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LT1170使用の昇圧コンバータ

投稿日 2016/03/23

NJW4131やLT1172で12Vバッテリから19V位を作る昇圧コンバータを作ってきました。当局のノートPC DELL Inspiron 1210は小型なので消費電流は0.65Aくらい。このためNJW4131やLT1172でもなんとかなりました。

 

参考 LT1172CN8使用の昇圧コンバータ その2

   NJW4131昇圧コンバータ・モジュールの評価

 

しかし、モニタが15インチくらいの一般的なノートPCで使うには電流容量が不足しています。1.5A以上はほしいところです。

 

そこで候補に上がるのがLT1170ですが、Tパッケージ(TO-220)のLT1170CTは1500から2000円位と高価です。無銭家としては手が出ませんので、今回はリニアテクノロジのサンプル・サービスを利用して入手しました。

LT1170_02.jpg

LT1170CT 100KHz 5A 高効率スイッチング・レギュレータ

5ピンのTO-220パッケージ

 

サンプル・サービスはリニアテクノロジのホームページから行うことができます。同時に1品種2個以上は要求できませんが、ちょっと実験するのには便利です。リニアテクノロジさんには感謝してもしきれない感がありますが、このような個人の要求にも誠実に応えてくれるのは、やはり大企業の貫録というところでしょうか。今回は要求してから10日で到着しました。

 

さて回路ですが、例によってLT1170のデータシートの参考回路をそのまま使い、12V入力、16から19V出力2Aの昇圧コンバータに仕立ててみました。

 

部品の定数は手持ちの関係で若干変更しています。

LT1170_01.jpg

リニアテクノロジ社LT1170/71/72シリーズのデータシートより抜粋

昇圧コンバータの回路例

今回はこの回路をそのまま作った

BOOST(昇圧コンバータ)の場合

右のグラフより、12V入力では最大約42Wの出力電力が得られる

ということは出力電圧を19Vとした場合、2.2Aとれる

今回出力フィルタは入れていない

 

出力電圧は16Vと19Vが可変範囲に入るように分圧回路の抵抗値を決めました。R1は33KΩ、R2は5KΩの多回転可変抵抗としました。

 

コイルは秋月電子で販売しているトロイダルコアに巻いた47uH 9Aのものです。

 

入力のコンデンサは470uF 25V、出力コンデンサは1000uF 35Vとしました。

 

ショットキバリアダイオードはSB560 60V 5Aです。

LT1170_03.jpg

72mm x 48mmの汎用基板を使用

LT1170_04.jpg

配線面

銅箔を貼りカッターで切ってパターンを作り、半田を流した

 

負荷特性

 

入力電圧 12V、設定出力電圧 19Vとして出力電流を0から2.5Aまで変化させて出力電圧の変動を計測しました。同時に入力電流を計測して、入力電力と出力電力を計算し、効率を求めました。

 

電圧変動率は0から2.5Aの範囲で平均0.5% 出力電流 2.5Aで18.85V

無負荷時の入力電流(待機電流) 0.01A

出力電流/入力電流 約1.7倍強

効率 出力電流 1.2Aのとき92%(最高) 1.5Aのとき90.6%、2.0Aのとき89.1%

効率の平均は90%

LT1170_05.jpg

入力電圧12.0V 設定出力電圧 19.0V

出力電流0から2.5Aまでの出力電圧変動

出力電流 2.5Aで18.85V

変動率の平均は0.5%

LT1170_06.jpg

出力電流1.2Aのときの92.0%が最高

 効率の平均は90%

 

入力電圧変動

 

設定出力電圧 19V、出力電流 1.5A、2Aとして、入力電圧を14.0Vから10.0Vまで変化させて、出力電圧への影響を見ました。

LT1170_07.jpg

入力電圧 12V 出力電流 1.5Aのときに出力電圧を19Vに設定

入力電圧を14Vから10Vまで変化させて出力電圧への影響を計測

出力電流が1.5Aと2Aの場合

1Aの場合 変動なし  2Aの場合の平均電圧18.98V

バッテリ出力がフル充電から消耗状態まで問題なく使用できそう

 

 

 

発熱

 

今回使用したヒートシンクは手持ちから適当に選んだものです。このヒートシンクでどのくらい発熱するかを見てみました。

 

入力電圧12V、出力電圧19V、出力電流1Aと2Aで開始から1時間までの発熱の変化を計測してみました。使用した温度ロガーはサーミスターを使用した自作のものです。

LT1170_08.jpg

ヒートシンクの温度変化を計測中

左上はサーミスタによる温度ロガー

サーミスタはヒートシンクの上でシリコングリスで熱結合させた

室温になじませた後、40分間 温度の変化を計測

出力電流が1Aの場合と2A連続の場合

 

室温:15℃

LT1170_09.jpg

1Aと2A負荷の場合のヒートシンクの温度

40分間計測

1A負荷の場合は約27℃で一定

2A負荷の場合は約40℃で一定

写真のような小型のヒートシンクでもなんとかなりそう

(室温15℃で強制空冷なし)

 

以上、ちょっとお高いLT1170ですが、2.5A取り出しても、効率、電圧変動率をみても無理なく使えそうです。 計測では、バッテリが10Vまで消耗しても19V付近を保っています。発熱は今回使用した小型のヒートシンクでも問題ない範囲です。効率がよいので小型化できます。入力電流は出力電流の約1.7倍流れる(昇圧コンバータは入力電流の方が多い)ので、バッテリ容量と使用時間の管理が必要です。今回保護回路の確認は行っていません。安全のためバッテリ側にはヒューズが必要です。

 

計測環境

電源 HP6632B 20V/5A

電子負荷 KIKUSUI PLZ1004W

温度ロガー PIC使用自作 温度センサー サーミスター

 

本記事はLT1170のデータシートに記載されている参考回路をほぼそのまま製作して、性能を評価したものです。使用した部品は手持ちの範囲と入手可能な範囲で、参考回路とは微妙に異なり、また、実装方法、放熱に関してもアマチュアの域を出ません。このためLT1170本来の性能が発揮されているかどうかはわかりません。

 

 

 

(JF1VRR)

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