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LT1172CN8使用の昇圧コンバータ

投稿日 2013/04/01

 

 

秋月電子で300円で購入可能なリニアテクノロジの電源IC LT1172CN8で昇圧型コンバータを作ってみました。

 

このICは多彩な電源トポロジーに対応していることが特徴です。

 

リニアテクノロジの電源ICは、無償で使えるLTSpiceでシミュレーションできます。シミュレーション回路も用意されているので、部品の定数を手持ちのものに置き換えてシミュレーションし、実際に性能が出るかどうか試してみました。

 

LTSpiceには、新しいICが発表されるとすぐにシミュレーションモデルが追加されるので、定期的にアップデートしておくと最新のICがシミュレーションできます。

 

LT1172CN8は最新というわけではありませんが、入手しやすいので選びました。

 

さてこのIC、対応可能な電源トポロジーのほぼすべて、降圧、昇圧、フライバック、反転、およびチュークで使用可能とのこと。データシートにはさまざまなトポロジーの回路例が載っていますので、いろいろトポロジーを変えて性能を確かめてみるのも面白そうです。

 

今回はLTSpiceにシミュレーション回路がある昇圧型を試してみました。

 

まずは5Vを12Vに昇圧する実験です。

 

LTSpiceを起動し、LT1172を呼び出し、サンプルのシミュレーション回路を貼り付けます。

LT1172CN8_1.jpg

LT1172CN8のシミュレーション回路 回路には無いがE1,E2はグランドに落とす

 

これは昇圧型の基本的な回路です。電源ICを使用すればこんなに簡単にスイッチングレギュレータができてしまいます。

 

手持ち部品の関係でサンプル・シミュレーション回路の部品定数をいくつか変更しています。

 

L1を150uHから100uH
入力のコンデンサは100uFから220uF
出力のコンデンサは500uFから1000uF
R2 1.24KΩを1.2KΩ
R1 10.7KΩを5KΩから15Kまで1KΩステップ

 

入力電圧はDC 5Vです。
負荷は純抵抗24Ωです。

 

出力電圧にプローブを当てて50mSのトランジェント(過度応答)解析を行いました。

 

R1の抵抗値変更による出力電圧の可変範囲をシミュレーションしてみました。

LT1172CN8_2.gif

R1を5KΩから12KΩまで1KΩステップで変化させた場合の出力電圧(Vin 5V, RL 24Ω)

 

グラフからR1の可変により以下の出力電圧が得られます。
5KΩ 6.4V
6KΩ 7.4V
7KΩ 8.5V
8KΩ 9.5V
9KΩ 10.5V
10KΩ 11.6V
11KΩ 12.6V
12KΩ 13.6V

 

R1は半固定抵抗にすればよいので、あまり細かく調べておく必要はありません。
シミュレーション結果から、20Kから50KΩくらいの半固定抵抗がよいようです。

 

それより気になるのは、入力電圧5Vから昇圧した場合、何Aまでとれるかです。
実際に回路を組んで実測してみました

LT1172CN8_5.jpg
LT1172CN8_3.jpg

コイルは縦型とトロイダルコア型を試したが、ほとんど同じでしたので、ここでは縦型のコイルの結果のみを載せました。

 

VR1は、上記のシミュレーション結果より、50KBとしました。

 

Vcのコンデンサは手持ちの関係で電解コンです。

 

入力電圧は5Vと9Vで試してみました。

 

電子負荷で出力電流を0Aから1A付近まで吸い込んでみます。

LT1172CN8_4.jpg

入力電圧5Vと9V  出力電流0から1.25Aにおける出力電圧の変化

 

入力電圧5Vで出力電圧12V 1.0Aの昇圧コンバータとして期待し実験してみましたが、
出力電流0.5Aまでが実用範囲のようです。

 

回路パラメータが推奨回路と異なるので、慎重に合わせて実験してみるべきかもしれませんが、
それにしてもリニアテクノロジのデータシートを読んでもこのへんの記載がないので、実験して確かめるしかありません。

 

入力電圧を9Vにすれば、1Aくらいまで実用範囲のようです。
しかし9Vから12Vへの昇圧はあまり使用頻度は多くないかと思います。

 

効率はグラフにしませんでしたが、出力電圧が11V以上の範囲で76%から98%でした。


 

結論:LT1172CN8は5V入力のとき 0.45Aまでで使うべし!




 

(JF1VRR)

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