トランジスタ

投稿日 2016/05/18

トランジスターではなく、トランジスタです。

 

ここでのトランジスタとは、小型の携帯型ラジオのことです。

トランジスタラジオ.jpg

これは比較的新しい携帯ラジオ

AMのほか、FMも聴ける

電池はすでに単三が使われている。

左上のトランスに挟まれた丸い部品がスピーカーを鳴らすための

電力増幅B級プッシュプル回路のトランジスタ二個

黒い朝顔の種のようなものもトランジスタ

合計8石位使われている(FMもあるので少し多い)

ICを使わずディスクリートで作られた携帯FM/AMラジオ

 

私が子供のころ、大人が「トランジスタ」と言えば、それはラジオのことでした。今でもそんな感じがしますが、私だけでしょうか。

 

小学生時代(昭和40年ごろ)、その頃は正に携帯のラジオが売れていた頃でした。大阪の日本橋の電気街では、路上でラジオをいっぱい架台にぶら下げて、おじさんが盛んに売り声を上げていました。

 

真空管ラジオの時代が終わり、トランジスタのラジオが普及し始めました。当然ラジオは小型になり、電池で動くので持ち運びに便利になりました。薄型のアルマイト弁当箱ほどの大きさのトランジスタラジオは高級で、短波も受信できたため、競馬や株をやっているお金持ちのおじさんたちのものでしたが、比較的安い小型の携帯ラジオは、私の祖母も持っていました。煙草のケースを少し分厚くしたくらいの大きさです。決まって合成皮革のケースに入っていました。イヤホーンも付属していました。

 

私の祖母は、寝るときに枕元にラジオを置いて、しばらく聴くのが常でした。

 

ある日、電池の交換を頼まれ、裏ぶたを開けたことがありました。初期の携帯ラジオの電池はほとんどが006Pという角型の9V電池でした。やることはそれをセットするだけです。

 

しかし、私は裏ぶたが外されたラジオを見て、宇宙を感じました。(ちょっと大げさ)

 

そのころはそれが何か分かりませんでしたが、トランジスタやコンデンサ、抵抗、バリコン、トランス、バーアンテナなどが所狭しと詰め込まれて立ち並んでいました。全てが小型です。なにやら部品独特の匂いもしたに違いありません。これでラジオが聴ける? 不思議な世界でした。

 

多くの携帯トランジスタラジオは6石(裏ぶたに6Transistorと書いてある)。つまりトランジスタが6個使われるのが標準でした。子供でも6個の同じ部品を探して、これがトランジスタだなとわかったものです。

 

真空管ラジオとほぼ同じような回路構成(スーパーヘテロダイン)ですが、真空管ラジオが五球スーパー。つまり真空管を5本使っていたのに対して、トランジスタラジオは6石です。なぜ1個多いかというと、トランジスタラジオではスピーカーを鳴らす電力増幅段がB球プッシュプル回路になっているため、2個必要だからです。(つまり1個では増幅度が足りずスピーカーを鳴らせない)トランジスタラジオも一般的なスーパーヘテロダインなので、他の回路はほぼ同じです。

 

それにしてもたった9Vの電池で動くのですから、トランジスタラジオは画期的です。しかし現在のレベルで言えば、9Vも必要なの。と言いたくなります。今では乾電池2本の3Vで十分。設計によっては1.5Vでもスピーカーが鳴るラジオもあります。低電圧で動かせるようになったわけですね。

 

当時トランジスタが使われた電気製品は他にも多くあった(テレビもトランジスタ化された)と思いますが、なぜかトランジスタと言えば、携帯ラジオのことでした。ラジオなんて言わずに、「トランジスタ」と呼んでいました。テレビは、トランジスタテレビでもテレビ。画面の大きさはあまり変えようがないので、図体が一回り小さくなっても、テレビはテレビでした。

 

ラジオが壊れる一番の原因は、電池の液漏れです。当時の電池は密閉が悪く、使わずにしばらく放っておくと、必ずと言ってよいほど、電池が液漏れを起こし、電池やその周辺を錆びさせます。ひどくなると電池交換だけでは済まない、致命傷となります。多くの携帯トランジスタは、これで廃棄されました。今でもテレビなどのリモコンに外国製の電池を使っていると液漏れしてたりするのでときどき点検を!。

 

私はこのあと、ゲルマラジオを作ってラジオ少年となりました。

 

今でもときどきトランジスタの裏ぶたを外して、亡き祖母を思い出しています。



 

 

(JF1VRR)