも必ず完全に深く差し込み、コア全体に力が加わるようにします。ジグはコアが硬くて回らない場合は、ジグ自体がねじれてコアを傷めないようになっています。とにかくコアの扱いは慎重を要します。

 

 

 

 

 

 

(JF1VRR)