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AM/FMステレオチューナー KT-5000

投稿日 2017/03/10

TRIOのAM/FMステレオ・チューナー KT-5000をオークションで入手しました。

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AM/FMステレオ・チューナー TRIO KT-5000

 

 

FM受信周波数 76 - 90MHz

FM受信感度 1.7uV 300Ω/75Ωアンテナ端子

AM受信周波数 520 - 1610KHz

AM受信感度 15uV 外部バーアンテナ付き

 

ツマミ/スイッチ 左から 

電源 - FM AUTO - FM MONO - AM 切り替え 

出力レベル

チューニング

FMミューティング

FM MPXフィルター

 

メーター

左 受信レベル・メーター

右 チューニング センターメータ

 

ランプ

FM ステレオ表示

FMミューティング ON/OFF

FM MPXフィルター ON/OFF

 

後面にFMマルチパス・モニタ出力あり

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L - R OUT TAPE REC OUT, MONO OUT

マルチパス・モニタV/H出力

AM、FM 75Ω/300Ωアンテナ端子

AMバーアンテナ(水平方向に動かせる)

 

TRIOのKTシリーズは、KT-5000のほかKT-3000やKT-7000などなど、様々なモデルが存在し、輸出用のモデルも加わって、ネットで調べても、なかなかその実態がわかりません。当時のカタログでもじっくり読めばわかるかも知れませんが....。

 

さらに新旧いろいろなモデルがあるKTシリーズですが、番号が大きくても、上位モデルとは限りません。たとえばKT-5000とKT-5500は別物です。(KT-5500はFM専用モデル)

 

本当は数あるKTシリーズの中でも有名なKT-7000が欲しかったのですが、KT-5000と同時期の販売で、デザインを合わせてあるプリメインアンプのKA-6000を所有しているので、それに合わせてウッディー・モデル(側板が木板)のKT-5000を選びました。組み合わせてみると、なかなか恰好よくまとまります。

 

組み合わせるとき、両方ウッディー・モデルなのは当然ですが、フロントパネルのツマミの重厚感も合っていなければなりません。その点KT-5000とKA-6000の組み合わせは最適と思います。

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KT-5000と

ソリッドステート・ステレオ・アンプリファイアー KA-6000

この二つはツマミの重厚感など外観のマッチングがよい

 

 

KT-7000が欲しい理由の一つは、IFが定評のあるクリスタル・フィルターだからですが、入手したKT-5000のIFはメカニカル・フィルターです。

 

KT-5000のいいところは(KT-7000もそうですが)、回路が大々的にIC化される前のモデルであることです。IFにオペアンプICが使われていますが、その他はディスクリートです。このため回路図を見ればFMステレオ・チューナーの見慣れた回路が並んでいます。IC化された回路は眺めていてもつまらないものです。

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KT5000 AM/FMステレオ・チューナーの内部(上面)

左上 フロントエンド・ユニット

中央下 中間周波増幅、AM MIX、検波基板

中央上 MPX基板

右上 AFユニット

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KT5000 AM/FMステレオ・チューナーの内部(裏面)

電源、AVR、ランプ、メーター、切り替え、ボリューム、基板間などの配線

 

 

なぜディスクリートの回路を好むかというと、回路構成がFMステレオ受信機の原理そのものであること、修理しやすい、いじりやすいからです。

 

その回路はオーソドックスなもので、AMのミキサー、FMフロントエンド、AM/FM IF、リミッタ―、検波、FM MPX、AF AMPと、まぁ、一般的なFMラジオにMPXを追加してステレオにしたようなものです。チューニングメータやセンターメータ、MPX出力(マルチパス観測用)も付いています。

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FMフロントエンド

AM用バリコンも搭載している

高周波増幅 2SK19 局部発振 2SC785 混合 2SK19

 

回路図や取説、その他調整方法などは"TRIO KT-5000”で検索すればいろいろ出てきます。当局も参考にさせていただきました。

 

さて、AM放送のステレオはそんなに注目されていませんが、FMはステレオで聴くのが当たり前。当局もクラシックの名曲を聴くなどでお世話になっています。FM放送で興味深いのは、ステレオにするための変調方法です。

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オペアンプ使用のAM/FM中間周波増幅部、AM混合と局部発振、検波回路など(手前)

FM MPX回路基板 (奥)

AF増幅基板 (右)

 

FM放送で使われている周波数変調(FM)の周波数偏移幅は最大±75KHzが許されています。FMステレオ放送はその範囲を分割して使用する一種の多重放送で、50Hzから15KHzにL+Rの信号を。19KHzにパイロット信号を。38KHzを中心に23KHzから53KHzまでにL-Rの信号をDSBで。60KHz以上をSCA(情報サービス)で使用し、これらをまとめたコンポジット信号としてキャリアを周波数変調しています。

 

こうして送られてくるFM放送波のコンポジット信号を分解してL(左信号)とR(右信号)に分離するのがFMチューナの役目ということになります。50Hzから15KHzにはL+Rがあるので、これを15KHzまでのローパスフィルターを通せばモノーラル信号が得られるので、従来のモノーラルFMラジオでそのまま聴くことができます。

 

L-Rの信号はバンドパスフィルターで取り出し、38KHzのキャリアを加えてAM検波すれば得られます。38KHzのキャリアは自分で作る場合と、パイロット信号の19KHzを逓倍して作る場合もあるようです。SCAはSCAフィルターで取り除きます。

 

話は変わりますが、オークションでの古い電子機器の入手は、ある程度覚悟が必要です。なにぶん古いものだけに、完璧なものは求めるべくもありません。通電して一通り動けばいいほうです。今回入手したKT-5000は、ミューティング(スケルチ)が効きません。その他は概ね動きますが、感度についてはこの時代のもの。20年前に購入したラジカセのFMラジオにさえ勝てません。

 

オークションで入手する場合、前オーナーが修理や改造などでいじっているかどうかは重要です。できれば全くいじられていないものを入手したいものです。オークション出品者の中には技量が無いのに、修理や調整をする人もいます。中身がきれいに清掃されていたりしたら、手が入っていることを疑うべきです。

 

入手したらまずカバーの取りつけネジを注意深く観察します。もしつぶれたり傷のあるネジが無く、ネジによって締め付け力が違ったりしなければ、一度も空けられていない証拠です。もし少しでもつぶれたり傷のあるネジがあったり、締め付け力が違っているネジがあったら空けられた証拠ですし、その人は素人です。プロは決してネジ類を傷つけたりしませんし、中途半端な締め方やネジによって締め付け力が異なるようなこともありません。

 

カバーを外したら中の埃の状態を見ます。一定の埃で覆われていたら、手は入っていないと言えます。錆びや油汚れなどは人為的でないものが多いようです。ひととおり埃をきれいに取り除いたら、次に半田の状態を見ます。艶が無く、いびつな半田の箇所があれば、手が加わっている可能性があります。

 

今回のKT-5000のカバー取り付けネジは少し(ほんの少しです)潰れがあったし、若干の締め付けの差があったので、素人によって空けられています。中の埃は一定の層になっていましたので、おそらく手は入っていません。半田し直しの跡や、交換された部品は無いようです。

 

ミューティングは後日修理することとして、簡単なループアンテナをつないでFM放送を聴いています。

 

時間があったら調整してみたいと思います。

 

 

 

 

(JF1VRR)

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