無線と実験 1958年4月号から

投稿日 2017/04/20

古い「無線と実験」誠文堂新光社を入手しました。1958年4月号。ざっと60年前の雑誌です。

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サブタイトル FMチューナ製作速成コース、45-45ステレオ・レコードの詳細

主な広告

ナショナル カラー・ブレテン42 出力管を3極管接続で使用すると、6AU6-T

ナショナルFMパーツ 2FC-43, 3FC-43 バリコン JC-02 FF用バリコン、FMI-1、AFI-1、PP-IO、AF-K1 AM-FMチューナー・キット、

NECトランジスタ ST121、ST161ほか

日立電子管技術資料No-12 6DT8、12DT8

マツダ技術資料 マツダ真空管 3BC5、6BC5

NEC真空管技術データ26 6G-B3A、6G-B6

スター FM-2、FM-120、TVキット14T165C

トリオ FM-110、FM100、AF-R5、R10.7

目次

--- RADIO PHOTO NEWSと折込 ---

(1) フィリップスの自動レコード・チェンジャー

(2) - (3) テレフンケン最初のTRラジオ ”パートナー”

(4) わが国最初の45-45立体レコード視聴会(日本ビクターにて)

折込(1) 音楽愛好家の作った電気オルガン

折込(2) 誌上訪問"トランジスターのできるまで”(神戸工業KK)

折込(3) ローコストをねらった電気楽器”ピアノラ”

折込(4) 小型搬送電話機”イージーホーン”

--- ラジオとHAMのページ ---

特集 FMチューナ製作速成コース

  FM放送の現状と各地の推定電界強度

  良好な受信は十分なアンテナで その実例

  高周波増幅は同調型、非同調型をとるか

  局部発振、ハートレーとコルピッツ どちらでいくか

  ミキサー回路は三極管か五極管か

  中間周波増幅は3段必要か

  なるべくほしいリミッター回路 動作と効果

  検波はフォスターかレシオか

  出力回路はこうすればよい

  安定化にはこれらが必要

  トラッキングはどのようにすべきか -- その要点

IF2段、レシオ検波、AFC、同調指示器付 FM-AMチューナの製作

廃品TVチューナを利用した FM-AM両用チューナの製作

6BQ5 シングル2バンド --- フォノ・ラジオのやさしい製作

Fresh Key JA1BRSを訪ねて

フィリップスの送信管と特殊管

--- オーディオのページ ---

1.本講の新ステレオ・ディスク

  ”45-45”立体レコード(日本ビクター)

  バックロードのキャビネットと6CA7PPのHiFi装置

  小容量キャビネットのための6CA7PP大出力アンプ

  ボールドウィン式電気オルガンの設計と製作

  盲点シリーズ (3) スピーカ・キャビネットの実際

--- テレビのページ ---

12チャンネルとその対策

  ・12チャンネルとターレット・チューナー

  ・今後の12チャンネル・チューナーのあり方

連載 TVサービス・ガイド・シリーズ(1) ナショナル T-1423(1422)

--- 測定器・その他のページ ---

実験室にはかかせないEp-Ip特性直視装置

Transistor How & Why?(1) トランジスタの使い方"早わかり"

楽器の周波数測定を正確に早くやれる ミュージカル・ピッチ・テスター(音程検査器)

--- エレクトロニクスのページ ---

ELECTRONICS実験手帳(43) 配線の”アラ”がすぐわかる配線の自動検査機

3スピードのフォノモーターを4スピードに 25(30)サイクル電源の製作

マイクロ気象のためにこれを! 室内湿度の自動調節器

電気応用計測の利器として 差動変圧器の製と応用面

--- 新製品サロン ---

アルプスB523 AM-FM2連バリコン 

アルプスB531 AM-FM3連バリコン FM 7pF - 17pF AM 12pF - 430pF

アルプスB512 FMバリコン 7pF - 17pF

トリオ R10.7 FM用10.7Mc IFT2 レシオ検波トランス・キット

スター FM-2 FM 10.7Mc IFT 3、フォスターシレー検波トランス・キット

スター FM-10 FM 10.7Mc IFT 3、レシオ検波トランス・キット

ナショナル AFI-1 FM-AM用IFT AM 1段 2極検波、FM 2段レシオ検波用

ナショナル FMI-1 FM用IFT、レシオ検波用トランス

ナショナル 2FC-43 FM/AM用2連バリコン AM 12pF - 430pF FM 8pF - 23.4pF

ナショナル 2JC-02 FM用2連バリコン 8pF - 23.4pF

ナショナル PP-10 ピストン・バリコン 1pF - 10pF

QQQ 小型FM-IFTキット KF-13R KF-14R KF-14F 

 

 

最近の無線と実験誌は、MJと称してオーディオ・アンプの記事ばかり。我々、どちらかというとラジオ・無線派。高周波好みとしては物足りず、あまり手にすることはありません。

 

しかし1958年(昭和33年)ごろの無線と実験は、ラジオ関連の記事が盛りだくさん。アンプの記事もありますが、ウエイトはラジオに置かれています。

 

今回は1958年4月号を読んでみて、そのころのラジオ界やオーディオ界、その他その時代で話題になっていることをピックアップしてみました。

 

まず、1958年ごろは、いろいろと技術革新という意味で興味深いイベントや事象がありました。それは、FM放送の開始、レコードの立体化へ(ステレオのことです)、トランジスタの量産化の始まり。まだまだ真空管全盛。テレビも真空管全盛だがもうすぐトランジスタも出てくる。そんな時代です。

 

1957年12月 FM放送の実験開始

 

ラジオのFM放送が開始されたのは1957年12月の実験放送からです。この当時の人はどのような期待をもって、FM放送を受け止めたのでしょうか。

 

無線と実験 1958年4月号では、特集記事として「FMチューナ製作促成コース」と銘打って、製作記事2件と、FM受信機の回路技術について、詳細に説明する記事を載せています。

 

目次から

FMチューナ製作促成コース

FM放送の現況と各地の推定電解強度

良好な受信は十分なアンテナで---その実例

高周波増幅は同調型、非同調型をとるか

局発回路は、ハートレーとコルピッツ どちらでいくか

ミキサー回路は三極管か五極管か

中間周波増幅は3段必要か

なるべくほしいリミッター回路---動作と効果

検波はフォスターかレシオか

出力回路はこうすればよい

安定化にはこれらが必要

トラッキングはどのようにすべきか---その要点

 

製作記事

IF2段、レシオ検波、AFC、同調指示器付き FM-AMチューナ

廃品TVチューナを利用した---FM-AM 両用チューナーの製作

 

これらの記事は大変勉強になります。FMの本放送はいつごろから始まったかは調べてみる必要がありますが、FMの黎明期。当時のラジオマニアはこれまでのAMラジオから、新天地FMへの夢を膨らませていたに違いありません。

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新製品サロンはFM用のパーツで花盛り

 

メーカー側にもかなりFMへの期待が感じられます。

 

知る人ぞ知る、トリオ(春日無線工業)のFM-100の宣伝が出ています。やはりメーカーの反応は早いですね。FM-100は業界第1号のFMチューナではないかと思います。「リアリスティックFMチューナ」と表現し、米国への輸出はすでに行われていたようです。「3連バリコン使用、高級AFC、リミッター回路付き」となっています。この当時、AFCやリミッター回路付きが売り文句になっていたんですね。

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FMチューナ第1号機? トリオのFM-100などの宣伝

R10.7が新製品として宣伝されている

 

 

FMラジオのキットとしては「FM-110」の宣伝が出ています。真空管も付属のフルキットです。パーツとしてはFM用のIFTとレシオ検波トランスがセットになった「R10.7」が新発売となっています。

 

一方、STAR(富士製作所)は、「FM-120」というFMチューナの宣伝が出ています。RF1段、IF3段、8球、AFC、リミッター付きという仕様で当時13,500円です。

 

STARはラジオパーツの販売でも有名ですが、MT管より小さいといううたい文句でIF3段+フォスターシレー検波用トランスのセット「FM-2」を出しています。

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STARもFM用のパーツを載せている

FM-120はトリオを意識しているか? こちらの方がハイスペックのようだ

白黒テレビのキットも出している

 

 

ナショナルは、8ページも使って、FMパーツ・ガイドを載せています。こうなれば宣伝というよりひとつの記事です。AM-FM用バリコン、FM用バリコン、FM用IFT、AM-FM両用IFTなど。特性グラフ付きで詳しい説明を載せています。また、FMフロントエンド「AF-P1」が近日発売となっています。AF-P1は、6AQ8 1球 2連バリコンのフロントエンドです。AMのバリコン、AM-FM両用IFTも組み込まれています。回路を見てみたいものです。

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ナショナルも完成品だけでなく、パーツにも力が入っていた

AF-P1はFM用フロントエンド(AM用バリコン付き)

 

 

チューナとしては「AF-K1」が近日発売となっています。これはAM-FM 2バンド・チューナです。回路図と詳しい解説が乗っています。ナショナルのFMへの期待がかなり感じられます。

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ナショナルのAM-FMラジオキット AF-K1

ハイスペックなラジオキット

 

 

FM放送局は関東では82.5MHzの東京のみ。関東平野一円にたった一局です。電界強度の弱い内陸部、田舎ではほとんど聞こえなかったのではと思います。

 

なお、FM放送がステレオ化されるのは、FM放送開始から6年後の1963年12月です。

 

 

195X年 レコードのステレオ化(当時は立体化と言っていた)

 

レコードのステレオ化は、1本のレコード溝でステレオ化する技術が開発されたという記事が載っています。当時はステレオという言葉さえなかったようで、その技術を「45/45立体レコード」と呼んでいたようです。レコードはステレオが当たり前のように思っていましたが、ステレオになったのは、この頃だったんですね。

FM局発発振波形(TP1) 76MHz辺りを受信中

約65.3MHz(76MHz - 10.7MHz)を発振している

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なんと双頭のピックアップ!!

1枚のレコードの外側と内側にLとRを別々に録音し、双頭ピックアップで再生した

当然外側よりも内側の音質が劣るし、盤面が経済的でない

ただし、セパレーションは良かっただろうと思います

 

「45/45立体レコード」が開発されるまでに、一時期、写真の双頭ピックアップ方式もあったようですが、長続きはしなかったようです。

 

当時、新しく開発された45/45立体レコードの視聴会が行われたようで、写真はその様子です。立体に聞こえたようです。

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45/45立体レコードの視聴会が行われた

 

 

 

国産トランジスタは黎明期

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NECトランジスタ 宣伝を兼ねた名称変更

新工場で大量生産が可能になったとある。

表を見るとまだまだ高価だったことが分かるが、これから安くなったかな?

 

トランジスタの型番(2SAxxx, 2SCxxxなど)は現在はEIAJへの登録制です。写真のNECのトランジスタは、まだEIAJに登録する前のものです。トランジスタの形も扁平型です。NECはトランジスタが新工場で大量生産できるようになり、トランジスタの品名を変更して安くなったと言っていますね。このような扁平型のトランジスタを採用した、古いポータブルラジオがこの時代にすでに作られていました。

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トランジスタの基本的な使い方についての記事

 

 

表の中の、たとえばST301は低周波用のトランジスタですが、一度ST331に改名され、更に後に2SB111としてEIAJに登録されました。'88 トランジスタ規格表の2SB111には、備考がST331とあります。ST301の当時の価格は420円。真空管より少し安いかなという感じですが、今のこの手のトランジスタの価格を考えれば高いですね。

 

トランジスタの基本的な使い方についての記事が出ていました。

 

 

真空管テレビの記事が現役

 

この頃、まだまだ真空管の白黒テレビの全盛期です。ソニーがトランジスタ・テレビを発表したのが1960年ですが、家庭から真空管テレビが姿を消すのはまだまだ先の話。このため、雑誌には真空管テレビの修理についての記事が載っていたようです。

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テレビの修理については、丁寧な記事が

各メーカのさまざまな型番のテレビを順次取り上げていたようだ

 

 

この記事は連載 TVサービス・ガイド・シリーズと題して、毎回違う型番のテレビを取り上げ、修理の要点を詳細に説明していたようです。今回はナショナルのT-1423(1422)型。このテレビは白黒のトランスレス・テレビで、回路はオーソドックスなものです。チューナはロータリースイッチ型なので、少し旧式と言えそうです。ロータリースイッチ式のチューナは接点不良がでたらおしまい。とりかえ用のターレット方式への交換が勧められています。交換チューナは当時の価格で4500円。お高い修理代金になりそうです。

 

特徴的なのはテレビキットの宣伝が多い点です。前述のSTARの宣伝にも14T165C テレビキットが宣伝されています。これは14インチ型の白黒テレビキットです。価格は49,500円。2時間で組み立てられるとあるので、半完成品かもしれません。

 

 

レコード・プレーヤーの宣伝が多い

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綺麗な桂 典子さんに目が行ってしまう

この時代のプレーヤは4スピードがうたい文句

 

割りとレコードプレーヤの宣伝が誌面を賑あわせています。レコードは前述のようにまだステレオ化されていません。

 

フォノ・モーターの優秀さを競っているようですが、4スピードと題して、16 2/3、33 1/3、45、78rpmの4スピードが選択できるようになっています。16回転なんてのがあったんですね。

 

 

真空管の紹介がまだまだ出ていた

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ナショナルの3結での使い方に関する情報

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真空管まだまだ全盛時代。これはナショナルの真空管の紹介ですが、5極管の3結(3極管接続)についてですから、テレビやラジオ向けではなく、オーディオ・マニア向けのようです。6CA7と6BQ5は詳細に。ほか6AR5、6BM8、6CM5、6F6(42)、30A5、35C5、50C5は、3結のEp-Ip特性グラフが載っています。

 

別のページには同じナショナルですが、FMの受信にはと題して、6AQ8、6AJ8、6DC8を勧めています。

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マツダの技術資料

 

 

マツダの真空管も宣伝が出ていました。マツダ技術資料と題して、さまざまな真空管を順次紹介していたようです。詳細に説明があります。

 

ほかにNECも真空管の宣伝を載せています 6G-B3A、6G-B6です。説明は結構詳細で、真空管規格表より詳しいくらいです。

 

 

 

以上、古い雑誌は当時のいろいろなことを教えてくれる歴史の証人ですね。

 

 

 

 

 

(JF1VRR)