EF-850の動作確認と調整 電源部

投稿日 2017/02/02

EF-850は昭和30年代に販売されたナショナルのMW/SW, FM 3バンドラジオです。

 

前回、EF-850の回路構成を見てみましたが、今回は入手したままの状態のEF-850の各部の動作状態を波形観測等で確認してみました。

EF-850_前面.jpg

3バンド・ラジオ ナショナル EF-850

 

 

関連記事: 3バンドラジオ EF-850の回路構成

 

所有のEF-850はオークションで入手したものですが、前オーナーが劣化が疑われるコンデンサーや抵抗等の交換を行って、ある程度整備されていました。

 

しかし、ハム音が多く、受信感度もいまいちで音も歪んでいますので、今回各部の動作状態を観測して調整し、直せるものはできるだけ直してみることにしました。

 

以下のようにブロックを分けて進めます。

 

電源部 <- 今回

低周波電力増幅部と低周波電圧増幅部

AM検波部

FM検波部

中間周波増幅部

MW/SW周波数変換部

FMチューナー

同調指示部

EF-850_回路図.jpg

EF-850 3バンドラジオ回路図

 

 

今回は電源部です。

 

電源部

 

入手したEF-850にはどのバンドにしても、また、PUにしても大きなハム音があります。このハムは音量の大小(ボリュームを回しても)にほとんど影響しません。このことから低周波電圧増幅部以降で発生している可能性があります。

 

ハムの原因として考えられるのは、

 

B電源のリプル

ヒーターの交流点火による影響

ラジオ内の電磁波が、高周波増幅部や12AV6などの高インピーダンス部分を揺らす

外部要因(インバーターなどの電波の混入)

 

などが考えられます。

 

B電源のリプルはある程度以上取れませんが、半端整流よりは全波整流が有利。また平滑段数が増えれば有利ですが、その分電圧降下は免れません。オーディオアンプのようにチョークを使えば電圧降下は抑えられますが、廉価なラジオにそれは無理です。

 

EF-850の電源回路は半導体ダイオードのSD-1を使用した半波整流です。平滑は2段ありますが、FM付きのラジオだからでしょうか、これはまだ配慮されているほうで、廉価なラジオでは1段です。

 

低周波電力増幅に使用している30A5は感度がよいほうなので、B電源にリプルがあれば影響が出ると考えられます。

 

ヒーターの交流点火は、傍熱型真空管(ヒーターでカソードを温める形式の真空管)では影響は少ないと言われてますが、それでも交流ですから50Hzでエミッションが変化することは考えられます。では直流点火にすれば?ということになりますが、トランスレスのラジオではAV100Vを整流平滑しなければなりませんので、おおげさになります。ただし検討外ではありません。

 

高周波増幅部などの小信号を扱う部分や検波後の信号を扱う12AV6などの真空管はシールドケースが必要です。これはほとんどの場合配慮されています。EF-850でもFMチューナの17EW8とAM検波/電圧増幅の12AV6にはシールドケースがかぶさっており、アースされています。

 

外部信号の影響は、へたにアンテナを長くしたりすると顕著になったりします。今は蛍光灯のインバーターや近くの太陽光発電のインバータなど、ノイズ源が増えました。ただし、自家の機器がノイズ源の場合、それらを消してみて確認はできます。

 

まずはB電源各部の波形を観測してみました。

EF-850_回路図_電源部T.jpg

電源部のAからD点と、30A5のプレートの電圧波形を観測してみた

EF-850_波形_AC100V.jpg

AC100ラインの波形(回路図のA点)

やや頭が歪んでいるが一般的な範囲の波形

この波形がヒータの電源でもある

136Vp 98.9Vrms 約50Hz

EF-850_波形_SD-1_OUT.jpg

整流後の波形(SD-1の出力)(回路図のB点)

参考値: 120V 実測値: 115.4V 

26Vpp 50Hzのリプルがある

EF-850_波形_平滑1.jpg

平滑フィルターを1段通した波形(回路図のC点)

出力トランスを通してプレートに加わる

参考値: 110V 実測値: 112V

リプルが11Vppになっている

EF-850_波形_30A5_P.jpg

30A5のプレートの波形

参考値: 9xV(汚れで読めない) 実測値: 99.7V

11Vppのリプルがある

無信号で音量をしぼって計測

放送を受信し音量を上げると音声信号が重畳されているのが分かる

EF-850_波形_平滑2.jpg

平滑フィルターを2段通した波形(回路図のD点)

30A5のスクリーングリッド、およびその他前段回路のB電源となる

参考値: 100V 実測値: 100V

大きなリプルはほぼなくなっている

 

 

上記の観測波形から30A5のプレートのB電源の波形に11Vppのリプルがあることが分かります。これはハムの原因になる可能性があるので取り除く必要がありそうですが、一般的なものでもあります。

 

11Vppのリプルの原因としては、2つ目の60uF 150Vの電解コンデンサーの容量抜けが考えられます。そこで、試しに22uF 200Vの電解コンデンサーを並列に接続してみました。結果は少しリプルが低くなるものの、あまり変わりません。ハム音にも変化ありません。

 

次に前段の12AV6からのハムかどうかを切り分けるために、30A5のグリッドをワニ口リード線をかませてグランドに落してみました。これでまったく静か(ほとんど無音)になりました。これは、30A5がリプルの影響はあまり受けていないことになります。

 

問題のハム音は何もつないでいないPUにしても出るし、ボリュームを絞ってもハム音は変化しません。

 

そこで次に、12AV6のグリッドをグランドに落してみました。その結果、かなり音量が小さくなりますが放送は聞こえています。ゼロにはなりません。おかしいと考えながら、グランド側を外しました。その瞬間激しいハム音が! いままで聞こえていたハム音の激しいものです。

 

そこで12AV6のグリッドからコンデンサ0.022uF(検波出力の直流分をカットするコンデンサ)を経由して、ボリュームまで辿って行きました。12AV6から0.022uFをシールド線を使わずに、長いリードをそのまま延ばしてボリュームにつなげてあります。ここはシールド線でしょ! と考えながらボリュームをよく見ると、なんと、0.022uFがボリュームの1番端子につながっています。逆に検波出力が2番端子につながっています。逆です!!  これは前オーナーの配線ミスです。

 

さっそく、1番と2番端子の配線を元に戻し、とりあえずシールド線に変更せずにそのまま電源を入れてみると。..... みごとに気になっていたハムは止まりました。

 

気になっていたボリュームをしぼっても、音が消えない現象も同時に解決しました。ボリュームの配線が逆だったので当たり前ですね。

 

12AV6のグリッドあたりはインピーダンスが高く、周りの影響を受けやすいところです。ボリュームの周辺はシールド線を使うべきです。EF-850のような3バンドでPU端子も持っているラジオでは、ボリュームから一旦ロータリー・スイッチの切り替え回路につながなければならないので、長くなりがちです。EF-850も勿論シールド線を使っています。しかしボリュームから12AV6まではコンデンサが長いリードでつながっており、シールド線にはなっていません。これは前オーナによる変更かもしれませんので、オリジナルがどうなっていたかはわかりません。とりあえずシールド線にしなくてもハム音は消えたのでよしとしました。

 

以上で、ハム音の問題はほぼ解決しました。

 

ほぼというのは、

 

ヒーターの交流点火から来ているであろうハム音がわずかにしています。これはある程度音量があれば聞こえないので、こんなもんだと諦めたほうがよさそうです。

 

NHK第1放送に同調したときのみ、少し大きめのハム音が聞こえます。(ラジオによってはNHK第2放送で聞こえることもあります。) これは真空管ラジオではよくあることで、NHKが一般に電波が強力なのでNHK第一かNHK第二に出るようです。これは強力な電波を受信したときの現象ですので、AVC周りや周波数変換などからくるものかもしれません。

 

これらの気になる点は残っていますが、真空管ラジオとしてはハム音の問題はほぼクリアしたといえます。

 

30A5のプレートのB電源の11Vppのリプルは無いに越したことはありませんので、数ボルトの電圧降下を犠牲になければなりませんが、平滑回路を前段に一段増やしてみるのもいいかもしれません。このとき、なるべく電圧を確保するという意味では、整流に使用しているSD-1を保護するために直列に入っている25Ωを外したほうがよいです。そのためには現在入手しやすい大容量のダイオード(できればショットキバリア・ダイオード)に交換する必要がありそうです。(整流ダイオードSD-1のまま、25Ωを外すと、おそらくSD-1が切れてしまう可能性が大きくなります。(よく切れるダイオードなので要注意です)

 

今回の調査で平滑回路のブロックコンデンサー(60uF 150V x 3)は今のところ生きているようですが、寿命がいつ来るかわかりませんので早々に交換しておいた方がよさそうです。ただし同型のものは入手が難しいですが。

 

 

 

2018年06月12日加筆

 

その後調子よく働いていたEF-850ですが、少しハム音が目立ってきたようです。五球スーパーの中で最もハムにクリチカルなのは12AV6の検波回路周辺です。そのため12AV6にはシールドケースを被せてあるわけですが、感電しないように慎重に12AV6に指を近づけたり、頭に指を当てて揺らしてみると、明らかにハム音の大きさが変わります。

 

先日ヒューズが飛んだメインアンプが、電源の整流ダイオードの劣化だたので、EF-850の整流ダイオード SD-1も疑ってみることにしました。メインアンプから外したダイオードは、取り外した直後に両極方向で導通つまりショートでしたが、何度か計測しているうちに正常に回復。数十年前に使われた10D10などのダイオードは、そろそろ劣化してくるのでしょうか。ということでEF-850のSD-1を1N4007に交換したところ、ハム音がかなり減少。12AV6に触っても変化がなくなりました。このSD-1も劣化していたようです。数十年眠っていたラジオを、ここ数カ月で頻繁に電源を入れることにより、一気に劣化が現れたのでしょうか。テスターチェックでは正常ですが、実際には純方向の抵抗値が大きくなって、B電源にリプルが増えたのでしょう。これでハムはほぼ耳ざわりではなくなり、元気に動いています。

 

 

(JF1VRR)