パワーMOS FETのスイッチング動作

投稿日 2011/09/26

 

 

パワーMOS FETを使用すると、バイポーラトランジスタなどで組むよりはシンプルな回路で、リレーやランプを駆動(ドライブ)するスイッチング回路(ここでは単なるOn/Off回路)を簡単に組むことができます。

 

バイポーラトランジスタより高速にスイッチングできるのですが、ここでは単なるOn/Offスイッチです。


 

素子にスイッチング動作をさせる場合、チェック項目として思いつくのは、

 

○スイッチングの速さ
○オン時の抵抗値(オン抵抗)
○オフ時の抵抗値(オフ抵抗)と耐圧
○何Vのゲート電圧で完全にオンになるか

 

リレーや、ファン、ランプなどのドライブではスイッチング速度はほとんど問題にすることはないかと思います。

 

オン抵抗は小さいに越したことはありません。オン抵抗が大きいと、流す電流によっては発熱の原因になります。

 

オフ抵抗や耐圧は、オフ状態での漏れ電流のようなものですが、数100Vもの高圧を扱うならともかく、12Vそこらだと気にするものではありません。

 

ゲート電圧を何Vにすれば完全にオンになるかは、回路の設計にかかわります。中途半端な電圧値にすると、完全にオンにならずオン抵抗が高い状態になるため、電流によっては発熱して壊れる原因になります。

 

今回は、安価に入手可能なPJP75N75というパワーMOS FETを使用しました。

FET_75N75_4.jpg

PJP75N75 パワーMOS FET 秋月電子通商で5個入り \350

 

これは名前の通りドレイン、ソース間の耐圧が75V, ドレイン電流が75AのNチャネルMOS FETです。


 

規格表はここで参照できます。

 

PJP75N75はよく見かけるTO-220プラスチックパッケージです。(フリンジはアルミ)

 

こんな小さなFETで75Aも流せるのか疑問に思われますが、これは完全オン状態の値です。完全オン状態の抵抗値は、たった0.011Ω(11mΩ)しかないため、ほとんど電力ロスがない導通状態と言えます。大きな電流では試していませんが、実際12V 680mAくらいのランプをつけっぱなしにしても、ほとんど発熱しませんでした。(後述)

 

規格表より、

 

BVdss:ドレイン-ソース間の耐圧は75Vです。

 

Vgs(th): ゲート-ソース間電圧(ゲート電圧)は1から3Vです。1から3Vの個体差があるということですが、完全にオンにする場合、安全を見て4V以上印加すればよいことが分かります。このためPJP75N754は4V駆動素子ということになります。4V以上と言えば5Vロジックでは扱いやすい電圧です。

 

RDs(on):オン抵抗です。ほとんどの場合8mΩくらいですが、11mΩ以下であることが保証されています。温度に依存するので要注意です。(ほかのパラメータも何らかの関係で温度に依存しますが)

 

Idss:オフ時の電流です。1μA以下です。

 

Igss:Vgsを印加したときにゲートに流れ込む電流です。±100μAです。ゲートに電力を必要としないため、ドライブが簡単です。所定の電圧を印加するだけ。

約3A流しています。4.505Vはゲート電圧です。

FET_75N75_1.jpg

上記のグラフから、

 

FIG-1 Output Characteristics

 

これはVdsとVgsとの関係が、Idにどのように影響するかを表しています。Vdsが小さい部分を取り出したものですが、0Vに近い部分の特性が見えています。Vgsが3Vでは、Idが10A、3.5Vで20.3Aくらいですから、たった0.5Vの差で約10Aの電流をコントロールできます。どこかで見たようなグラフです。真空管のEp-Ip特性に似ています。スイッチングはこの部分では使わない。

 

FIG-2 Transfer Characteristics

 

VgsとIdの関係です。Vds=10V Tj=25℃の場合、Vgs 2.5VからIdが流れ始め、3.4Vで80Aくらい流れています。4V以上であれば完全オン状態(4V駆動)であることが分かります。

 

このVgsが2.5Vから3.5V付近はFETが完全にオンになっていない状態です。この部分を電子負荷のような大電流を扱える可変抵抗器のように扱うこともできそうですが、幅がたった1Vくらいですからクリチカルですね。

 

Vgsは±20Vですが、4V駆動の場合このくらいです。サージには注意が必要のようです。このゲートサージはFETを破壊する一つの要因ですから、乾燥時は取扱注意です。

 

FIG-3 On Resistance vs Drain Current

 

Idとオン抵抗の関係です。Vgsが10Vですから完全オン状態ですが、ドレイン電流によってわずかながらオン抵抗が変化することが分かります。あまり気にする必要はなさそうです。

 

FIG-4 On resistance vs Gate to Source Voltage

 

Vgsとオン抵抗の関係です。Tj=25℃でVgsが4V以上であれば10mΩ以下となります。ここからもVgsが4V以上であれば完全オン状態であることが分かります。オン抵抗は正の温度特性があります。このためひとたび発熱するとオン抵抗は高くなっていきます。

FET_75N75_2.jpg

この回路はVds +10V, Vgs +10Vを印加しています。当然完全オンとなり、ドレインに接続されたランプは点灯します。Idは約670mA流れています。

 

この程度の電流では、オン抵抗が小さいためフランジは手で触った範囲では全く発熱を感じません。

 

このときVdsは68mVでした。0.067V / 0.670A = 0.1Ω 100mΩと計算できます。(ブレッドボードの接触抵抗などの影響かも知れません。)

 

ゲートの1KΩが無いと、ゲートに電荷が溜まりっぱなしになるのか、ゲート電圧を外してもIdが流れ続けます。1KΩはゲート電圧を外した場合、ゲートにある電荷をグランドに放出します。

 

なお、サージからの保護のため、ゲートに直列に1KΩくらいを入れるほうがよいかも知れません。

FET_75N75_3.jpg

負荷に使用したランプは車内照明用で12V 10W(ここでは10Vで点灯)


 

パワーMOS FETはゲートでの電力消費はほとんどありません。電流が流れないためドライブ側の設計が楽です。また、大電流を小さな電圧で制御できます。トランジスタではダーリントン接続にしたり面倒ですが、FETだと簡単です。

 

PICとパワーMOS FETで、簡単に冷却ファンなどのコントロールができます。




 

ご注意:以上は私がパワーMOS FETで遊んでみた結果をメモ的に書いたものですから、正確ではありませんし、記述していないことはほかにいっぱいあります。



 

(JF1VRR)