峠 秩父への道(大久保 茂著)から峠考(その1)

投稿日 2021年01月xx日

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大久根 茂著 さきたま双書

峠 秩父への道 平成7年4月30日 初版第1刷発行

 

この「峠 秩父への道」は埼玉県の秩父地方の峠を解説した名著です。掲載されている峠は、下にリストしておきました。著者は「秩父の峠」も昭和63年に発刊されています。これらについては、記事 秩父の峠 大久根 茂著で取り上げています。

 

今回はこの本で取り上げられている各峠の自分なりの思いを書いてみました。

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秩父外周部の峠の位置関係

赤点はこの本で取り上げられている峠

 

 

掲載されている峠

三国峠(みくに) 秩父郡大滝村中津川 - 長野県南佐久郡川上村梓山

赤岩峠(あかいわ) 秩父郡大滝村中津川 - 群馬県多野郡上野村野栗沢

雁峠・将監視峠(がん・しょうげん)

 秩父郡大滝村大滝 - 山梨県塩山市一之瀬高橋 山梨県北都留郡丹波山村大常木

地蔵峠(じぞう) 秩父郡大滝村大滝 - 秩父郡大滝村三峰

小鹿坂峠(おがさか) 秩父市寺尾 - 秩父市田村

札立峠(ふだたて) 秩父郡吉田町久長 ー 秩父郡皆野町下日野沢

葉原・仙元・塞神峠(はばら・せんげん・さいじん) 秩父郡長瀞町井戸・風布 - 大里郡寄居町風布

定峰峠(さだみね) 秩父郡東秩父村皆谷 - 秩父市定峰

ブナ峠(ぶな) 飯能市北川 - 比企郡都幾川村椚平

山伏峠(やまぶし) 入間郡名栗村上名栗

鳥首峠(とりくび) 秩父郡浦山 - 入間郡名栗村上名栗

天目指峠(あまめざす) 飯能市南川 - 入間郡名栗村上名栗

鎌倉峠(かまくら) 飯能市井上 - 飯能市南

○三国峠(みくに) 秩父郡大滝村中津川 - 長野県南佐久郡川上村梓山

 

​この峠はまだ行ったことがありません。三国峠といえば群馬県と新潟県の県境、上越国境谷川岳近くのトンネルのある三国峠が有名ですが、こちらは群馬県、埼玉県、長野県の三県にまたがる峠です。どちらの峠にも近くに三国山があります。本来の(旧)三国峠は三県から来た道が三国山山頂近くで合流している所ですが、現在は林道が埼玉県側の中津川と長野県側の佐久梓川を結んでおり、それが稜線を越えるところを新三国峠と呼ぶようです。しかしそこは埼玉県と長野県の二県の境でしかありません。

地形的には埼玉県側が急峻で中津川の村落の標高が740m位で、峠が約1830mですから1000m以上もの標高差があります。一方、長野県側の梓川の標高は1310mですから500mほどの差しかありません。つまり埼玉県側は中津川が刻んだ谷底なのに対して、長野県側は高原のゆったりした地形です。

(旧)三国峠は馬が通れない人だけが行き来した峠のようです。今の国土地理院の地図にも中津川の枝沢信濃沢から尾根沿いに点線がありますが、この道はおそらく人しか歩けない急峻なものと思います。一方群馬県側は三国山から長い稜線を天丸山の手前で馬道に入り上野村や野栗沢から万場へと通じていたのでしょう。ただし、中津川からは少し下って神流川から八丁峠や赤岩峠を使ったほうが近いとも思いますが。いずれにせよ人がわずかな炭など担いで生業にするために使われたのでしょう。

ところで、中津川の村落から(旧)三国峠に登る旧道はまだあるのでしょうか。この本で著者は探してみたがみつからなかったとしています。上の峠には車道から行ってみたが、古びた道標があったものの下る道は見当たらないとしています。機会があれば調べてみたいものです。

○赤岩峠(あかいわ) 秩父郡大滝村中津川 - 群馬県多野郡上野村野栗沢

荒川の最奥部中津川のさらに奥。川が神流川と名前を変える両神山の西側の渓谷。その沢がさらに小倉沢と名前を変えるところ。今でも一部で創業している日窒鉱山の奥に屏風のようにそびえる赤い壁。それが赤岩です。若い頃両神山に手軽に登ろうと駐車地からのアプローチが無い両神山の裏(西面)の小尾根を登って山頂に立ったものです。今ではそのルートは道が消えたようですが、小倉沢の落合橋にある駐車スペースには重宝しました。今でも八丁峠へ登るときに使われるようですが。

ところで、そびえる赤岩の稜線には東側から八丁峠、赤岩峠、雁掛峠、六助峠とわずかな距離に4つもの峠が並んでいます。現在は八丁峠と赤岩峠は越えることができますが、雁掛峠と六助峠は難しいようです。以前日窒鉱山で2000人もの人が働いていたとき、山中や小鹿野から単身赴任で働きに来ていた人たちが越えたのだそうです。

私は赤岩峠に数回訪れました。群馬県の野栗沢胡桃平から大ナゲシに登ったとき。落合橋に駐車して赤岩峠から八丁峠まで赤岩尾根尾根を歩いたとき。鉱山から登って赤岩峠から宗四郎山まで縦走し林道を戻ったときなどです。このうち胡桃平から登る野栗沢の源頭部は美渓だったことは印象に残っています。峠手前の小尾根の上に雨水観測点の古びた木標が立っていましたが、今では朽ちて無いでしょう。赤岩峠には小さな石祠が中津川側を向けておかれています。

八丁峠は広川原沢側に駐車場が作られたことから八丁尾根から両神山に登るための通過ポイントですからにぎわっていますが、駐車場までの林道が不安定ですので要注意です。雁掛峠には小さな石祠がありました。ここも確か中津川側を向けて置かれていました。越える道は見当たらず、静寂の中の峠でした。六助峠は馬も越えられた峠のようですが、気づかずに通り過ぎてしまい、気が付けば六助の頭に登っていました。この山域は裏両神?を愛する者の聖地です。

雁峠・将監視峠(がん・しょうげん)

 秩父郡大滝村大滝 - 山梨県塩山市一之瀬高橋 山梨県北都留郡丹波山村大常木

 

(その2で取り上げます)

 

○地蔵峠(じぞう) 秩父郡大滝村大滝 - 秩父郡大滝村三峰

筆者の言うように私も大血川の渓谷が好きです。大血川の渓谷と大陽寺(本に従って太陽時ではなく大陽寺とする)、そして三峰や雲取山とつながる自然豊かな山の稜線。それらの相乗効果でしょうか。なぜか好きな山域です。

 

私もなん度か訪れたことがあります。酉谷山に登ろうと大血川の奥部に分け入り、散々迷ってやっと登山口を見つけて登り始めたものの、しばらく登ったところのエゴノキの芳香中で一休みし、悔しいながらも時間切れで戻ったのを思い出します。本の中には大血川の血の云われ(説)が書かれているが、ちょっと生臭い雰囲気は否めませんし、ちょっと恐ろしい山怪を感じる山域でもあります。

国道140号が秩父鉄道の三峰口駅の近くを通過してしばらく走ると左に入る道があって、その傍らに大陽寺の石碑が建っています。そこから大陽寺の入り口まで林道が4kmくらいありますが参道の一部でしょうか。その4kmを歩くと(三峰口駅からタクシーで3000円くらい)、狭い谷あいに渓流釣り場があります。ニジマスが面白いように釣れます。その釣り場の前に大きな石灯篭があって石段が奥へと延びています。

関東の女人高野と呼ばれた古刹大陽寺の参道は歩くによい雰囲気で、釣り場からの標高差300mくらいを登ります。林道を車で行くことも出来ますが、ここは歩いて訪れるべきでしょう。道の傍らに並ぶ女人講中の石仏を拝みながら登ると水平になった道の奥に山門があります。いつ訪れても誰もいない寺というイメージ。静寂な中、暗いお堂の閻魔の目がギョロリ。聞こえるのは野鳥の声ばかりです。

寺から上は林道を3回ばかりまたいで、自然林の中を登って行きます。霧藻ヶ峰というくらい、霧が巻きやすいのかこの日もガスの中に樹木が遠近感をかもし出して立っています。ふと見ると小さなお堂に小さな地蔵様。そう地蔵峠に着いたのです。傍らの大正十一年の石碑に「右ハ雲取山を超へ北都留郡、西多摩郡至ル、左ハ大日向山旧道 後ハ三峰神社ヘ至ル」刻まれています。その後三峰神社へ足を伸ばしました。

本によれば三峰神社や陽寺は秩父三十四ヶ所霊場参り巡礼者が巡礼コールに含めるケースが多かったようで、そのときこの地蔵峠も利用されたのでしょう。三十番法雲寺のあと、大陽寺、三峰神社へと詣でて、三十一番の観音院へと辿るモデル・コースが巡礼手引きに載っていたのでしょう。

 

○小鹿坂峠(おがさか) 秩父市寺尾 - 秩父市田村

 

​(その2で取り上げます)

○札立峠(ふだたて) 秩父郡吉田町久長 ー 秩父郡皆野町下日野沢

○葉原・仙元・塞神峠(はばら・せんげん・さいじん) 秩父郡長瀞町井戸・風布 - 大里郡寄居町風布

 

昭和17年ごろまで秩父郡白鳥村という村が、今の秩父郡長瀞町と大里郡寄居町の一角をカバーしていたようです。つまり以前は秩父が寄居のほうまで広がっていたということになります。その白鳥村のど真ん中は標高500m前後の尾根で西の長瀞側と東側の寄居側が分かたれていました。村の中心は長瀞の井戸で役場や小学校もその辺りにあったため、東側の人たちは尾根をまたいで西側に行くことが多かったようです。ただ。村の真ん中の峠が塞神(災いが通らないようにする神)峠なのは面白いことです。

そこで利用されたのがこれらの峠です。植平(うえびら)峠を加え、4つもの峠がわずか1.5kmくらいの尾根筋に並んでいるのです。こじんまりとした山域で歩いてもそんなに距離があるわけではないのですが、雨の日も風の日も足しげく峠を越えた小学生たちを想像すると厳しくもほほえましい光景であります。

想像するに、このように尾根筋の分かたれた領域が同じ行政区にあることはいろいろ不便を生じるのでしょう。学校は長瀞だが、食料品は寄居に買いに行く。送電はどうか。水道はなど。これが県をまたがるケースですと事情はもっと複雑です。おそらくそういう事情もあって、尾根を挟んで行政区を分けたのでしょう。しかし、西側と東側の風布(ふっぷ)は今でも健在です。このように尾根や稜線を挟んで同じ名の村落があるのはそうめずらしいことでもありません。

私がこれらの峠と岩根神社、金ヶ岳など長瀞側の山域を巡ったのは一番寒い年明けの頃。しかし、冬枯れで落葉した山は陽光が林床まで差し込み、意外と暖かいもの。私はこれを冬日向の山といってこの時季の低山を好みます。

○定峰峠(さだみね) 秩父郡東秩父村皆谷 - 秩父市定峰

○ブナ峠(ぶな) 飯能市北川 - 比企郡都幾川村椚平

○山伏峠(やまぶし) 入間郡名栗村上名栗

​(その2で取り上げます)

○鳥首峠(とりくび) 秩父郡浦山 - 入間郡名栗村上名栗

○天目指峠(あまめざす) 飯能市南川 - 入間郡名栗村上名栗

​(その2で取り上げます)

○鎌倉峠(かまくら) 飯能市井上 - 飯能市南

​(その2で取り上げます)

​(雅熊)