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EF-850の動作確認と調整 低周波増幅部

投稿日 2017/02/04

EF-850は昭和30年代に販売されたナショナルのMW/SW, FM 3バンドラジオです。

 

先日、EF-850の回路構成を見てみましたが、今回は入手したままの状態のEF-850の各部の動作状態を波形観測等で確認してみました。

 

関連記事: 3バンドラジオ EF-850の回路構成

 

所有のEF-850はオークションで入手したものですが、前オーナーが劣化が疑われるコンデンサーや抵抗等の交換を行って、ある程度整備されていました。

 

前回、電源部のチェックで、低周波電圧増幅の12AV6の入力側の配線が間違っていることを発見し、修正することによって、目立っていたハム音の問題はほぼ解決しました。今では調子よく鳴っています。トランジスタラジオより音がいいので、作業しながら聞くラジオの地位を獲得しています。

 

関連記事: EF-850の動作確認と調整 電源部

 

 

このラジオをなるべく良好な状態にもっていくために、各部の点検をしていきますが、今回は低周波増幅部(低周波電圧増幅部と低周波電力増幅部)です。

EF-850_前面.jpg

3バンド・ラジオ ナショナル EF-850

 

 

以下のようにブロックを分けて進めています。

 

電源部 <- 前回

低周波電力増幅部と低周波電圧増幅部 <- 今回

AM検波部

FM検波部

中間周波増幅部

MW/SW周波数変換部

FMチューナー

同調指示部

EF-850_回路図.jpg

EF-850 3バンドラジオ回路図

 

 

 

低周波電力増幅部と低周波電圧増幅部

 

EF-850の低周波電圧増幅部には12AV6の三極部が、低周波電力増幅部には30A5が使われています。

 

低周波電圧増幅部は検波後の音声交流信号を電力増幅段で受け取れる位に増幅します。低周波電力増幅部はスピーカを鳴らすための電力増幅を行います。以下がその部分の回路です。

EF-850_回路図_電力増幅部2.jpg

EF-850の低周波増幅部とバンド切替回路

 

回路は5球スーパーに一般的に使われている回路です。ほぼ中央のコンデンサ0.022uFは、音量調整のボリュームの中点から音声信号を取り出しています。

 

音量調節のボリュームは500KΩのA型が使われています。このボリュームは検波回路の負荷抵抗となっています。コンデンサ0.022uFで直流分をカットし、音声信号の交流分のみを12AV6のグリッドに加えています。12AV6のグリッドは4.7MΩでグリッドリーク・バイアスとなっています。

 

各部の直流電圧値

 

30A5のプレートとスクリーングリッドの電圧波形は、前回の「EF-850の動作確認と調整 電源部」で確認しました。プレートが実測で99.7V。スクリーングリッドが100Vです。両方とも約100Vで、規定通りと言えます。(プレートの電圧は11Vppのリプルを含んでいました)

 

今回は計測したポイントの電圧を加えて以下に示します。

参考値とは回路図に示されている値です。

 

30A5のプレート 参考値: 9xV 実測値: 99.7V (約11Vppのリプルあり)

30A5のスクリーン・グリッド 参考値: 100V 実測値: 100V

30A5のカソード 参考値: 5.4V 実測値: 6.0V

12AV6のプレート 参考値: 44V 実測値: 51.5V

12AV6のカソード 参考値:  -  実測値: 6.0V

 

30A5のカソード・バイアス抵抗が150Ωで、カソード電圧が6.0Vですので、無音時

プレートには40mA(6 / 150 = 0.04)流れていることになります。(参考値は36mA)

 

各部の交流電圧波形の観測

 

低周波増幅部の動作確認はPU端子(外部からレコードプレーヤ等の信号を入力する端子)が便利に使えます。ここに低周波波発振器の信号を入力してやれば、簡単に波形観測ができます。

EF-850_低周波増幅部波形観測.jpg

入力低周波信号はタブレットのSGアプリを利用

PU端子にミニプラグのジャックを取りつけて信号を入力

 

低周波発振器はタブレットやスマホで配布されている無料アプリのシグナル・ジェネレータ(信号発生アプリ 以下SG)を使いました。各種提供されてますが、基本機能はどれも同じです。

EF-850_波形_12AV6増幅.jpg

12AV6の増幅波形

CH1 入力信号 1KHz 104mVpp CH2 12AV6出力信号 1.9Vpp

 

 

 

SGの出力信号の周波数を1000Hzにセットし、A点にオシロのCH1をあてて、SGの信号を見ながら、SGの振幅設定やラジオの音量調節のボリュームを回して100mVppくらいにセットします。オシロのCH2をB点(カプリング・コンデンサー0.0047uFの30A5側)にあてます。これで12AV6の三極部の増幅度が分かります。

 

観測波形より、CH1が約100mVpp、CH2が1.9Vppとなっており、1.9 / 0.1 = 19倍 20log(19) = 26dBとなります。

EF-850_波形_12AV6_30A5増幅.jpg

12AV6 + 30A5の増幅波形

CH1 入力信号 1KHz 104mVpp CH2 30A5 プレート 54Vpp

CH2はリプルを伴っているので、揺れている

 

 

次に30A5の電力増幅部ですが、30A5のプレートの電圧波形を観測しました。ここは11Vpp位のリプルで揺れています。CH1のプローブは12AV6のグリッドそのままにしておいて、CH2を30A5のプレートに当てます。

 

観測波形より、CH1が約100mVpp、CH2が56Vppとなっており、56 / 0.1 = 560倍 20log(560) = 55dBとなります。12AV6と30A5の低周波増幅部の総合電圧利得は約55dBでした。

 

スピーカから12AV6のカソードに帰還している回路を外すと、負帰還が無くなったので56dB位に上がりますが、聞いた感じではあまり変わりません。

 

12AV6のプレートにある0.01uFと500KΩ(A)のボリュームは、電源スイッチ連動のトーンコントロールです。ここもボリュームの1番端子と2番端子(中点)配線が逆になっていたので修正しました。どうも、前オーナーはボリューム端子の見方が分かってないようです。このトーンコントロールは、12AV6のプレートに入っている250pFの値に並列に0.01uFを挿入して高域の減衰させているようです。

 

タブレットで音楽プレーヤを起動し、PU端子に入力していい音を聴いています。勿論ステレオではありませんが、真空管を通して出てきた音はなぜか和みます。

 

 

 

 

(JF1VRR)

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